介護職員として働いている方や介護業界に属している方は介護報酬という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
高齢化が進む日本ではたびたび、介護報酬内容が改定されています。
この記事では、介護報酬について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護報酬とは
- 介護報酬の単位
- 最新の改定内容は
介護報酬や仕組み、改定内容を理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
介護保険について知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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介護報酬とは
介護報酬とは、事業者が介護保険が適用される介護サービスを提供した際に、その対価として受け取る報酬のことを指します。
介護や支援が必要となった際は、自治体に要介護・要支援認定を申請し、認定されると介護保険が適用されます。
介護保険を受けると被保険者の利用負担が大きく軽減され、介護報酬の1割〜3割程度の支払いに抑えられます。
一方、事業所は利用者から1割〜3割、残りをすべて自治体に請求し、介護保険制度を利用して賄っています。
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介護報酬の仕組みは?
介護保険は、被保険者の保険料5割と国や自治体の公費5割の負担割合で賄われています。
介護保険制度は2000年に施行され、40歳以上の全国民が生涯にわたり納め続けなければならないものです。
介護保険を納めることで、要支援や要介護認定を受けた65歳以上の方の介護報酬負担が少なくなる仕組みとなっています。
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介護報酬の単位って?
介護報酬は、介護保険のサービスごとに決められた単位を用いて計算されます。
利用する介護保険サービスにより単位があり、それらに地域ごとで定められた金額を掛けたものが介護報酬として事業所に支払われます。
各介護保険サービスの単位については、厚生労働省の「各サービスの基本報酬」をご覧ください。
また、利用者が1カ月で利用できる単位には上限があります。
これを区分支給限度額といい、要支援や要介護の認定により異なった上限が設けられています。
この上限を超えてしまうと、超えた部分が全額自己負担となってしまいます。
そのため、利用者は月に利用できる単位がどれくらいかを把握し、必要な介護サービスを選んで利用する必要があります。
介護サービスの種類についても詳しくまとめていますので、ぜひこちらの記事もあわせてご参考ください。
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介護報酬の計算方法は?
介護報酬は、介護保険のサービスごとに単位が決められており、1ヶ月の単位数の合計に加算等を加え計算したものが介護報酬額となります。
単位数の合計には様々な加算がされ、その中に地域加算と人件費加算があります。
地域加算とは、地域ごとの人件費差が生まれることを考慮し、考えられた加算です。
この加算は、地域区分が決められており、その区分ごとに加算される割合が異なります。
例えば、事業者が東京都23区内でサービスを提供している際は、1級地のため、加算割合は20%です。
【東京都の上乗せ加算割合】
地域区分 | 加算割合 | 市区町村名 |
1級地 | 20% | 東京23区 |
2級地 | 16% | 狛江市・多摩市 |
3級地 | 15% | 八王子市・武蔵野市・府中市・調布市・町田市・小金井市・小平市・日野市・国分寺市・稲城市・西東京市 |
4級地 | 12% | 立川市・昭島市・東村山市・国立市・東大和市 |
5級地 | 10% | 三鷹市・青梅市・清瀬市・東久留米市・あきる野市・日の出町 |
6級地 | 6% | 福生市・武蔵村山市・羽村市・奥多摩町 |
7級地 | 3% | 瑞穂町・檜原村 |
その他 | 0% | 島しょ地域 |
また、地域区分その他に属する島しょ地域には、別途特別加算が加算されます。
特別加算とは、奄美諸島や小笠原諸島、その他離島など、国が定めている地域で加算されるもので、15%の上乗せがされます。
その他にも利用しているサービスにより、人件費が70%か55%、あるいは45%加算されます。
では、先ほど例に挙げた東京都23区内でサービスを提供している事業所を例に計算方法をご紹介します。
東京23区内で30分以上1時間未満の訪問介護(身体介護)を提供した場合だと、まず、地域加算が20%上乗せされます。
さらに、訪問介護の人件費割合は70%と決まっており、さらに上乗せし加算されます。
1単位の単価は基本10円ですので、計算式は以下のようになります。
10円×20%(0,2)×70%(0,7)=1,4円
1,4円+10円=11,4円
この11,4円が、東京23区内で訪問介護を提供した際の単価です。
1単位の単価が分かれば、あとはサービスごとに決められた単位数を掛けるだけです。
今回は、30分以上1時間未満の訪問介護(身体介護)ですので、396単位となります。
11,4円×396単位=4,514,4円
小数点以下は切り捨てとなるため、今回の介護報酬は4,514円です。
なお、利用者の負担額は1割負担〜3割負担ですので、451円〜1,353円となります。
介護士の給料は介護保険から支払われている?
これまで、介護報酬についてご紹介してきました。
では、介護士の給料はどこから捻出され、支払われているのでしょうか?
介護士の給料は介護保険から支払われています。
介護事業所は毎月支給される介護報酬の中から、必要経費などを差し引き、残りが介護士の賃金となります。
また、介護報酬の金額は国が決めており、それに基づきそれぞれの介護事業所で行った介護サービスに対して自治体が介護報酬を支給します。
介護士の給料についても詳しくまとめていますので、こちらの記事もあわせてご参考ください。
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介護報酬の2021年度改定内容は?
現在の日本では高齢化が進み、介護業界の人材不足などが問題視されています。
また介護職員の給料にも直結される介護報酬の改定が3年ごとに行われ、見直されており、最近では令和3年に見直しが行われました。
今回の改定内容についてポイントを詳しくご紹介します。
感染症や災害への対応力強化
近年では、新型コロナウイルスや自然災害の影響から、感染症や自然災害発生時に必要なサービスが提供できる体制の構築が求められています。
このようなことから、今回の改定では「感染症や災害への対応力強化」「業務継続に向けた取組の推進」などが新たに加えられました。
【主な改定ポイント】:日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進
- 感染症対策の強化【全サービス】:介護サービス事業者に、感染症の発生やまん延等を予防するために、委員会の開催や指針の整備、研修・訓練の実施が義務付けられました。
- 業務継続に向けた取組の強化【全サービス】:感染症や災害が発生した際も、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練の実施を義務づけられました
- 災害への地域と連携した対応の強化 【通所、短期入所系、特定・施設系サービス】:施設系サービス等が非常災害対策に関する訓練を行う際、地域住民の参加が得られるよう連携を図る努力の義務化
地域包括ケアシステムの推進
近年の日本では、高齢化が進んでおり、今後介護ニーズのさらなる増大・多様化が予測されます。
このことから、2025年を目処に「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。
今回の改定では、住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう議論されました。
【主な改定ポイント】:住み慣れた地域で、利用者の尊厳を保持し、必要なサービスが提供されるよう取組を推進
- 認知症への対応力向上に向けた取組の推進
- 介護サービスにおいて、認知症対応力を向上させる目的から、訪問系サービスに認知症専門ケア加算を新たに創設する。
- 緊急時の宿泊ニーズに対応するため、多機能系サービスに、認知症行動・心理症状緊急対応加算を新たに創設する。
- 介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させるため、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づける。
- 看取りへの対応の充実
- 看取り期の本人・家族との話し合いや関係者との連携を充実させる。
- 特養、老健施設や介護付きホーム、認知症GHの看取りに係る加算は、現行の算定に加え、それ以前の一定期間の対応について、新たに評価する。
- 介護付きホームにて、看取り期に夜勤又は宿直により看護職員を配置している場合に新たに評価する。
- 看取り期の利用者に訪問介護を提供する場合に、訪問介護に係る2時間ルールを弾力化し、所要時間を合算せず、それぞれの所定単位数の算定を可能とする。
自立支援・重度化防止の取り組みの推進
利用者の自立支援・重度化防止には、リハビリテーション・機能訓練や口腔、栄養の取組が大切です。
このことから、「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」などについて議論されました。
【主な改定ポイント】:リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化
- リハビリテーション・機能訓練 :「リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(老健)」が新設されました。
- 口腔:「口腔衛生管理体制加算(施設系サービス)」が廃止され、基本サービスとして行うことになりました。
- 栄養:「栄養マネジメント加算(施設系サービス)」が廃止され、基本サービスとして行うことになりました。
介護人材の確保・介護現場の革新
介護人材の不足が問題視されている介護業界で、人材確保や生産性向上などの取組の実施が急がれています。
そこで、今回の改定では、「介護職員の処遇改善や職場環境の改善」「テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和」などについて議論されました。
【主な改定ポイント】:介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進
事業者にとって、既にある「介護職員等特定処遇改善加算」がより使いやすい仕組みになるよう、見直しが行われました。
そこで、今回の改定では、「人員配置基準における両立支援への配慮」「ハラスメント対策」が求められるようになりました。
制度の安定性・持続性の確保
近年では、高齢者の増加と少子化が問題視されており、それに伴い生産年齢人口のさらなる減少が見込まれています。
そこで、今回の改定では、サービス提供の実情などを踏まえ、「評価の適正化・重点化」「報酬体系の簡素化」が進められました。
【主な改定ポイント】:評価の適正化・重点化
老人性認知症疾患療養病棟を除く介護療養型医療施設は、令和5年度末の廃止期限までに介護医療院への移行等を進め、基本報酬の見直しが行われました。
また、上位区分の算定が進んでいることから、「介護職員処遇改善加算(IV)(V)」の廃止がきまりました。
介護の仕事の給料を上げるには?
介護職員として勤務している方の中には、もう少し給料が上がればいいのにと思ったことがある方も多いと思います。
毎日様々な利用者と向き合い、様々な問題に直面し、解決していく。
このような頑張りに見合った給料がほしいと思うことは、一生懸命に働かれているからこそです。
そこで、介護の仕事において給料を上げる主な4つの方法をご紹介します。
資格を取る
介護職員として働く際は、資格が無くても勤務することは可能ですが、何らかの資格があったほうが給料は高くなります。
そこで、取得するべき資格を以下にまとめました。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
- ケアマネージャー
下に行くにつれ、資格取得の条件が厳しかったり、試験そのものが難しかったりします。
ですので、資格を持っていない方は、まず介護職員初任者研修を取得することをお勧めします。
手当のつく働き方を選ぶ
介護職員は様々な施設や事業所で働くことができるため、手当の付く職場を選ぶことで、給料を上げることができます。
基本的な手当には、夜勤手当と残業手当があります。
デイサービスや訪問介護事業所以外には、夜勤のシフトが存在します。
積極的に夜勤のシフトに勤務することで、夜勤手当が付き、給料を上げることができます。
介護の職場も通常企業と同様に残業手当が付きます。
しかし、事業所により残業手当のルールが異なるため、事前に確認が必要です。
高給な役職に就く
通常の介護職員よりも高給な役職に就くことで、給料を上げることができます。
介護現場でいう高給な役職とは、「管理者」です。
管理者には、マネジメントの知識も必要になるため、事前に知識を身に着けておく必要があります。
長く働き続ける
介護現場では、長く働き続けている人を応援する制度があります。
例えば、国家資格である介護福祉士を取得し、尚且つ10年間勤務し続けた方を対象に賃金アップの施策が実施されています。
実際、勤続年数が長くなるほど給料は上がる傾向にあるので、長く働き続けることで給料アップが見込めます。
介護に関する資格についても詳しく解説していますので、興味のある方はこちらの記事もあわせてご参考ください。
介護とは人の命に係わる仕事です。いろいろな専門性が求められるため、国家資格から民間の資格までさまざまな資格があります。具体的にはどのような資格があるのでしょうか?本記事では、介護の資格について以下の点を中心にご紹介します[…]
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介護報酬のまとめ
今回は、介護報酬とその仕組みや改定内容についてご紹介しました。
介護報酬と仕組みや改定内容についての要点を以下にまとめます。
- 事業所が介護サービスの対価として受け取る報酬のことを介護報酬と言う
- 介護報酬は単位で計算され、介護度ごとに1カ月の上限が決まっている。
- 介護報酬の改定が3年ごとに行われ、見直されている。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。