自分を必要とする相手のお世話をすることが生きがいとなる方も多くいます。
とても有意義なことであり、介護施設への入所が決まったとしてもそれは同じです。
ペットと最後まで一緒に過ごしたいと思う気持ちは変わりません。
そこで本記事では、介護施設のペット事情について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護施設でペットは飼えるのか
- アニマルセラピーのメリット・デメリット
- アニマルセラピーに適した動物とは
アニマルセラピーによる効果についても解説しています。
介護施設のペット事情について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
介護施設について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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ペットは家族!コンパニオンアニマルとは?
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コンパニオンアニマルとは、ペットよりも親密で「家族」としての結びつきが強い動物のことを指します。
伴侶動物(はんりょどうぶつ)とも呼ばれ、ペットという一方向的な「人間の所有物」という概念とは異なります。
少子高齢化が進む現代では、生活を充実させるために動物に対して特別な感情を表す言葉として浸透し始めています。
コンパニオンアニマルの代表格は、犬・猫です。
諸説ありますが、犬は2万年以上前、猫は9千5百年ほど前から人間と共に暮らすようになったといわれています。
犬は狩猟の相棒として、猫は人間の作物を狙うネズミ捕りとして人間と共存してきました。
長い年月を経てもなお、犬と猫は人間のパートナーとして欠かせない存在となっています。
認知症の方のペットの世話について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
少子高齢化社会において認知症の方が年々増加していることをご存知ですか?認知症を完全に治す方法が存在しないため、徹底した予防をすることが重要と言われています。そうした背景がある中で多くの認知症予防策(脳トレや運動)が登場し、多くの[…]
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介護施設でペットは飼える?
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数はまだ少ないながら、ペットと入居できる介護施設は存在します。
ペットが介護施設に入る理由は以下の通りです。
- 入居者の方が自宅のペットを介護施設に連れてくる
- 飼い主が逝去して行き場がなくなったペットを介護施設が引き取る
介護施設への入所が決まっても、ペットの行き先が決まらないことは珍しくありません。
核家族化が進み、子供・孫は遠方に住んでいて頼れないのです。
また、突然の体調不良でペットを家に残したまま亡くなり、後日ペットが保護されたという報告もあります。
長年ペットと暮らしてきた入居者の方にとって、ペットと離ればなれになることはQOL(生活の質)の低下につながります。
飼い主の高齢化が進み、ペットと同居可能な介護施設の需要は今後も増えていくことが予想されています。
日本では少子高齢化が社会問題となっており、高齢者の割合が年々増加しています。そんな中、認知症の高齢者を専門にケアする施設も増えてきました。その施設の一つが「グループホーム」です。今回の記事では、「家族が認知症になって自宅で介護を続[…]
ペットが入居者にもたらす影響
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動物を通じて、患者の方の心身機能へのアプローチをすることをアニマルセラピーと呼びます。
アニマルセラピーの種類は以下の3つです。
- 動物介在療法(AAT…AnimalAssistedTherapy)
- 動物介在活動(AAA…AnimalAssistedActivity)
- 動物介在教育(AAE…AnimalAssistedEducation)
アニマルセラピーは日本独自の造語であり、海外では上記の名称をそのまま使う呼び方が一般的です。
介護施設や障害者施設、小学校などの場所で行われます。
介護施設でのアニマルセラピー(動物介在療法)についてご紹介します。
動物を介在させる効果としては、
- 社会性の改善
- ストレスの軽減
- コミュニケーションの促進
などがあるとされています。
では、アニマルセラピーにおける実際の効果やデメリットなどについて、具体的に解説していきます。
アニマルセラピーの効果
アニマルセラピーによる医療面の効果として、以下の2つが挙げられます。
- 精神疾患の改善
- 認知症の改善
詳しく解説していきます。
【精神疾患の改善】
アニマルセラピーは、うつ病や統合失調症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療の効果として、
- 笑顔が増える
- 活動量が増える
- 治療への積極性が高まる
などが挙げられています。
ただし、癒す効果は認められているものの、科学的根拠の実証はされていません。
今後検証していく必要があります。
【認知症の改善】
認知症患者の方がアニマルセラピーによって、
- 会話の増加
- 日常生活への自立度向上
- 表情が柔らかくなる
などの効果がみられたとの調査結果もあります。
社会的刺激が少ない介護施設において、アニマルセラピーは自己表現の大きなきっかけとなることが分かりました。
アニマルセラピーのデメリット
続いて、アニマルセラピーをするにあたっての注意点は以下の通りです。
- ケガをする危険がある
- 感染症のリスクがある
- 動物側のストレス
順番に解説します。
【怪我をする危険がある】
噛みつきや引っかきにより、怪我をする場合があります。
例えば犬の場合、日本セラピードッグ協会という民間団体の訓練が必要です。
試験を受け、合格した犬だけが介護施設などに出向いて活動できます。
ただ、いくら人に慣れているとはいえ元々は野生の動物です。
入居者の方の予期せぬ行動に驚いて、とっさに歯を当ててしまう可能性もゼロではありません。
事故が起きないよう、注意深く見守る必要があります。
【感染症のリスクがある】
例として、傷がある場所を犬が舐めた際、動物の口内から傷を介して感染症が広がる可能性があります。
加齢や病気により、免疫力が低下している方もいるため注意しましょう。
また、動物アレルギーを持つ方や、動物が嫌いといった方への配慮も重要です。
【動物側のストレス】
人間側だけでなく、動物たちのストレスにも適切に対応することが大切です。
動物側のストレスになりうる内容は以下の通りです。
- 長時間の活動・抱っこのし過ぎ(身体的拘束)
- ごはんやおやつの与えすぎ
- 散歩(気分転換)の時間を取らない
動物たちの気持ちとしっかり向き合い、お互いにとって心地よい時間を過ごせるようにしましょう。
高齢者の感染症について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
アニマルセラピーに適した動物
ペットとして飼われている動物は数多くいますが、そのなかでアニマルセラピーに向いている動物は、犬と猫といわれています。
そのなかでも、人に懐きやすく穏やかな性格の子が望ましいといえます。
犬と猫それぞれの特徴を解説します。
【犬】
古くから人間のパートナーとして生活してきた犬はしつけもしやすく、親しみやすい動物です。
犬の世話を、就労支援の一環として位置づけている施設もあります。
表情が豊かで、言葉を話せずとも人間に寄り添う姿勢は、アニマルセラピーにおいて重要です。
【猫】
犬に続いて、猫もアニマルセラピーに適した動物です。
猫をなでている時に、オキシトシンと呼ばれるホルモンが人間の体内で分泌されます。
別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、犬よりも猫を触った時のほうが多量に分泌されるホルモンです。
オキシトシンは免疫機能の向上やストレス緩和など、様々な効果があります。
膝の上に乗せやすいサイズということも適している理由の1つです。
アニマルセラピーに適していない動物
続いて、アニマルセラピーに適さない動物として
- 小動物
- 爬虫類
が挙げられます。
小動物・爬虫類がなぜアニマルセラピーに適さないのか、理由を解説します。
【小動物】
アメリカの団体が作った基準では、うさぎやモルモットはアニマルセラピーに適しているとされています。
ただ、危険を感じるとその場で固まるという習性を持つのが小動物です。
臆病で人間に慣れていない子は、恐怖のあまり噛みつくといった行動もみられます。
そのため、アニマルセラピーとして用いるには注意が必要です。
また、フェレットなど活発でよく動き回る品種も難しいといえるでしょう。
【爬虫類】
しつけが難しいという理由で、爬虫類もアニマルセラピーには適さないとされています。
カメやイグアナ、ヘビなどの爬虫類は苦手な方も多いかもしれません。
アニマルセラピーは大多数の方の癒しの提供やストレスの緩和を目的としています。
よって爬虫類は、アニマルセラピーにはあまり向いていないといえます。
ストレスと認知症の関係について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
高齢化が進む日本において、年々増加している認知症。種類によっては、症状や原因は大きく異なります。私たちにとって身近なストレスも原因になり得ることを知っていますか?本記事では、ストレスと認知症の関係について以下の点[…]
アニマルセラピーは本当に効果があるの?
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2006年、当時の日本動物病院福祉協会会長を務めていた水谷渉氏によるアニマルセラピーの効果検証のデータがあります。
データによると、動物が同じ空間にいる時といない時では、入居者の笑顔や会話数に変化が認められることが分かりました。
- 期間…2006年10月~2007年1月
- 対象施設…7か所
- 動物とのふれあい回数…16回
- 人数…のべ109人の高齢者(女性80人・男性29人)
- 方法…ビデオ撮影による観察
詳しい検証結果は以下の通りです。
(単位:回)
動作 | 動物がいる | 動物がいない |
笑顔 | 4.45 | 0.88 |
アイコンタクト | 2.86 | 0.31 |
頷く | 2.5 | 1.31 |
動物に触る | 3.73 | 0.25 |
長い会話 | 0.32 | 0.13 |
短い会話 | 4.18 | 2.00 |
出典:【高齢者福祉施設等で実施される「アニマルセラピーについての効果」の検証事業】
動物の有無による変化が大きかった動作の割合は、
- 笑顔の回数は4倍以上
- 短い会話は2倍以上
となっています。
アニマルセラピーの効果を顕著に表しているデータといえます。
また、介護施設職員(合計299人)に対するアンケート結果は以下の通りです。
(強く同意する・やや同意する の項目の合計)
- 自分やほかのスタッフとの会話が増えたと感じる…72%
- ご家族との会話が増えたと感じる…44%
- 入居者(利用者)の方同士の会話が増えたと感じる…56%
- 日常生活において笑顔が増えたと感じる…58% など
アニマルセラピーは、入居者の方だけでなく職員にも有意義と感じる活動であることが分かりました。
今後、ますますアニマルセラピーを実施する施設が増えていくことが期待されます。
介護施設のペットまとめ
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ここまで、介護施設のペット事情についてお伝えしてきました。
- 介護施設によってはペットを飼うことが可能
- アニマルセラピーのメリットは、社会性の改善やストレス緩和など
- アニマルセラピーのデメリットは、ケガ・感染症の危険性など
- アニマルセラピーに適した動物は、犬と猫
これらの情報が皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。