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研究内容について
編集部:「セルフケアに有用なリラクセーション技法:自律訓練法」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
大平様:自律訓練法(オートジェニック・トレーニング)は、ドイツの精神医学者シュルツによって創始された心理療法です。実際の練習では、リラックスしやすい環境を整えて練習の姿勢をとって練習公式を反復暗唱します。練習にあたって、身体の各部位の生理的な変化にさりげなく注意を向ける「受動的注意集中」の態度がとても大切です。
自律訓練法は、心療内科などで治療の一環として用いられています。中部労災病院心療内科で実施された自律訓練法の集団療法では、累計で1000人以上の患者さんが参加されて、約7割の方に有効でした。多くの患者さんに、自覚症状の改善や飲んでいる薬を減らすことができたなど何らかの効果が得られました。
編集部:ありがとうございます。では、その研究を行った経緯を教えてください。
大平様:自律訓練法は、心理的な側面でも生理的な側面でも様々な変化が生じます。自律訓練法は、医療のなかで治療法として使われていて、特に心身症の治療でよく使われています。公式が標準化されていて、適応症の範囲が広くて、副作用も少ないので、治療法としてだけではなく教育やスポーツ、産業などの領域でも広く用いられています。
自律訓練法の適応や効果について研究し、多くの人に活用していただきたいと考えています。また、自律訓練法の普及にも力を入れて取り組んでいきたいと思っています。
編集部:「職業性ストレスとメンタルヘルス不調 ~教員のためのメンタルヘルスケアのすすめ~」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
大平様:昨今、勤労者のメンタルヘルスケアの重要性が高まっています。教育現場でも、保護者・児童生徒の価値観の多様化、多忙化、長時間労働の常態化など様々な要因からメンタルヘルス不調が増加しています。
中部労災病院心療内科を受診した小中高等学校教員の患者さんがどのようなストレスを自覚していたのかを調べたところ、仕事内容にストレスを感じている方が多くを占めていました。さらに、完全週5日制になった2002年以降とそれ以前とに分けてみると、かつては仕事量がストレス要因となっている方が多かったのですが、近年は生徒指導や保護者対応がストレス要因となっている方が増えていることが分かりました。
編集部:大平様が考える本研究の意義を教えてください。
大平様:社会の変化にともなって勤労者をとりまく状況も変化しています。先ほど紹介した教員のストレス要因の研究は、少人数の症例を分析したものですが、教員をとりまく昨今の状況を反映しているのではないかと思います。
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今後の目標について
編集部:大平様の研究における最終的な目標を教えてください。
大平様:メンタルヘルス不調に関連するストレス要因を調べることで、現状を把握して勤労者のメンタルヘルス不調を予防し、元気にいきいきと働くことができる職場づくりに役立てたいと考えています。
編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?
大平様:教員を対象としたアンケート調査を実施しましたので、ストレスやメンタルヘルスについて分析を進めているところです。
そのほか、メンタルヘルス不調の予防や仕事の生産性向上のため職場環境改善にも注目していて、様々な業種の会社にアンケート調査やインタビュー調査を実施して、職場環境改善の取り組みについての分析を進めているところです。
健達ねっとのユーザー様へ一言
過剰なストレスは、メンタルヘルス不調や身体的な不調にもつながります。
まずは、自分でストレスに気づいて対処するセルフケアが大切です。セルフケアに役立つ技法の一つとして、私は心身のコンディションを自分で調えるスキルを身につけることができる自律訓練法をお勧めします。
参考:日本自律訓練学会