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健達ねっと>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】介護福祉の実践と研究

【専門家インタビュー】介護福祉の実践と研究

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研究内容について

編集部:研究テーマである、「認知症ケアにおける具体的な支援方法と、その効果評価法の開発」についての内容と成果について教えてください。

下山様:近年、要介護状態になる一番の理由が「認知症」となっております。

日本は、世界で最も高齢化率の高い国となっており、長寿社会では認知症の人も多数、存在するようになってきます。そこで、その長寿社会では「認知症ケア」とそれ以降に続く「看取りケア」が社会的課題となってきます。このような経緯があり1990年代後半から「認知症ケア」の具体的な支援法である回想法について研究し、そして高齢者施設における実践を重ねてきました。

2000年以降介護保険制度が施行され、支援の方法が適切であったのかを確認するための効果評価が求められるようになってきました。そこで認知症ケアにおける効果評価法も合わせて研究していくこととなりました。2004年から国際的に活用されている認知症ケアマッピング法(DCM法)を学び、そしてそれを実際の認知症ケア現場において活用し、研究に活用するようになりました。国際的に活用されている観察式評価法であり、これを用いることで自分自身では言語化しにくい認知症の人の状態をある程度、客観的に評価することが出来るようになります。このDCM法に限らず、行った支援を適切に振り返るための効果評価を行うことで、介護福祉サービスはより良いものになっていくでしょう。

編集部:その研究を行った経緯を教えてください。

下山様:1990年代半ばから介護福祉士養成校にて専任講師として勤務していました。学生ならびに卒業生が、高齢者施設の入居者である認知症高齢者の方との関りに、とても苦労していました。この状況を変えていくためには、どのような支援が認知症の人にとって好ましいものであるのかを探求していく必要があるように思われました。そこで回想法という手法を学び、そしてそれを学生や卒業生と一緒に実践していくことを始めました。この回想法の実践を通し、学生や卒業生も視点が変わり、認知症ケアについての専門性を高めていくことを目にすることとなりました。そこでこの回想法を、介護福祉教育法としても活用し、専門学校で「回想法研究会」というサークルを立ち上げ、学生や卒業生と共に実践し、研究する場を作りました。

そしてその回想法や、様々な認知症ケアの支援が本当に効果的であったのかどうかを確認する効果評価の手法を学ばなければならないと考えていた時に出会ったのがDCM法です。日本に先駆けて介護保険制度を導入したドイツでその制度の効果評価法として活用されていたものです。

このDCM法を用いることで、それまで感覚的に行っていたケアをより明確に意図的に行うことが出来るようになることを確認できました。効果評価というと、一方的に採点されるという感覚を持つかもしれませんが、自分たちが行った支援を振り返るといても良い機会となり、介護福祉の仕事のモチベーションを高める良い機会となるものであることも実感することが出来ました。

編集部:なるほど、認知症の方だけでなく、介護福祉職の方にとっても客観的に評価できることはメリットが大きいのですね。

下山様:はい、回想法やDCM法を用いた実践や研究を通して、それまでそれぞれの現場で行われていた認知症ケアの在り方を、科学的に捉え直すことが出来るようになります。苦労しながら行っていたことが効果的であったのか、それとももう少し異なるアプローチがあるのかなどを適切に振り返ることにより、それぞれの認知症の人にとってより相応しい支援を構築していくことが出来るようになります。その確認作業としてDCM法を活用することが出来ます。

編集部:下山様が考える本研究の意義を教えてください。

下山様:これまで介護福祉の実践と研究は、やや乖離してきたところがあるように思われます。研究を通して何が効果的であるのか、どのような方法があり得るのかを示すことにより、介護現場は複数の選択肢からより適切な支援を選ぶことが出来るようになります。判断材料を提示するためには、実際の現場に役立つ研究が必要となります。これまで行って来た回想法やDCM法を用いた研究は、介護福祉の実践現場と研究フィールドを結び付けるものであったと考えております。

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今後の目標について

編集部:下山様の研究における最終的な目標を教えてください。

下山様:介護福祉の実践と、介護福祉に関する研究を結び付け、より利用者の生活の質の向上に寄与するサービス提供システムを構築していけるようにすることです。そのためには介護福祉の実践と、介護福祉に関する研究、そして介護福祉士養成課程である教育・研修システムが連結していく必要があります。介護福祉士を目指す人たちにその遣り甲斐と専門性を伝えていくことにより、今後の日本社会における超高齢社会が誰もが安心して過ごすことが出来るものになっていくと思われます。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

下山様:現在、介護福祉の現場にもさまざまなデジタルテクノロジーが導入されるようになってきました。このようなデジタルテクノロジーをどのように活用することが認知症ケアの質を高めるのか、それを検討していくことに携わっていく予定です。自らの状況を言語化して説明することが難しい認知症の人の支援に対し、適切にデジタルテクノロジーを活用することで本人の状況を知ることに繋がり、適切な支援を提供できるようになる可能性もあります。一方、もし適切に使用されないのならば、プライバシーの侵害等の問題が起きてくる危険性もあります。どのようなデジタルテクノロジーを活用することが、認知症の人にとっても多くの家族やケアスタッフにとっても好ましいものになるのかを考えて行きたいと思います。

健達ねっとのユーザー様へ一言

介護サービスや認知症ケアというと、「出来れば避けたいもの・・・」「あまり利用したくない・・・」と思われるかもしれません。でも、介護サービスは決して不要なものではなく、「杖」のようなものかもしれません。少し生活しづらさが生じて来た時に、「支えになる物」が存在することで自分らしさを維持し続けることが出来ます。長寿になると誰もが、ある程度、認知症になる可能性が生じてきます。認知症になったら人生の終わり、ということはなく認知症になりながらも健やかに暮らし続けることは可能です。「もし介護が必要になった時は・・・」、「もし認知症になったとしたら・・・」ということを知っておくと、いざという時にも慌てることなく、適切にサービスを利用しながら人生を楽しみ続けることが出来ます。何時までも自分らしく生きることを諦めないために、万が一の時のことも、ぜひ情報を得るようになさってください。

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薬の使い方

同朋大学社会福祉学部 教授

下山 久之しもやま ひさゆき

介護福祉士
社会福祉士
精神保健福祉士

  • 介護福祉士
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  • 精神保健福祉士

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