世帯分離という言葉を聞いたことはあっても、詳しく知らない人も多いですよね。
いざ世帯分離するといっても、メリットばかりではありません。
デメリットにも目を向けてしっかり検討することが大事です。
では、自分の家ではどちらにした方がいいの?どっちがお得?と気になりませんか?
そこで今回は以下の内容を中心に紹介します。
- 国民健康保険料のデメリット・メリット
- 世帯分離に適した家庭
- 世帯分離の注意点
これからも高齢化社会は進んでいきます。
ご自身の財産とご家族の在り方を学んで、みんなが有意義な時間を過ごせるようにしていきましょう。
ぜひ最後までご覧ください。
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世帯分離とは?
まず世帯分離の基本を説明します。
【世帯分離】とは、1つの家に同居しながらも、住民票の世帯を2つ(親と子、夫婦間など)に分けることをいいます。
<例>同一世帯 父親(世帯主)・母親・自分・自分の配偶者・自分の子
世帯分離 父親(世帯主)・母親 / 自分(世帯主)・自分の配偶者・自分の子
上記のように世帯主ごとに住民票を分けることが世帯分離です。
多くの方が世帯分離を意識するのは要介護者がいる場合です。
介護サービスの負担額決定は
- 本人の所得額
- 世帯の所得額
の2つのパターンがあります。
例にあげると、収入の多いお子さんと同居同世帯の場合、その所得に応じて親の介護サービス料が決定するので高くなります。
世帯分離することによって、同居でも親だけの所得に応じて介護サービス料が決定するため、負担軽減が可能になるのです。
世帯分離の目的
【世帯分離】の目的は介護サービス料軽減だけではありません。
本来、収入の少ない働き終わった親世代の「住民税の軽減」が主な目的となります。
世帯分離することで親世代の収入が下がり「住民税非課税世帯」になると、以下の内容について優遇されることがあります。
- 国民健康保険料の負担軽減
- 高額介護サービス費の負担上限額が下がる
- 介護保険料の負担軽減
これらは所得に応じて判断され、全ての人が同様に受けられる訳ではないため、注意が必要です。
夫婦間でもできる
同居している夫婦でも、それぞれに十分な収入があれば世帯分離は可能です。
しかし、民法上夫婦はお互いに協力しなければならない「協力扶助義務」が生じることから、ほとんどの自治体では原則認めていません。
どうしてもしたい場合は「生計が別であること」が分かるようにすることが必要です。
介護保険は社会の要介護者を支えるための保険制度です。介護保険を運営する財源として、国に納める必要のあるお金を介護保険料と言います。しかし、介護保険料を納める際に計算方法がわからず、いくら納めるべきかわからない人もいると思います。[…]
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世帯分離のデメリット
世帯分離のデメリットはいくつかあります。
ご自身の場合どうなのか、下記項目を当てはめてみると、イメージできるかもしれません。
国民健康保険料が高くなる場合がある
国民健康保険に加入していると、支払いは世帯主が行います。
世帯主が社会保険、家族が国民保健でも世帯主が支払う「世帯単位」という国の取り組みによるものです。
そのため、世帯分離で2世帯になると世帯主それぞれが支払わなくてはなりません。
「一世帯にいくら」という定額の部分が、2世帯分となり高くなります。
扶養手当や家族手当が使えなくなる
会社員の人が親を扶養に入れている場合、世帯分離することで扶養から外れるため、職場の健康保険組合から毎月支給されていた扶養手当や家族手当が使えなくなってしまいます。
詳しくは会社によって違いがありますので、確認することが必要です。
健康保険組合を利用できなくなる
被扶養者は被保険者との同居が条件になっていることがあります。
そのため世帯分離の場合、別居扱いとなるため会社の健康保険組合を利用できなくなります。
手続きに時間がかかる
世帯分離の申し込みをするには、複数の書類を用意する必要があります。
書類の取得や記入、それをするために調べる時間などかなり手間と時間がかかるのはデメリットといえるでしょう。
また、世帯分離後に住民票など書類が必要になることがあります。
世帯主が書類を取得する際、親が高齢で子どもに頼むと「委任状」が必要です。
委任状は原則本人記入のため、親が心身上の理由から記入が難しい場合、本人の意思を確認する作業が必要となります。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
世帯分離のメリット
次に世帯分離のメリットについてみていきたいと思います。
国民健康保険料が安くなる
国民健康保険料は前年度の所得によって計算されているため、一線を退いた親世帯の負担額が減ることがあります。
介護費用の自己負担額を減らせる
介護サービスは費用の一部を利用者が負担します。
その決定額は「本人の収入」または「世帯の収入」で決まるため、世帯分離することで自己負担額を減らせる可能性が大きいです。
介護費用の自己負担額の上限が下がる
介護サービスの負担額には上限が定められています。
「高額介護サービス費制度」、「高額介護・高額医療費合算制度」は同じ世帯で生じた介護や医療費を合算し、所得に応じた上限から超えた場合に払い戻しが可能となります。
そのため、世帯分離で所得が低いと上限額も下がるので介護費用の節約ができるのです。
介護保険施設の費用を軽減できる
介護施設や介護療養型病院では、入所中や入院した際の自己負担を減らせることがあります。
なぜなら、居住費や食費などの自己負担限度額を決定するのは、世帯の年収や預貯金額から判断されているためです。
自己負担額は第1から第4段階に分かれているため、世帯分離によって所得が大きく下がれば、費用を軽減できる可能性が高くなります。
後期高齢者医療制度の保険料が下がる
後期高齢者医療制度の保険料は「世帯全体の年収」が算定基準となっています。
そのため、会社員で収入の高い子世代と同一世帯でいるよりも、世帯分離で現役引退した親世代だけの世帯の方が後期高齢者医療制度の保険料が下がります。
世帯分離に適した人・適さない人
世帯分離のデメリット・メリットが分かったところで、世帯分離はどのような家庭に適しているのかご紹介します。
適した人
- 要介護者である親の所得が80万円以下で同居家族が高収入
- 施設サービスを利用している
- 介護度の高い人がいる
現役引退した親世代で要介護者の収入が少なく、子世代の会社員給料が高い場合は世帯分離で様々なメリットを受けられます。
施設の利用料の差額は一見数百円でも、1ヶ月1年単位で見ていくと大きな違いになります。
また、介護度が高いと負担額は上限の1割です。
適さない人
- 要介護者である親世代の収入が高い人
- 1世帯で2人以上の介護サービスを受けている場合
- 会社員の子が親を扶養家族にいれている
現役引退していても、アルバイト収入や年金額が多いなど要介護者の所得が高いと世帯分離しても負担軽減は受けにくいといえます。
また親子でそれぞれ介護サービスを利用している場合「高額介護高額医療合算制度」の世帯合算ができなくなります。
さらに、会社員の子が親を扶養家族としている場合、会社の家族手当から外れることも考慮しなければなりません。
世帯分離の手続き方法
いよいよ世帯分離の手続きです。
世帯分離で自身の負担が軽減するか確認しましょう。
合わせて、手続きに必要なものと窓口がどこになるかチェックしておきましょう。
負担が減るのか確認する
世帯分離で負担軽減できる主な項目は以下の通りです。
- 住民税の軽減
- 国民健康保険料の負担額
- 介護保険サービスの自己負担額
- 施設入所の食費・居住費の自己負担額
- 後期高齢者医療保険料の負担額
それぞれ収入額によって違いがあります。
ご自身と親の所得状況を考慮したうえで、経済的にメリットがあることを確認することが大事です。
必要な書類
- 世帯変更届(窓口で用紙をもらいます)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート・健康保険証など)
- 印鑑(必要になることもあります)
- 国民健康保険証(加入している場合必要となります)
- 委任状(本人・世帯主以外が提出する場合必要です)
以上5点が用意できていると手続きがスムーズに行えます。
本人確認書類は顔写真があるものを選ぶか、ついていないものなら念のため2種類あると安心です。
市区町村の窓口へ届け出を提出する
世帯分離届の提出は、住民票のある各市区町村の窓口で手続きを行います。
提出できる人は以下の通りです。
- 本人
- 世帯主(分離した際の世帯主も可能)
- 代理人(委任状が必要)
- 同一世帯の人(市区町村によっては委任状が必要)
※世帯分離してから14日以内に届け出が必要なところもあるので注意が必要です。
世帯分離を行う際の注意点
【世帯分離】にはデメリット以外にも注意が必要なことがあります。
手続きする前に以下4つの内容も確認してみてください。
1.世帯分離は「保険料や自己負担額の軽減」を目的としているわけではありません。
そのため窓口で理由を聞かれた際に「介護保険の負担を減らしたい」という理由だと受理されないことがあります。
2.高齢両親の所得が年金だけで生活はできない状況での世帯分離はできません。
世帯分離はあくまで「生計を別にする」という目的が大前提です。
3.分離後に、必要な書類申請の手続きがスムーズにいくかも考える必要があります。
住民票の交付や転居届、所得証明書や介護保険証などは本人か同一世帯の人であればスムーズに手続きできるのに対し、世帯が違うと本人の委任状が、都度必要になってきます。
4.世帯分離にするために証明が必要なこともあります。
その際には公共料金のそれぞれの世帯主になる人の名前が記入されている請求書などを用意しましょう。
世帯分離をしたあと、元に戻せる?
一度世帯分離をした世帯同士がまた一つの世帯に戻ることは可能です。
世帯合併という制度で、住居を共にし生計も一緒であることが必要となります。
世帯主または世帯員が、市区町村の窓口に世帯合併届出(または世帯変更届出)を申請します。
出典:全訂 住民記録の実務
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65才以上の単身世帯は増加傾向
近年、65才以上の単身世帯は増加傾向にあります。
国民生活基礎調査の「世帯構造別にみた65才以上の者のいる世帯数の構成割合年次推移」グラフから、男女それぞれの単独世帯・夫婦のみの世帯が1.5~2倍に増加しているのが分かりました。
これにはいくつかの背景がうかがえます。
- 社会全体の高齢者増加
- 核家族で子どもが独立している
- 1人での生活が可能な世の中である
それだけでなく、介護負担を減らすために世帯分離をしているケースが増えていると考えられるでしょう。
世帯内の介護調査では「単独世帯」が支援の軽い割合の者が多いのに対し、「三世代世帯」では要介護度の高い者が多い結果となっています。
要介護者のいる世帯での年齢による割合は、単独世帯は40才〜90才以上まであまり変わらないのに対し、三世代世帯では80才以上になると増加傾向にあります。
つまり、一人暮らしなどもともと単独世帯である者の割合はさほど変わりありませんが、心配から高齢になって同居すると、世帯分離のメリットがあることを知らないまま同一世帯になるケースが多いということです。
また、高齢化が進むことで気にしなければならないこともあります。
80歳以上の要介護者等の割合は年々高くなり、平成13年の57.9%から平成28年には69.4%になりました。
それにより介護する人の年齢も、平成13年の「50〜59才」から平成28年には「60〜69才」が最も多くなり、世間では老々介護という言葉が浸透してきました。
老々介護になると世帯分離の受理は難しくなるといえるでしょう。
まして夫婦間では圧倒的に低くなってしまいます。
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世帯分離のデメリットのまとめ
ここまで世帯分離のデメリットを中心にお伝えしてきました。
以下まとめです。
- 国民健康保険料のデメリットは一世帯の定額分が世帯分離によって二倍になること、メリットは前年度所得が少ないと負担軽減になること
- 世帯分離に適している家庭は、同居家族が高収入で要介護者である親世代と大きな差があることや、施設サービスを利用している・介護度の高い人がいるなど介護の面で負担軽減できる場合
- 世帯分離の注意点は、介護費軽減の理由ではできないこと、分離後に書類申請の手続きで委任状が必要になるなど手間が増えること
これらの情報が少しでも皆さまのお役にたてば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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