少子高齢化が進み、老人ホームの需要は増え続けています。
老人ホーム入居に伴う金銭面の負担は、誰もが直面し得る問題です。
老人ホームにはどのような契約方法があるのでしょうか?
また料金システムの種類には何があるのでしょうか?
本記事では利用権方式について以下の点を中心にお伝えします。
- 老人ホーム入居契約形態の種類
- 利用権方式老人ホームの種類の紹介
- 老人ホームの料金システムの仕組み
- 入居時に支払った前払金が返金可能になる事例
利用権方式について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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利用権方式とは?
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利用権方式とは、老人ホームに入居するにあたっての契約形態の1つです。
居室や共用設備、介護サービスや生活支援にかかる料金をひとまとめにパックされた方式のことをいいます。
有料老人ホームのうち、ほとんどが利用権方式を採用しています。
利用権方式は入居者の方と施設の間で結ぶ終身契約です。
したがって、入居者の方が亡くなるまで設備や介護サービスの利用が可能になります。
入居者の方が亡くなった場合、その時点で契約は消滅します。
そのため、家族が権利を相続することはできません。
賃貸借方式との違い
賃貸借方式とは、借地借家法に基づいて整備されている施設での契約方式です。
利用権方式との違いは、契約が終身ではないことが挙げられます。
賃貸借方式は以下の2種類に分かれています。
- 建物賃貸借方式
- 終身建物賃貸借方式
それぞれについて詳しく解説します。
建物賃貸借方式
建物賃貸借方式は、賃貸物件などで生活する権利を得る方式です。
毎月、家賃相当の金額を支払う必要があります。
建物賃貸借方式の主な特徴は以下のとおりです。
- 居住部分のみの契約のため、介護サービスなどの料金が含まれていない
- 介護サービスや生活支援を受ける場合は別途契約が必要
- 借地借家法の適用により入居者の権利が守られる(契約者が亡くなっても継続して住み続けられる)
- 通常の賃貸住宅と同様に、更新料や更新手続きが必要となる場合がある
自立した生活ができ、介護が必要ない方におすすめの契約形態です。
終身建物賃貸借方式
終身建物賃貸借方式は、都道府県から認可を得た施設のみが利用できる特別な賃貸借方式です。
「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて整備されました。
事業者が都道府県から認可を受けるためには、
- 終身建物賃貸借を実施しているか
- 床面積の基準を満たしているか
- バリアフリーになっているか
などの規定があります。
終身建物賃貸方式の主な特徴は以下のとおりです。
- 利用可能年齢は60歳以上(夫婦入居の場合、どちらかが60歳以下でも可能)
- 入居期間は終身
- 相続権は発生しない(亡くなった場合、権利消失)
- 契約者死亡の場合でも、配偶者が1か月以内に申し出れば継続居住可能
- 更新料不要
建物自体の要件は、段差のない床や浴室等の手すりの有無、幅の広い廊下などです。
有料老人ホームでの終身建物賃貸借方式契約は少数派です。
しかし、生涯同じ家に住み続けられるという意味では不安が少ない契約方法といえます。
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利用権方式老人ホームの種類
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利用権方式が採用されている有料老人ホームは以下の3種類です。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
例外的に、利用権方式の契約が不可能な施設もあります。
予期せぬハプニングが起きないよう、事前に確認することが重要です。
また、有料老人ホームの入居条件のポイントは
- 要介護度
- 入居時の年齢
- 必要な医療ケア
- 保証人・身元引受人の有無
- 収入(資産を含む)
となり、程度により入居可能な施設が異なります。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、「特定施設入所者生活介護」の指定を受けた介護施設の名称です。
介護や生活支援を受けながら生活できる施設のことをいいます。
施設の運営には、介護保険で定められている基準を満たす必要があります。
入居条件として、
- 介護保険のサービスを受けられる65歳以上の方
- 要介護者であること
などが挙げられます。
特別養護老人ホーム(特養)や、介護老人保健施設(老健)に比べて費用は割高な傾向にあります。
しかし、その分充実したサービスが受けられるのも、介護付き有料老人ホームの特徴です。
提供可能なサービスは、
- 排泄や入浴などの身体介護
- 洗濯・清掃などの生活支援
- レクリエーション・リハビリ・サークル活動
- 食事サービス
などです。
介護するスタッフの違いによって、
- 施設の職員が介護する「一般型」
- 外部の介護事業者が行う「外部サービス利用型」
という2種類の呼び方があります。
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住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立した生活が可能な65歳以下の方も入居できる高齢者施設です。
要介護の方に限らず、食事・洗濯・清掃などの生活支援を受けながら生活ができます。
住宅型有料老人ホームのスタッフがサービスを提供することはありません。
したがって、入居者の方が要介護になった場合は外部事業者との契約が必要です。
そのため、訪問介護事業所や居宅介護支援事業所の併設された施設も多く見られます。
介護付き有料老人ホームが介護サービスが充実しているのに対し、住宅型はレクリエーションやイベントが充実しています。
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健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、身の回りのことを自分で行える方が入居可能な有料老人ホームです。
健康維持を目的として、スポーツジムや温泉がついた施設もあります。
要介護になった場合は原則的に契約解除の上、退去する必要があります。
しかし隣接した介護施設がある場合は、施設を移動して再入居することも可能です。
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利用権方式老人ホームの料金システム
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利用権方式老人ホームの料金システムは施設ごとに異なります。
そのため、入居を予定している施設へ事前に確認する必要があります。
料金システムの基本的な構成は
入居費用(家賃に該当)+月額利用料(食費・おむつ代などの生活費に該当)
となります。
入居費用部分の支払い方法は以下の3種類です。
- 前払い式
- 月払い式
- 入居一時金式
それぞれの特徴と、メリット・デメリットを合わせて解説します。
前払い式
前払い式は、入居の際に費用を一括支払いする方法です。
前払い式の料金算出方法は以下の方法で行います。
- 1か月にかかる費用(家賃・食費・管理費・介護費など)の月々の合計金額を確認する
- 1か月の費用と、想定入居期間分によって算出された年数を使って金額を確定
- 2で算出された金額を一括で支払う
想定入居期間は、平均寿命から割り出します。
入居後は、施設が定めた方法や年数で償却(月々の支払金額として施設側が回収)されます。
メリット
前払い式は、想定していた入居期間を超えた場合でも追加料金は発生しません。
つまり、長生きすればするほどお得に介護サービスを受けることが可能です。
また、継続的な支払いがないため、経済的見通しが立てやすくなります。
デメリット
入居中の老人ホームの料金が何らかの理由で下がった場合でも、差額返金されることはありません。
月払い式
月払い式は、一般的な家賃支払いのように、1か月にかかる費用を毎月支払う方法です。
メリット
何らかの理由で入居中の老人ホームの料金が下がった場合、支払い金額も下がります。
また、入居希望である介護施設の待機期間などの短期間利用に適しています。
デメリット
前払い式に比べて、月々の支払い額が割高に設定されています。
そのため長く利用するほど支払う料金が多くなります。
したがって最終的にかかる費用が不透明で経済的な見通しが立ちにくいという特徴があります。
入居一時金式
入居一時金式は、一部前払い式とも呼ばれる支払い方法です。
終身にわたって支払う予定の家賃の一部(例:30%など)を前払いします。
入居後に、残額を月払いとして支払う必要があります。
メリット
通常の前払い式と異なり、入居一時金式には返還金制度があります。
そのため償却期間が終わる前に退去することで、返還金を受け取ることが可能です。
入居一時金で支払った金額のうち、未償却分が返金対象となります。
デメリット
月払い式同様、前払い式に比べて月々の支払い額が割高に設定されています。
各支払い方法はそれぞれメリット・デメリットがあります。
家庭の経済状況に合った支払い方法を選びましょう。
前払金の保全措置について
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「改正老人福祉法」は、事業者に対して保全措置を義務付けたものです。
2018年4月に施行されました。
保全措置は入居一時金などの前払金一括受領に対してや前払い式の料金システムでも適用されます。
そのため、一定条件を満たせば返金されるようになりました。
一定条件の主な内容は以下のとおりです。
- 入居施設の倒産などにより、全入居者が退去・契約解除を余儀なくされた場合
- 契約後90日以内に契約解除した場合(クーリングオフ)
- 想定入居期間内に契約解除した場合
施設によっては高額な入居一時金が必要です。
前払金の保全措置は、入居者の方やご家族の金銭的負担や不安軽減のためといえます。
有料老人ホームに入居する場合は、額面上の金額や施設の設備だけでなく、
- 保全措置がされている施設か
- 保全措置が正常に機能しているか
- 親会社の経営状況・連帯保証先の銀行の把握
なども合わせてチェックした上で、入居者に合った施設を選ぶことが重要です。
出典:厚生労働省「 介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて」
利用権方式老人ホームのまとめ
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ここまで利用権方式の老人ホームについてお伝えしてきました。
利用権方式についての要点をまとめると以下のとおりです。
- 老人ホーム入居契約形態は、利用権方式と賃貸借方式がある
- 利用権方式老人ホームは、介護付き・住宅型・健康型の3種類がある
- 料金システムは、前払い式・月払い式・入居一時金式がある
- 入居施設の倒産や入居期間により、前払金が返金される場合がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。