介護が必要になった際に、まず頭に浮かぶことに介護保険があると思います。
介護保険には、申請や受けるための条件があります。
では、介護保険の対象者や申請方法はどのように行えば良いのでしょうか?
本記事では、介護保険の申請方法や申請の流れについて以下の点を中心に解説します。
- 介護保険の概要と申請の対象者について
- 介護保険の申請場所と準備するもの
- 介護保険を申請した後の流れ
- 申請後に不服があった場合の対処法
ご家族の介護保険の申請についてだけでなく、自分の将来への不安を解消するためにも参考にしていただけますと幸いです。
是非最後までお読みください。
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介護保険とは
介護保険とは、
- 介護者の負担を軽減すること
- 介護を社会全体で支えること
を目的に、2000 年に創設された制度です。
厚生労働省によると、介護を理由として仕事を離職する方は毎年約10 万人いるといわれています。
介護離職者をなくすために、
- 介護保険によって必要な介護サービスの確保を図る
- 働く環境の改善
- 家族への支援
が行われています。
出典:厚生労働省【介護保険制度について】
介護保険について詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
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介護保険の申請できる人
介護保険を申請できる人は、年齢や要介護などの状態によって異なります。
- 対象者
- 受給者
について、それぞれ解説していきます。
対象者
40歳以上65 歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者は第2号被保険者の対象となります。
また、65 歳以上の方は第1号被保険者の対象となります。
受給要件
受給要件を、
- 40歳から64歳の方
- 65歳以上の方
で、それぞれ見ていきましょう。
40歳から64歳の方
受給要件は、加齢に起因する特定疾病を原因として、要介護認定または要支援認定を受けた場合です。
【特定疾病】
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群等)
- 多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群等)
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
第2号被保険者は40 歳になれば自動的に資格を取得し、65 歳になるときに自動的に第1号被保険者に切り替わる仕組みです。
65歳以上の方
受給要件は、疾病など原因を問わず、要介護認定または要支援認定を受けた場合です。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護保険の申請方法
では、介護保険の申請方法について、
- 申請する場所
- 申請に必要なもの
の順に解説していきます。
申請する場所
要介護認定や、要支援認定を希望する人が住む市区町村の窓口で申請します。
窓口の名称などは、各市区町村で異なります。
事前にウェブサイトなどで調べておくと良いでしょう。
申請に必要なもの
申請に必要なものは、以下の4つです。
- 要介護(要支援)認定申請書
- 介護保険被保険者証
- マイナンバー
- 身分証明書
それぞれ解説します。
要介護(要支援)認定申請書
要介護(要支援)認定の申請時に提出します。
申請書は、市区町村の窓口で入手可能です。
または、インターネットからダウンロードできる場合もあります。
事前に自宅などで記入しておくことが可能なので、利用すると便利でしょう。
介護保険被保険者証
介護保険被保険者証とは、65歳を迎える前に市区町村から送られる証書のことです。
40歳〜65歳未満の方(第2号被保険者)が申請する場合は、代わりに健康保険証を用意しましょう。
マイナンバー
マイナンバーの個人番号が分かるマイナンバーカードやマイナンバー通知書が必要です。
身分証明書
運転免許証など顔写真付きの身分証明書を持参します。
顔写真付きのマイナンバーカードがあれば、利用すると便利でしょう。
介護保険申請の流れ
介護保険の申請の流れは以下の通りです。
- 必要書類の提出
- 訪問調査の日程調整
- 訪問調査
- 一次判定
- 二次判定
- 要介護認定の通知
それぞれ詳しく解説します。
必要書類の提出
必要書類をそろえて、市区町村の窓口へ提出します。
書類が受理された後、介護保険被保険者証の代わりに、介護保険資格者証を交付してもらえます。
なお、申請はご本人が行うことが基本ですが、ご家族や居宅介護支援事業者が代行して行うことも可能です。
訪問調査の日程調整
要介護認定、要支援認定を受けるための調査には訪問調査があります。
都合の良い日程に調整しましょう。
訪問調査
市区町村の職員や、市区町村から委託されたケアマネージャーなどが自宅を訪問します。
そして、
- ご本人の身体状況
- 普段の生活
- ご家族やご自宅の環境
などの聞き取りをします。
調査時は、ご家族も同席します。
認定調査員に正確な情報を伝えることで、適切な認定を受けられるからです。
調査の内容は、全国共通で74項目の基本調査と特記事項からなります。
以下に、調査の内容をご紹介します。
身体機能・起居動作に関する項目(四肢の筋力低下、寝返り等についての項目)
普段の生活の基本的動作に課題があるかどうかが問われます。
また身体に麻痺はあるか、関節の動きは正常かなど13項目があります。
生活機能に関する項目(移乗・移動、えん下ができるかどうかの項目)
衣類の着脱、外出の頻度、排泄、食事などの動作が行えているかを確かめます。
認知機能に関する項目(意思の伝達や短期記憶等についての項目)
「昨日何を食べたか」「今日は何日か」などの短期記憶の有無。
「生年月日」「自分の名前」「今いる場所」を言えるかといった意思伝達能力の有無が問われます。
精神・行動障害に関する項目(作り話やひどい物忘れなど問題行動についての項目)
過去1カ月間に、突然大声をあげる、泣く笑うなど感情が不安定でなかったか、問われます。
社会生活への適応に関する項目(薬の内服や買物についての項目)
薬の内服、金銭管理ができるか、集団に適応する能力があるかなど、社会生活を適切に送る能力があるか問われます。
特別な医療に関する項目(点滴、または人工透析等についての項目)
点滴、人工透析などの特別な医療を必要としているかなど、医療への依存度が問われます。
一次判定
訪問調査などの結果をコンピューターに入力し、「要介護認定等基準時間」を算出します。
要介護認定等基準時間とは、介護の手間がどの程度かかるかを統計的に予測したものです。
要介護基準時間と、要介護度については以下の通りです。
要介護度 | 要介護認定等基準時間 |
非該当 | 25分未満 |
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2/要介護1 | 32分以上50分未満(要支援2とは心身状態の様子で分けられる) |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
出典:令和3年度 兵庫県認定調査員研修「要介護認定の概要について」
また、一次判定時に申請した市区町村などの依頼で、かかりつけ医に主治医意見書が作成されます。
万が一かかりつけ医がいない場合は、指定された医療機関への受診が必要になります。
二次判定
二次判定では、保健、医療、福祉の専門家による5名ほどの介護認定審査会によってさらに判定が行われます。
要介護認定の通知
介護認定審査会の審査結果に基づき、申請から30日以内に
- 認定証
- 介護保険被保険者証
が郵送で届きます。
地域によっては、申請から判定まで1〜2ヶ月程かかることもあります。
介護保険の申請でのポイント
介護保険の申請では、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 自分が要介護者に該当するのか事前に確認する
- 認定結果に不服があるときの対処法を知っておく
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
自分が要介護者に該当するのか事前に確認する
身体機能や、生活機能などをご家族とよく確かめましょう。
自分が要介護者に該当しているのか確かめておく必要があります。
申請時の流れは全国共通です。
調査項目や判定方法を、インターネットなどを利用して調べておくと良いでしょう。
認定結果に不服があるときの対処
届いた認定結果に不満がある場合は、
- 介護保険審査会に申し立てをする
- 要介護レベルの変更を申請する
ことができます。
それぞれ、解説していきます。
介護保険審査会に申し立て
認定結果に納得がいかない場合、まずは市区町村に相談しましょう。
それでも納得できないときは、都道府県に設置されている介護保険審査会に不服を申し立てることが可能です。
ただし、申し立てできる期間が定められているので注意しましょう。
申し立てできる期間は、通知を受け取った翌日から60日以内となっています。
要介護レベルの変更申請をする
要介護認定の申請は、いつでも行えます。
本人の心身の状態が変わった際は、再度市区町村の窓口で申請します。
これを要介護認定の「区分変更申請」といいます。
また、要介護の認定結果には有効期間があります。
新規の場合は6か月、更新の場合は12か月有効です。
介護認定は自動的に更新されるものではありません。
有効期間が過ぎると認定の効力がなくなるので注意しましょう。
介護保険の認定者数は増加傾向?
厚生労働省による、「要介護認定の申請件数」の報告は以下の通りです。
認定者数 | 607.7万人 |
認定率 | 17.9% |
新規申請件数 | 186.7万件 |
更新申請件数 | 340.7万件 |
区分変更申請件数 | 41.6万件 |
【介護保険総合データベースへの報告より 平成28年5月15日時点】
要介護(要支援)の申請を受けている方は年々増加傾向にあります。
介護保険認定者数は、平成12年4月では約218万であったのに対し、平成27年4月には約608万人にものぼっています。
15年間で約2.79倍になっています。
以上の結果に加え、要介護認定の新規申請者数も多いことから、今後も介護保険の認定を必要とする方が増えていくといえます。
出典:厚生労働省【要介護認定の仕組みと手順】
介護保険の申請のまとめ
ここまで介護保険の申請についてお伝えしてきました。
介護保険の申請の要点をまとめると以下の通りです。
- 介護保険とは、介護者の負担を軽減し、社会全体で支えることを目的とした制度である
- 受給対象は、65歳以上の要介護(要支援)認定を受けている、もしくは40歳から64歳で特定疾病のため要介護(要支援)認定を受けている方
- 介護保険の申請は、要介護(要支援)認定申請書、介護保険被保険者証、マイナンバー、身分証明書を持参し居住地の市区町村窓口で行う
- 介護保険申請後は、訪問調査、一次判定、二次判定がある
- 申請後に不服があった場合、介護保険審査会に不服の申し立てができる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。