高齢者社会が進む日本において介護業界に興味を持つ人は増えています。
一方で介護の仕事でどれくらい稼げるか、など給料事情も非常に気になるところです。
以前はキツイ、給料が安いと思われがちでしたが、資格を取得したり独立したりして給料アップにつなげている人も増えています。
今回は、介護士に関する様々な給料事情について、次の項目を中心に解説します。
- 勤務形態や性別などによる給料の違いについて
- 介護士の給料を上げる方法
- 介護士に関連した仕事の給料事情
- 介護士になる方法
介護士の給料事情を知り、介護士への興味を深めていただければと思います。
ぜひ、最後までお読みください。
スポンサーリンク
介護士の給料はどれくらい?
※画像はイメージです
介護士の平均給与について勤務形態別に説明します。
初任給
介護士の初任給は、厚生労働省の「平成29年介護従事者処遇状況等調査結果」によると、
- 介護職員…19.1万円
- 介護福祉士…介護職員より2万円ほど高い
となっています。
初任給においては、大学卒、高専・短大卒ともに同年代の平均的な収入です。
正社員の給料
介護士全体の平均年収は約338万円、平均月収は約24万円、平均ボーナスは約51万円です。
全職種の平均年収は441万円なので介護士の給料は低い傾向にあります。
勤続年数に対する昇給は1年につき約4000円です。
年代別では30歳未満は平均年収340万円未満ですが、30歳以降は約350万円〜360万円で推移しています。
10年前と比較すると平均年収は約40万円上がっています。
また、年収1000万円以上の介護士もわずかですがいます。
非常勤の給料
アルバイト・パートの平均時給は975円と、国の最低賃金の平均よりも上回っています。
派遣社員の平均時給は1374円です。
生涯年収
介護士の生涯年収は、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、
- 介護職員(医療・福祉施設勤務)…1億3500万円
- 訪問介護従事者…1億3000万円
となっています。
上記2つの職種では、生涯年収の大きな違いはみられませんでした。
しかしながら、介護士の年収は、一般的な給与所得者の年収に比べ低い傾向にあります。
介護が必要な人に対して直接介護を行う職種を「介護士」といいます。一方で、介護士とは別に「介護福祉士」と呼ばれている人たちがいることをご存知でしょうか。「介護福祉士」と「介護士」はどんな違いがあるのか疑問に思う人も多いでしょう。[…]
スポンサーリンク
介護士の給料が低い理由
※画像はイメージです
介護士の給与額が一般的な給与所得者に比べて低い理由について解説します。
介護事業所が赤字
平成29年度、収支が赤字になった介護事業所の割合は以下の通りです。
介護保険施設 | 約20% |
小規模多機能型居宅介護支援事業所 | 約40% |
特別養護老人ホームの従来型 | 約30% |
特別養護老人ホームのユニット型 | 約30% |
グループホーム | 約35% |
通所介護の地域密着型 | 約45% |
通所介護の通常規模 | 約35% |
出典:厚生労働省「平成29年度介護事業経営実態調査」
上記のように赤字になっている介護事業所は多くあります。
介護事業所が赤字であるため、介護職員の給料が低くなっている要因の1つです。
介護職の需要が大きい
介護職は超高齢化社会である日本において、将来的にみても需要の高い職業です。
介護職はこの先もなくならない仕事とも言われています。
また、資格がなくても就職が出来て、常に人手不足のため他業種よりも就職しやすいです。
従って、平均給料を上げなくても介護職に就職を希望する方は多く、これが給料の安い理由と言えます。
介護業界の内部留保率が高い
介護士の給料が安い理由として、介護業界の経営者の内部留保費の割合(内部留保率)が高いことも挙げられます。
内部留保費とは施設経営など経営の安定を保つため、経営者が社内で貯金をしている資産のことです。
トラブル発生時、経営を安定させるため内部留保費を貯めておくことは大切です。
しかし、内部留保率が高くなることで介護職員への還元率が低くなり、給料が低くなる要因にもなります。
介護士の給料を上げるためには
※画像はイメージです
役職に就く
同じ職場で一定年数経験を積むと昇進して役職に就く機会があります。
主任など役職になると、基本給に対し約10%〜20%加算される場合があります。
施設の責任者(施設長など)になると、一般職員と比べ約180万円年収に差がつきます。
ただし、役職に就くことは狭き門であり、勤務年数だけでなく他の職員をサポートするなどリーダーシップを発揮することが重要視されます。
また介護士から、利用者や家族からの相談、援助、支援などを行う生活相談員や、他施設との連絡調整役でケアプランなどを作成し介護支援専門員(ケアマネージャー)になると管理者やリーダーとしての手当てがつき給料がアップします。
資格を取得する
介護業務にはいくつかの資格があります。
介護士は資格がなくても就業できますが、介護系の資格を取得することで資格手当がつき、給料アップにつながります。
介護系資格には以下の4つがあります。
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
基本的な介護の知識や技術を身に着けることが可能な資格です。取得すると無資格と比較し月収で平均約2万円給料が上がります。
介護職員実務者研修
質の高い介護を実施するために、専門的な知識と技術の習得が目的となった資格です。
また介護福祉士国家試験の受験資格要件の1つとして、平成28年度より実務者研修の修了が必要となったため注目が集まっています。
取得すると無資格と比較し月収で平均約2万7000円給料が上がります。
介護福祉士
唯一国家資格になる介護系資格で、専門的な介護知識や支援技術を身に着けており、支援方法をヘルパーなどに指導することができます。
介護福祉士を取得すると無資格と比較し月収で5万2000円給料が上がります。
介護支援専門員(ケアマネージャー)
他の資格と少し異なり、介護を必要とする方に対し介護サービスのプランを立案、また介護福祉サービス事業者との連絡調整を行う仕事です。
取得すると無資格と比較し月収で平均約6万円給料が上がります。
勤務先を選ぶ
介護職の給料は勤務先によって異なります。
デイサービスやグループホームより入所型、特に特別養護老人ホームのほうが給料は高い傾向にあります。
皆勤手当や資格手当など手当が豊富な職場は給料が高く、特に夜勤手当の有無が給料に大きく影響します。
企業規模別では従業員が多い職場は、給料が高い傾向にあります。
都道府県や地域別では東京都や神奈川県など首都圏に近い程給料が高くなります。
介護とは人の命に係わる仕事です。いろいろな専門性が求められるため、国家資格から民間の資格までさまざまな資格があります。具体的にはどのような資格があるのでしょうか?本記事では、介護の資格について以下の点を中心にご紹介します[…]
介護士の給料が上がる?|公的価格評価検討委員会の設置による賃上げ
※画像はイメージです
2021年、岸田総理は所信表明演説において、介護職員の賃金引上げを明言しました。
「人への分配はコストではなく未来への投資」と、新・資本主義の実現を示唆したのです。
2022年2月より、介護の現場で働く方の給与を3%(年間11万円程度)の引き上げを約束しました。
介護職員や保育士、幼稚園教諭の賃金は、全産業の平均賃金から乖離がみられます。
賃金の引き上げおよび人手不足の解消に向けて、2022年夏までに方向性を整理するとのことです。
公的価格とは
公的価格とは、商品やサービスの価格を政府が決めることを言います。
岸田総理は、新しい資本主義のための成長と分配の好循環で所得の向上を揚げています。
新政権の戦略として、特に医療や介護・保育分野の公的価格の見直しを行い、賃金の向上を図ろうとしています。
また、コロナウイルスの感染拡大が影響して、医療や介護、保育への負担が大きくなっています。
需要と供給の観点から3つの分野において、賃金のアップが必要です。
公的価格評価検討委員会による給料アップ
医療や福祉・保育の分野は需要が高いのに対して、低賃金が問題になってます。
日本は先進国内中でも、医療や介護・保育の分野で賃金が特に低いのが問題です。
岸田総理の方針により、看護や介護、保育で働く方々を対象に賃金引き上げに関する予算案が採択されました。
予算案では、収入の3%(月給9.000円)の引き上げが令和4年2月から施行されています。
また、介護や保育分野では、技能や経験を詰んだ場合に加算が取れるようになってます。
男女によって給料は変わる?
※画像はイメージです
寝たきりなど介助量の多い方が増えているため、以前より男性介護士の需要は高まり、実際働く人も増えています。
介護士の給料の男女差について比較すると、月収で1万4千円ほど男性が高い傾向にあります。
しかし、全職種の男女差を比較すると、月収で約8万円男性が高い傾向があるため、介護士全体としては賃金の男女差がほとんどありません。
介護士以外の給料は?
※画像はイメージです
介護施設では介護士以外にも様々な職種の方が働いています。
それぞれの職種の給料は以下の通りです。
介護支援専門員(ケアマネジャー)と生活相談員
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、居宅介護支援事業所や入所施設で主に介護を必要とする方に対し、介護サービスのプランを立案、また介護福祉サービス事業者との連絡調整を行う仕事です。
生活相談員(ソーシャルワーカー)は、主に特別養護老人ホームやデイサービスなど介護福祉施設で介護支援計画を作成、また相談業務などを行う業務です。
ケアマネージャーの平均月収は35万円、生活相談員の平均月収は32万円となっています。
看護師
介護施設で働く看護師の業務は主に通所や入所している利用者の健康管理を行います。
また、医療行為として投薬や吸引、経管栄養なども行います。
看護師の平均月収は約37万円となっています。
機能訓練指導員
機能訓練指導員とは通所や入所している利用者に対し、能力に応じたトレーニングメニューを立案し、日常生活の介助量軽減や自立につながるよう支援する職業です。
機能訓練指導員になるには看護師や理学療法士など7つある国家資格のいずれかを取得する必要があります。
機能訓練指導員の平均月収は約34万円となっています。
栄養士・調理師
介護施設で働く栄養士や調理師業務は主に通所や入所している利用者の食事管理を行います。
利用者の健康面や特徴に合わせて栄養士が食事メニューを立案し、咀嚼の状態に合わせて調理師が刻み食やミキサー食など食事形態を整えます。
栄養士の平均月収は約30万円、調理師の平均月収は約25万円となっています。
出典:厚生労働省『令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』
医療サービスの充実を目的として、看護師を設置するグループホームも増えています。ただしグループホームにおける看護師の役割は、医療機関やそのほかの介護施設とやや異なっています。本記事ではグループホームの看護師について、以下の点を中心[…]
介護士になるためには
※画像はイメージです
介護士になる条件は以下の通りです。
必要な資格・経験
未経験で就職するのは可能ですが、採用のハードルはやや高く、施設系の事業所では身体介護は任されない可能性が高いです。
そのため、まず介護職員初任者研修を取得することをお勧めします。
介護職員初任者研修を取得することで身体介護の基礎知識を持っているとみなされます。
また、訪問介護員として働きたい場合は、介護職員初任者研修の取得が必須となります。
介護士になるための方法
まず介護職員初任者研修を取得するためには通信や通学など学校で計130時間、約2か月の研修を修得し、修了試験に合格する必要があります。
次に介護職員実務者研修を取得するためには、450時間(介護職員初任者研修を取得している場合は130時間免除)、約半年の研修を修了する必要があります。
そして国家資格である介護福祉士を取得するためには実務者研修の取得+3年以上の実務経験があれば受験できます。
介護士に向いている人
介護業務は、要介護状態の高齢者に介護支援を通じて接する業務です。
会話をすることも多いので、コミュニケーションが好きな人、対人スキルが豊富な人は向いています。
チームで支援することが多いので、報・連・相が得意な人やチームで仕事をすることが好きな人は適しています。
介護技術は日々進歩しているため、常に向上心を持って取り組める人も介護士に向いています。
介護はとてもやりがいがあり、感謝される仕事です。超高齢化社会の日本では介護職は常に人材不足でありこれからますます介護業界は注目されるようになってきます。今すぐ始めたい、でも資格を取る時間やお金はないという方でも大丈夫です。介[…]
スポンサーリンク
介護施設における処遇改善について
※画像はイメージです
介護業界は、従来人員不足や過度な業務負担から離職者が多く、なり手不足で人材育成が不十分な状態が続いていました。
そこで厚生労働省は介護職員の処遇改善を目的に、事業所に対し「介護職員処遇改善加算」を算定できるようにしました。
介護職員処遇改善加算は、事業所が以下の条件を満たしている程度に応じて算定されます。
- 職務内容に応じた任用条件と賃金体系を整えること
- 経験、資格に応じた昇給、評価の仕組みを整えること
- 資質向上のための計画をたて、研修の実施または研修の機会を設けること
- 賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること
このような介護職員処遇改善加算を算定している施設に勤めることできると、
- 待遇改善手当がつき、給料がアップする
- キャリアパスが明確になりモチベーションが向上する
- 資格取得などスキルアップがしやすい
などの恩恵を受けることができます。
スポンサーリンク
介護士の給料まとめ
ここまで介護士の給料事情や資格取得の方法についてお伝えしました。
- 介護士の給料は通所や入所など勤務先や働く地域によって給料は異なる。
- 介護系の資格を取得することや役職を目指すことで給料アップにつながる
- 介護施設で働く関連職種の給料は資格によって異なる。
- 未経験でも介護士になることができるが、給料やスキルアップするためには介護職員初任者研修などの資格取得が望ましい。
介護士の給料事情を理解し、皆様のスキルアップや給料アップにお役立ていただけたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。