慣れ親しんだ家で住み続けたいと考える高齢者はとても多いです。
一方で、年齢を重ねることで足腰の筋肉や心肺機能が衰え、ちょっとした段差につまずいたりトイレや風呂などの生活動作に困難が生じます。
そういった住環境をリフォームしたいといった声は多く耳にします。
しかしリフォームする際、リフォーム業者は医療や福祉の知識が十分にあるのか、利用者に合わせた改修をしてもらえるか、など不安の声もあります。
今回は、住宅環境に関するプロフェッショナルの資格「福祉住環境コーディネーター」についてご紹介します。
- 福祉住環境コーディネーターの仕事内容・やりがい
- 福祉住環境コーディネーターの資格要件
- 福祉住環境コーディネーターの資格の種類・取得方法
住宅改修を検討する人や福祉住環境コーディネーターの資格取得に役立てればと思います。
ぜひ最後までお読みください。
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福祉住環境コーディネーターとは?
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福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障害のある人に対し、長く暮らし続けることができる住環境を提案するアドバイザーです。
個人によって、ニーズや各々の住環境は全く違うため、一人一人に合わせた住環境支援が必要となります。
そのため医療・福祉的観点から、高齢者や障害のある人の心身機能や住環境を評価します。
そして困難さが生じている生活様式をみつけること、各種専門家と連携して、福祉用具や住宅改修のアドバイスをすることが求められます。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容
福祉住環境コーディネーターの仕事内容は以下の通りになります。
住宅改修プランの提示
高齢者や障害のある人に対し、生活がしやすい住環境を提案します。
段差解消、手すりの設置、引き戸への変更など多岐にわたります。
個人のニーズに合わせるため、ケアマネージャーや建築士、看護師等との連携が求められます。
福祉用具の選定アドバイス
住宅改修以外に用途に合わせた福祉用具の選定も行います。
介護ベッドをはじめ、シャワーチェアや自動採尿器など福祉用具の種類や品目は数多くあります。
しかし多くの人は実際どの福祉用具が生活に適しているか知りません。
福祉住環境コーディネーターは個人の心身機能に合わせて福祉用具を選定することが重要です。
住宅改修費支給申請の理由書作成
介護保険制度では必要と認められた場合、住宅改修費の一部を自治体が負担してくれます。
その際住宅改修費支給申請に必要な書類の提出が求められます。
福祉住環境コーディネーター2級以上を取得していれば住宅改修費支援申請時に必要な理由書を作成することができます。
福祉住環境コーディネーターのやりがい
福祉住環境コーディネーターの資格を活かし、住環境や生活の質が改善される経験はとても大きなやりがいになるのではないでしょうか。
以下のような経験でも、やりがいを得ることができます。
医療・福祉の分野への貢献
福祉住環境コーディネーターは、医療・福祉の分野でも活躍しています。
医療的な側面では、怪我や病気などで体が不自由になった人に配慮した住環境整備。
福祉的な側面では、誰もが利用できるユニバーサルデザイン、地域で暮らす障害者にやさしいスロープやバリアフリーなどです。
福祉住環境コーディネーターの提案が医療や福祉の分野に大きく貢献します。
自分のアイデアを形にできる
住環境を整えることは定型的なものではなく、状況に応じた柔軟な思考が求められます。
福祉住環境コーディネーターは、個人のニーズに合わせて色々なアイディアを考え、様々な住宅改修プランや福祉用具を提案することが求められます。
自分の提案によって住む人の生活の質を改善すれば、やりがいを感じることができるのではないでしょうか。
専門性の高い幅広い知識を得ることができる
住環境や介護保険に関する法律、新しい建築デザインや福祉用具の情報など、医療や福祉、建築の情報は日々更新されています。
福祉住環境コーディネーターが色々なアイディアを提案するためには多くの知識や情報をいち早く入手しなければなりません。
また、住環境に関わる予算や費用負担について把握する必要があります、
勉強を続けるのは大変ですが、専門性の高い幅広い知識を身につけられることも、魅力の1つではないでしょうか。
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福祉住環境コーディネーターになるには?
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福祉住環境コーディネーターになるにはどうすればよいのでしょうか?
詳しく解説していきます。
資格の種類
福祉住環境コーディネーターは難易度別に3つ資格があります。
詳細は以下の通りです。
福祉住環境コーディネーター3級
最も難易度の低い資格になります。
バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方、少子高齢化社会と共生社会への道など、福祉や住環境の基礎的な知識が求められます。
福祉住環境コーディネーター2級
3級の知識に加え、実務に関することやマネジメント能力、他職種連携の知識などが求められます。
福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を保有すると介護保険における住宅改修費支援申請時に必要な理由書を作成することができます。
福祉住環境コーディネーター1級
2級、3級の知識に加え、地域福祉や高齢者・要介護者向け住宅・施設の流れなど具体的で実践的な医療・福祉・建築の知識が問われます。
2級に合格しないと受験することはできません。
試験の概要
3級 | 2級 | 1級 | |
受験資格 | 特になし | 特になし | 2級合格者のみ |
試験方式 | IBT、CBT | IBT、CBT | 学歴などの制限なし |
試験時間 | 90分 | 90分 | 前半:マークシート方式 120分 後半:記述式 120分 計 240分 |
受験料 | 5,500円 | 7,700円 | 1万2100円 |
合格率 | 66.8% | 46.8% | 12.8% |
いきなり2級から受けられる?
初めは3級から受験する人が多いですが、2級は3級と同じく日本に居住する以外受験資格の制限がないため、最初から2級に受験することができます。
ダブル受験は可能?
2級、3級とも同日に試験があり、試験の時間帯が異なるため2級、3級のダブル受験をすることができます。
試験日はいつ?年に何回あるの?
1年で行われる試験回数ですが、1級は年1回、2・3級は年に2回行われています。
試験の時期は、1級が11月頃、2・3級は7月と11月頃です。
申込期間は毎年若干の前後はありますが、全試験共通で4月〜5月頃になっています。
そして最後に、合格発表の日程ですが、7月試験のものは8月に発表、11月試験のものは3月に発表と、11月試験だけは合格発表まで少し期間が空くことになります。
資格を取得するための勉強方法とは?
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勉強方法はテキストによる独学、または通信講座でも勉強することができます。
また医療や福祉、建築関係で務めている方であれば勉強時間が少なくて済みます。
テキストによる独学
独学で習得することは可能です。
しかし、出題範囲が広いこと、働きながら取得を目指す人が多いため効率の良い勉強方法が重要です。
各試験とも必要なテキストは「公式テキスト」と「過去問題集」です。
効率的な勉強方法としては、まず公式テキストを1、2回さっと目を通します。
その後、過去問題集をひたすら解いて理解を深めていきます。
2級であればこれを3か月程度繰り返すと合格ラインまで理解できます。
1級は公式テキスト以外のテキストが少なく、出題範囲も広いため長期間にわたって勉強する必要があります。
通信講座
勉強時間の確保が難しい、効率的に勉強したい方は通信講座がおすすめです。
期間は約6か月、費用相場は約5万円になります。
資格を取得するメリットとは?
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幅広い業界で活躍できる
福祉住環境コーディネーターになると様々な業界からオファーがあります。
医療分野では病院やリハビリテーションセンター、福祉分野では介護施設や福祉用具取扱店、またハウスメーカーなど建築の分野からも経験を求められています。
様々な場所で就職し経験を生かすことで、医療や福祉など幅広い分野で活躍が期待されます。
利用者の環境状況をより良いものにできる
住環境に対する提案は、高齢者や障害のある人にとって生活範囲の拡大につながります。
住環境が整うことでトイレや入浴など一人でできる動作が増えることで自信がつき、外出など生活範囲を広げようと意欲が上がります。
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障害のある人の住環境に対し、ニーズに合った提案をすることで自宅や生活範囲など環境状況を改善でき、利用者の生活の質の向上に大きな貢献ができるでしょう。
福祉住環境コーディネーターと類似の他の資格
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福祉住環境コーディネーターを目指そうとしている方に、おすすめな資格を以下にまとめました。
あまり馴染みはないかもしれませんが、介護業務の幅を広げるために有用な資格です。
気になる資格がありましたら、以下のリンクからご確認ください。
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資格名 | 資格概要 | 受験資格 | 資格試験実施機関 |
ガイドヘルパー | 一人で外出するのが困難な視覚障がいを持つ方、全身性障がいを持つ方、知的・精神障がいを持つ方などの外出同行や移動を支援する職業のことです。 | 特になし | 平均して2〜5日です。 受講料などは自治体や事業所によって異なります。 |
レクリエーション介護士 | 介護の基礎知識をもとに、利用者さまが喜ぶレクリエーションを企画・実施できる人材を育成するための資格です。 | 特になし | 日本アクティブコミュニティ協会が認定する機関で講座を受講する必要があります。 |
福祉用具専門相談員 | 福祉用具に関するアドバイスを行う専門家のことです。 公的資格ではありますが、国家資格ではありません。 | 特になし | 講習は都道府県知事の指定する研修事業者が実施しており、 約1週間かけて受講します。 |
精神保健福祉士 | 主に精神保健福祉分野で活動する専門職の国家資格です。 | 養成施設や専門学校等で専門的なカリキュラムを履修する必要があります。 | 年1回2月初旬に行われます。 |
福祉住環境コーディネーターまとめ
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この記事では、福祉住環境コーディネーターの基本的な知識についてお伝えしました。
以下にこの記事で紹介したことをまとめます。
- 福祉住環境コーディネーターは住環境のプロとして様々な業界から求められており、やりがいをもって働ける。
- 福祉住環境コーディネーターは2級、3級は日本に居住していれば誰でも受験できる。
- 福祉住環境コーディネーターは1級、2級、3級の計3つ資格があり、2級以上であれば住宅改修費支援申請時に必要な理由書を作成できる。
- 資格は勉強時間や費用を考慮し独学、通信講座の2つを選択できる。
福祉住環境コーディネーターに興味を持ち、資格取得に役立てていただけたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。