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健達ねっと>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】福祉分野における情報化に関する研究

【専門家インタビュー】福祉分野における情報化に関する研究

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研究内容について

編集部:「高齢者福祉サービスにおける 福祉情報化推進に向けての一考察」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

林様:高齢者福祉サービスにおける情報化に関する現状を踏まえながら、高齢者福祉に関する情報提供事業や情報ネットワークシステムの活用事例などを通して、その有効性を検証し、今後のあり方について検討することを研究目的としました。

加えて、引き起こされる情報格差(Digital Divide)や情報弱者の実態および、それを取り巻く課題などについても現場での聞き取り調査や先行研究などを参考に、そのあり方を検討しました。

研究の結果、高齢者福祉分野における情報化は、次の点において有効であると考えました。

・利用者の自由・主体的な選択の促進、

福祉関連職等の業務支援ツールとしての活用、

・地域福祉の推進、事業運営の透明化等

編集部:その研究を行った経緯を教えてください。

林様:介護保険制度下において両者の関係は対等として位置付けられ、利用者は介護サービスを主体的に選択し、契約して利用するものとなっています。そこで、サービス提供事業者においては、利用者の選択を得るため、自らの提供するサービスや提供体制などに関する情報を積極的に発信することが求められるものとなりました。

つまり、措置から契約へ転換するなかでの、「利用者本位」という理念の導入が、情報提供の重要性を高めたと言えます。

今後、多様化した個人ニーズの適切な対応や、利用者の主体的な選択が求められるなかでは、より円滑な分かり易いサービス情報の提供、高齢者福祉サービスにおける情報化の必要性はますます高まっていくだろうと考えたのが、研究の動機です。

編集部:「高齢者虐待に関する一考察」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

林様:高齢者虐待の件数や種類等を把握したうえで、虐待の要因や防止するための課題について、現場での聞き取り調査を参考に研究・検討しました。

高齢者虐待の種類には、身体的虐待、心理的虐待、経済的虐待、性的虐待、世話の放棄(ネグレクト)の5つがあり、虐待の原因としては人間関係の不和が最も多いことが分かりましたが、実際には、様々な要因の相互作用によって、結果として虐待が引き起こされているケースが多いのではないかと考えました。

研究の結果、高齢者虐待の防止に向けて、法・制度面の改善、相談窓口の整備、介護者支援、当事者の早急的対応、啓発活動等が必要だと考察しました。

編集部:様が考える本研究の意義を教えてください。

林様:今後より一層の高齢化が進展し、家族の介護力低下が想像されるなかで、高齢者の人権を侵害する高齢者虐待は増加するものと予測されるため、その防止に向けての検討を行なうことは、大変意義深いものだと考えました。

高齢者虐待の防止に向けた啓発活動では、高齢者・家族を含めた一般市民に、社会的弱者である高齢者に対する人権擁護意識の重要性を示し、高齢者虐待について社会的な関心が高まるように働きかける必要があると考えています。

虐待防止の第一義的な役割を担う市町村は、関係機関と協働しながら、高齢者虐待の防止や早期発見、虐待を受けた高齢者や養護者に対する適切 な支援を行うとともに、世間一般の関心を高めるための啓発活動を、より一層進めていくことが求められるのではないかと考えました。

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今後の目標について

編集部:林様の研究における最終的な目標を教えてください。

林様:「情報化=情報を提供さえすれば良い」ではありません。

提供されている情報が、本当に利用者・家族にとって必要なものなのか、利用者の主体的な選択に資するものなのか、情報提供の方法は適切か、他と比較しやすく整理されているか等、様々な視点からチェックして、発信される内容だけではなく、提供方法の充実化を図ることが重要です。

今後、より一層の高齢化が予想されるなかで、福祉分野における情報化(提供される情報の充実化、提供方法の充実化)はより重要性を増すものと見込まれます。もちろん、高齢者はITリテラシーが高い人ばかりではないため、そのための配慮が必要なことや、情報の正確性、セキュリティの問題は、今後の課題だといえます。

このような課題の解決のために、情報化の推進はどのように進めていくべきか、そのあり方を今後も研究・検討したいと考えています。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

林様:今後の展開としては、効果的な情報提供事業を行っている事例や、情報機器を充分に用いたうえでの情報提供の事例の実態に関して研究を進め、考えられる課題と対策方法、情報化推進の有効的な方策を明らかにしていきたいと考えています。

情報化の推進は利用者の主体的な選択に役立つと考えられますが、一方で、「情報を持たない=生活の質的低下」を招く恐れがあります。つまり、情報弱者への配慮が欠かせません。情報化の推進を図る取り組みとその有効性を明らかにするとともに、この辺りの研究をより深めていきたいです。

健達ねっとのユーザー様へ一言

日本文理大学 経営経済学部・経営経済学科 こども・福祉マネジメントコースでは、社会福祉士・保育士・幼稚園教諭等の資格取得を目指し、保育や福祉分野で働く人材を育成しています。

私の研究室では、社会福祉全般を学び、なかでも高齢者福祉分野を中心に学習・研究を行います。主に高齢者福祉分野に関する学習・研究を行います。我が国の抱える課題「高齢者の福祉・介護の問題」の解決に向けて積極的に活動・開発ができるソーシャルワーカーの育成を目指しています。本学での教育を基にして、地域や現場のニーズに即した学外活動が展開できればと考えております。

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日本文理大学経営経済学部経営経済学科 助教授

林 孝和はやし たかかず

社会福祉士
介護福祉士
修士課程修了

  • 社会福祉士
  • 介護福祉士
  • 修士課程修了

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