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健達ねっと>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー①】女性が女性らしく生きるには?女性ホルモン・妊娠のお話

【専門家インタビュー①】女性が女性らしく生きるには?女性ホルモン・妊娠のお話

自己紹介:

日本大学の医学部を2014年に卒業し、産婦人科が専門領域。

大学卒業後に研修医として2年間の研修を行った後、日赤医療センターで3年間勤務。その後、国立国際医療センターで3年間産婦人科医として働き、現在は不妊治療専門のリプロダクションクリニック東京に所属。

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生理と更年期について

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干場みなみ医師の講義について

女性にとって、妊娠は人生の中でも特に大きな出来事です。
また、妊娠に至るまでにも様々な転機が生じます。

妊娠について、私たちが何か知っておくべきことはないのでしょうか?

本記事では、干場みなみ医師に以下の点を中心に講義していただきます。

  • 産婦人科のお仕事について
  • 女性ホルモンとは
  • 事前アンケート
  • 私たちがすべきこと、私たちにできること

最後には干場みなみ医師のインスタグラムアカウントの情報もあるので、ぜひ最後までお読みください。

産婦人科のお仕事について

産婦人科は産科と婦人科の両方を兼ねた病院です。
産婦人科は主に4つに大きく分野が分かれています。

1.「周産期」

妊娠から出産までを診ています。(去年までは私もお産に立ち会っていました)

2.「生殖」

不妊症に関わる分野です。精子と卵子が出会って、受精卵ができる事で妊娠に繋がるのですが、その過程のお手伝いをしています。

3.「腫瘍」

婦人科臓器にできる腫瘍の治療に関わる分野です。腫瘍には良性と悪性で(悪性はガンになります)があり、これを診ていきます。
悪性の場合:子宮体癌、頸癌、卵巣がん、卵管がん等。良性の場合:卵巣腫瘍、子宮筋腫、子宮腺筋症等があります。
主に手術を行い、がんの患者さんに関しては、化学療法も活用する分野になります。

4.「女性ヘルスケア」

女性の一生を支える分野です。女性の一生には、女性ホルモンがすごく関わっています。

女性ホルモンとは

「女性ホルモンって何?」と聞かれて、想像できますか?
脳の下垂体というところから、LHとFSHという女性ホルモンがまず卵巣に働きかけます。
卵巣から二種類のホルモンが子宮の内膜に働きかけます。この卵巣からでるホルモン2種類(エストロゲンとプロゲステロン)がいわゆる女性ホルモンと言われています私たちが身近に感じる女性ホルモンの作用を持っているのはエストロゲンだと思ってください。
エストロゲンの作用は、妊娠に備えるために子宮の内膜を厚くする効果(作用)があります。それから、女性らしい身体を作ります。コラーゲンの産生にもエストロゲンが関係しているので、女性の肌は男性よりもちょっともちもちっとして、ぷくっとして、柔らかいと思いますが、これはエストロゲンによるコラーゲンが関係しているからです。また、血管、脳、骨、関節を健康に保つ働きもございます。
プロゲステロンは妊娠の維持に働いてくホルモンであったり、体温を上げたり、食欲を増やしたり様々な作用がございます。

女性のライフステージとは

女性のライフステージには、女性ホルモンが関係しており、その女性ホルモンに依存して4つの時期に分かれています。
思春期は大体10歳から18歳ぐらいまで、ちょうど、生理、初潮(初経:最初の生理が始まる、平均年齢12歳から13歳頃)の前後の時期のことを指します。思春期は卵巣からエストロゲンの分泌が始まる不安定な時期です。思春期を過ぎると、性成熟期に入っていきます。成熟期はだいたい18歳から45歳くらいまでと言われています。性成熟期は性機能が成熟し、卵巣機能がしっかりと高まることで、エストロゲンの分泌が落ち着いてくる時期です。女性はこの時期に妊娠や出産へと入っていきます。大体40歳を過ぎると、今度はエストロゲンが低下傾向になります。一気に下がるのではなく、グラフのような感じでゆっくり下がっていき、閉経へと進んでいく時期のことを更年期と言います。そこから、エストロゲンの分泌がまったくでなくなると老年期という時期に入っていきます。

ライフステージ別疾患

一生を通してホルモン(エストロゲン)が大きく上がったり下がったりするのは女性特有です。
エストロゲン量が変わってくると、いろんな疾患(病気)ができやすくなります。思春期のように、ホルモンバランスが落ち着かない時期は、生理痛が出始めたり、無月経になったりします。エストロゲン量が落ち着き性成熟期になると、月経異常がでてきたり、良性の腫瘍で子宮内膜症、子宮筋腫なども、この性成熟期になってくるとみられてきます。また、この時期から子宮頸がん、乳がん等のガンを発症しやすくなります。(特に乳がんは40代以降に発症しやすくなる)そして、妊娠・出産に関係してくるのが性成熟期で、それに関係するトラブル、不妊症なんかもでてきやすくなります。
ホルモンが低下傾向になると、更年期になって更年期障害、生活習慣病、がん(体がん、乳がん、卵巣がん、頸がん)が、更年期の経過症状として見受けられます。
ホルモンが全く出なくなると、骨粗鬆症、尿失禁、生活習慣病、脂質異常が発症しやすくなります。

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事前アンケート①:生理と更年期について

女性の一生で一番悩みが多いのが、月経から始まり、閉経、更年期へとライフステージが進んでいく過程の様々な症状になります。

生理は何のためにあるのか

生理は何のためにあるのか、ご存知でしょうか。
毎月生理が来るのは、毎月妊娠の準備をしているからです。
図のように、生理後は子宮の内膜が薄くなります。ここから排卵期にむけて、内膜が厚くなっていきます。内膜が厚くなるのは、受精卵が着床するためのふかふかのベットを作るためです。月に1回排卵をし、卵子が精子を待ちます。精子がきて受精、着床すれば妊娠成立になります、精子がこなくて、妊娠しない時は、内膜(ベット)が要らなくなるので、この要らなくなった内膜を月に1回洗い流す=剥がれ落ちるのが生理です。
実はこの生理が起きる際に、女性ホルモンが関係しています。排卵にむけて、エストロゲンが上がっていきます。排卵時期が過ぎると、エストロゲンが上がったり下がったりを繰り返します。プロゲステロンに関しては、ずっと低かったのが排卵後に高くなったり下がったりして生理を迎えます。1か月間に女性ホルモンは何回も上がったり下がったりを繰り返し、これが毎月行われます。
これだけ1か月間に女性ホルモンが変動すると、月経に関わる病気・症状が出てきやすくなります。
月経に関わる病気はいろいろありますが、大きく分けて2つです。

1.月経前症候群:“PMS”という言葉を聞いたことがあると思いますが、月経前症候群のことを指します。月経前症候群は主に身体的症状と情緒的(精神的)症状の2つに分かれます。

2.月経困難症:生理痛のことを指します。この月経困難症のうちの一つが生理痛になります。原因別に機能性月経困難症と器質性月経困難症に分かれます

月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)についてお話しします。PMSにはちゃんと定義があります。
生理の3〜10日前、大体生理の1週間前、2週間前後くらいから発症し、月経が始まると症状が改善、または軽快する症状のことをPMSといいます。
身体的症状として、なんとなく胸が張る、胸が張って痛い、腹部に膨満感や痛みを感じる、頭痛がある、手足がむくみやすい、といった症状が月経前症候群の身体的症状として一般的に言われています。
情緒的症状としては、気分の浮き沈みがあり、落ち込みやすくなって、抑うつ状態になったり、怒りやすくなったり、イライラしたり、不安感が強くなって混乱しやすくなったりと、生理前になるといつもの私ではないと思っている方、全てPMSの症状になります。
「生理前になると、彼女が凄くイライラしている」と、男の子が言ったりしますが、大体月経のある女性の70〜80%はなんらかの症状を、月経前に認めるとよく言われています。

月経困難症

月経困難症は月経に随伴して起こる症状、病的症状のことを言います。
下腹部痛、腰痛、腹部膨満感といった症状は生理痛の一つです。それ以外にも、吐き気、食欲不振、頭痛、疲労・脱力感、イライラ、下痢等の症状まで全部含めて、生理の時に起こりやすくなります。先述お伝えした通り、月経困難症には2つに分かれます。明らかな原因・疾患がないものを機能性月経困難症と言い、大体初経後、2〜3年から始まることが多いです。器質性月経困難症は、背景になんかしらの原因疾患があるものを言います。原因疾患として、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの異常が関係していることが多くあります。
器質性月経困難症の発症は少し遅く、初経後5年以上してから発症することが多いです。

対処法

毎月生理がきて、何回もホルモンバランスが変わり、生理痛やPMSに悩むのは辛いですよね。このような悩みがある方、婦人科にいくと治療ができます。
20代、30代の女性には、ピルが主流で、おすすめしています。
そのほかにも、ピルが使えない方には漢方やミレーナ(子宮内に留置する小さい器具)、ピル以外のホルモン治療というのも選択肢としてあります。

更年期とは

更年期にも定義があります。更年期とは、閉経の前後五年のことを言います。
閉経というのは、丸一年月経が来ないことを閉経といいます。
女性の平均の閉経年齢は50歳なので、更年期はだいたい45歳から55歳までの10年間を一般的に言います。もちろん個人差はありますが、全員に更年期は訪れます。

性成熟期にしっかりあったエストロゲンは先述の通り、更年期になると下がっていきます。この下がっていく過程は、きれいに右肩下がりに下がるのではなく、波を打つような感じだったり、上がり下がりが激しかったりと、エストロゲンの量が揺らぎながら、低下傾向になっていきます。グラフのようにエストロゲンが揺らぐと、不調が現われるのですが、これがいわゆる更年期障害へと繋がっていきます。
更年期障害の症状は、多種多様です。この症状もそうなの?と思うくらい種類があります。
コラーゲンの分泌が下がることで、皮膚や粘膜の乾燥が強くなりやすくなります。ドライアイ、ドライマウス症状もそれにあたります。それから自律神経。“ホットフラッシュ”と言う言葉を耳にしたことがあるでしょうか。更年期特有の症状であるホットフラッシュは、大体肩から上がほてりやすく、寒い時期なのに暑かったり、夜は暑くて眠れなかったりという症状が見受けられます。また、手足の冷えも関係しています。しびれがでてきたりするのも更年期症状です。他には、物忘れやめまい、耳鳴り、憂鬱感、集中力の低下といった症状も、エストロゲンの上下によって関わってくる更年期障害の1つです。肩こり、腰痛、関節痛、手足のこわばり感が出てくることもあります。食欲不振になったり、便秘になったり、おなかが張りやすくなったり、様々な症状が出てきます。

泌尿器・生殖器系に現れる症状としては、更年期の頃から生理が少し不純になり、月経異常が起こりやすくなります。また、骨盤低筋(骨盤まわりの筋肉が緩んでくること)が原因で、頻尿・残尿感、性器下垂感という症状も現れます。分泌物が全体的に減るので、性交障害やかゆみも出やすくなります。

全部の症状が出るわけではありませんが、様々な症状が10年間続くのは大変なことですよね。この更年期障害も、婦人科に行くと治療ができます。

婦人科で出来る治療としては、漢方療法や、ホルモン補助療法(足りないホルモンを補う治療)、プラセンタ療法など、治療の選択肢も様々です。

薬の使い方

事前アンケート②:健康診断の注意点

エストロゲンの作用をおさらいしたいと思います。
下図の年齢とコレステロール値に関するわかりやすいグラフを基に説明をしていきます。

エストロゲンの作用

先述の通り、エストロゲンは、妊娠に備える役割、女性らしい体をつくる役割以外に、コラーゲンの産生を促して美肌を作ったり、血管、脳、骨、関節を健康に保ったりする働きがあります。血管はホルモンが減ると、弱くなりやすくなります。

年齢とコレステロール値

上記図は、LDLコレステロール(悪玉コレステロールという言葉を聞いたことがあると思います。)の、男女の年代別平均値を表しています。赤いのが女性、青いのが男性になります。女性の方は、性成熟期のエストロゲンがしっかりあるときはコレステロール値が低く保たれていて、40代を過ぎるとどんどん右肩上がりなのが分かります。
大体閉経前後になると、男性よりも高くなっています。エストロゲンがどれだけすごいのかがかわるかと思います。

3~40代以降気を付ける項目

1.高脂血症:中性脂肪、コレステロール、この辺が上がりやすくなります。ぜひ注意していきましょう。
2.血圧:血管も弱くなることで、血圧も上がりやすくなります。
3.骨密度:エストロゲンが骨の健康を保つために働いているので、エストロゲンが下がると骨密度も下がりやすくなります。エストロゲンが下がると、骨粗鬆症が起こり、骨折のリスクが高くなります。
4.乳がん検診:40代を超えたら、是非してください。国の補助として、40歳以降になると、女性は検診を受けることができます。

事前アンケート③:卵子凍結について

今、SNSや広告で話題の内容になっています。卵子凍結が話題になっている理由をメリット・デメリットと併せてお話しします。

卵子について

卵子凍結の主役は卵子ちゃんです。
卵子が一生に一度しか作られないことを皆さん、ご存じでしょうか。
卵子の数は、一生に一度しか作られず、そこからずっと減り続けます。作られる時期は、お母さんのお腹の中にいるとき、妊娠5ヶ月の時に作られます。
この時、卵子の数は大体600〜700万個あります。
上記図に書いてある原始卵胞とは、卵子を蓄える袋の準備段階のことを言います(原子卵胞=卵子)。600〜700万あった卵子が、赤ちゃんとして生まれた時には、1/3の200万個に減っています。生まれてから更に卵子は減り続けます。そして、小学校になるころには、1/4の50万個まで減少するのです。ここから更に減り続けます。初潮の有無に関係なくずーっと減り続けます。思春期になると、大体2,30万個になります。思春期以降も減り続けて、閉経する頃には1000個ぐらいになっていると言われています。卵子は一生に一度しか作られず、毎日減っていきます。大体、1日30個ぐらいずつ消えています。そして、減るだけではなく、一生に一度しか作られないので、年齢とともに老化もします。一方精子は毎日生産され、75日後には新鮮な精子となります。卵子と精子は全然違いますよね。卵子は年齢によってシビアになります。
女性には妊娠に適した期間があります。妊娠に適した期間とは卵子と母体が共に元気で、子供を産み、育てることのできる期間のことを言います。一般的には、20代〜30代前半と言われています。その後どうなるのかというと、35歳頃から妊娠する力が下がり始めます。38歳になると更にガクッと下がります。40歳以降になると、妊娠はかなり難しくなります。45歳すぎると排卵もほとんどしなくなります。
勉強、キャリアアップに忙しい20代、30代のキラキラ女性。「今は仕事で忙しいけど、いずれは妊娠したい…でも、年齢の話をされちゃうと…」とちょっと思いますよね。
ここで出てくるのが、卵子凍結です。

卵子凍結とは

妊娠に必要なのは、受精卵です。受精卵は卵子と精子が合わさっている卵のことを言います。精子がない状態、卵子単独でも凍結して保存することができます。これを”卵子凍結”と言います。

卵子凍結の方法

卵子凍結の方法は、まずAMH(残存卵子数)を知るのが第1ステップになります。
卵子凍結するには、あとどのくらい自分が卵子を持っているか知る必要があります。これを知ったうえで、この後のプランニングに進みます。
卵子は、1つの卵胞に1つの卵子が入っています。この卵胞は何もしないと1ヶ月に1個しか育ちません。その卵胞に、内服薬や注射を使うことによって卵巣刺激と言われる刺激を与え、1ヶ月に数個〜数十個育てます。育った卵胞から卵子を採取する。これが、採卵と呼ばれるものになります。採卵で採った卵子を凍結していくのが”卵子凍結”です。

卵子凍結のメリット・デメリット

卵子凍結のメリットは、何年経っても保存した時の若い卵子を使用できるということです。学会で推奨されている卵子凍結の時期は40歳未満です。40歳は大きな区切りになっていきます。

卵子凍結のデメリットは2つあります。

1.たくさんの卵子が必要になること。35歳前後で、もし子供がほしいと考えた場合、1人の子供あたりに必要な卵子の数は15〜30個、必要になります。これくらいの卵子数があれば、やっと1人の子供が考えられます。
20個前後のたくさんの卵子を採るためには、先ほど話した卵巣刺激、毎日注射して卵巣に刺激を与える必要があります。注射を毎日しなくてはいけないので痛みが伴うというデメリットがあります。人によっては、1回の採卵で数が採れなければ、2回、3回と採卵が必要になっていきます。

2.コストがかかります。私は去年、卵子凍結をしましたが、1回につき大体、5〜60万円程かかります。東京都では卵子凍結の助成金の話が出ています。

卵子凍結 まとめ

卵子凍結についてまとめます。パートナーがいるのであれば、2人で妊娠を考えることが1番コスパが良いです。パートナーがいて、自然妊娠を希望しているのがベストですが、パートナーがいた状態で、たとえ不妊症になったとしても、今は治療が保険適用の時代になっています。2人で取り組むことが、一番コスパがいいです。卵子だけの凍結よりも、受精卵として凍結したほうが妊娠率、卵の数の必要性が全然違います。
以上のことを踏まえて、卵子凍結をするのに良いタイミングを提案します。自分のAMH(残存卵子数)があとどのくらい残っているか、その卵子の数が年齢相当であるならば、35歳前後での採卵がおすすめです。
先述の通り、35歳から妊娠する力が落ちていきます。AMHが年齢相当であるならば、そのくらいで卵子凍結するのがベストかなと思います。
あまり早く行うと、毎年凍結費用がかかってきてしまいますので、費用面も考えて卵子凍結していくのがおすすめです。
卵子凍結についてご理解頂けたでしょうか。

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生理と更年期について

リプロダクションクリニック東京 産婦人科専門医/女性ヘルスケアアドバイザー

干場 みなみほしば みなみ

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