成年後見制度というものをご存じでしょうか。
社会的弱者を守るための制度ですが、いろいろなトラブルもあるようです。
成年後見制度の実態を踏まえ、トラブルに遭わないための対策が必要です。
本記事では成年後見制度のトラブルについて以下の点を中心にご紹介します。
- 成年後見制度の目的とは
- 成年後見制度の種類は
- 成年後見制度のトラブルを回避するためには
成年後見制度のトラブルについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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成年後見制度とは
私たちは、ルールに則って社会生活を送っています。
そこには、法律行為が伴い、判断能力が必要とされています。
しかし、社会には判断能力を失ってしまった人たちがいます。
たとえば、認知症、知的障害、精神障害を抱えている人たちです。
このままでは、こうした人々が有効な法律行為ができないことになってしまいます。
法律行為とは、普段の買い物、病院の受診といった日常行為も含まれます。
法律行為ができないだけではありません。
判断能力がないことにつけ込まれ、財産を奪われたり、現金を着服されることもあります。
このような被害に遭わないためにも、成年後見制度は必要です。
後見人の果たす役割は、本人に代わって法律行為を行い、財産を適切に管理することです。
最近は独居老人も多く、身近に成年後見人を申し立てる親族がいない方もいます。
このような場合には「市町村長申立権」という制度があります。
成年後見制度の利用が必要にもかかわらず、申し立てが困難な場合に適用されます。
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成年後見制度は2種類の制度を合わせたもの
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人の判断能力があるうちに、任意後見契約を結ぶ制度です。
公正証書で後見人契約を結びます。
任意後見人を監督する「任意後見監督人」が選出された時点で、任意後見が始まります。
任意後見制度では、条件として契約時点で判断能力があることが求められます。
認知症の進行で判断能力がなくなってしまった場合は、法定後見制度しか選べません。
法定後見制度
法定後見制度とは、すでに判断能力が低下した人を守る制度です。
認知症が進んでしまった場合など、詐欺の被害を受けやすくなります。
また、預貯金や財産を守ることもできなくなります。
そのような状況下に置かれた人を法的に保護するのが法定後見制度です。
法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」と3つの制度があります。
本人の判断能力を総合的に検討し、家庭裁判所が決定します。
法定後見制度を利用するためには、家庭裁判所に「後見人等の選任申立」を行います。
申立によって、家庭裁判所が後見人等を選出し、法定後見が開始されます。
原則、この後見は本人が死亡するまで続きます。
2種類の後見制度の違い
法定後見制度と任意後見制度との大きな違いは、本人の判断能力の差です。
法定後見制度は、本人の判断能力が低下してから、親族が家庭裁判所に申し立てます。
一方、任意後見制度は、将来的に本人の判断能力が低下したときに準備する制度です。
本人の財産を管理するため、本人の選んだ後見人と契約を結びます。
つまり、法定後見制度は、判断能力が低下してからでなければ利用できません。
任意後見制度は、将来を見据え、あらかじめ誰を後見人にするか決める制度です。
そのため、判断能力が低下してからでは利用できません。
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成年後見制度のトラブル実例5選
成年後見制度は、弱い立場の人たちを守るための制度です。
しかし、成年後見人によってはトラブルも発生しています
成年後見制度によるトラブルの実例を紹介しましょう。
施設に入所中の親と面会できなくなった
普段通り、母親の入所している施設に訪問。
しかし施設側から「面会できません」と言われてしまったというケースです。
これは、家族の内のひとりが周囲に内緒で、法定後見人を申請したために起こりました。
法定後見人によって施設側に「面会を拒否するように」との要請があったためです。
背景には、法定後見制度を申請する際、家族の同意がなくても申請できてしまうことがあります。
財産や遺産などで家族間でもめ事がある場合など、こうしたトラブルが起こります。
認知症の親の財産が使い込まれた
任意後見制度の場合、親族が後見人になるケースが多くなります。
後見人としての十分な知識やモラルの欠如など、トラブルも多くなります。
とくに認知症の場合、後見人によって財産が使いこまれるというトラブルは途絶えません。
親族として一緒に同居している場合など、自分のお金と親のお金を混同してしまいます。
ほかの親族からの指摘を受けても、その事実を隠そうとしてトラブルが大きくなります。
生活費が減って苦しい
2人暮らしをしている高齢のご夫婦のケースです。
ご主人が認知症になったため、家庭裁判所に自分が法定後見人になると立候補しました。
親兄弟、子供もいませんでしたから当然、自分が後見人になるものと信じていました。
ところが、審査結果は全く知らない弁護士だったのです。
ご主人名義の預貯金は、すべて後見人の弁護士に渡さなければなりません。
夫の年金から生活費を捻出していたため、生活費が全く入らなくなってしまいました。
このようなトラブルを成年後見人である弁護士に相談しました。
しかし、回答は「後見人として、ご主人の財産を減らすことはできない」でした。
年金をすべて取り上げられてしまったため、生活費が減って苦しい家計となりました。
後見人の仕事が怠慢になっている
後見人の仕事は、預貯金の管理や不動産の管理などさまざまな仕事があります。
ところが、これらの仕事をせずに、手数料だけを搾取しようとする法定後見人がいます。
たとえば、住んでいた家屋などの不動産の手入れを怠っているケースです。
空き家の施設管理の経費は毎月引き落とされているのに、全く管理されている様子がない。
このように、後見人の怠慢によるトラブルが多く発生しています。
証拠をつかむのも簡単ではないため、トラブル解決には時間がかかることも多くあります。
孫の教育資金に回せなくなった
「孫の大学入学費用は全額出す」と言っていた父親が認知症になったケースです。
法定後見人にそのことを伝えると、あっさりと却下されてしまいました。
「本人のお金は、本人のために使うもの。お孫さんのためには使うことができない」と。
結局、孫の教育資金には回せなくなったというトラブルです。
成年後見制度のトラブルを回避する方法3選
成年後見制度のトラブルを回避するためには、いくつかの方法があります。
最も重要なことは、本人の判断能力があるうちに先手を打つことです。
しかし家族にとって最も望ましいのは、後見人なしで協議できる信頼関係を築くことです。
家族信託を利用する
家族信託を利用するメリットは、認知症を発症したときに財産凍結を回避できることです。
親が認知症などで判断能力がなくなると、所有する財産は凍結されてしまいます。
治療・入院で必要な費用を捻出することもできなくなります。
そのような深刻な問題を解決するのが家族信託です。
家族信託は、親から子供に財産の管理権限を移行することです。
子供が親のために財産を自由に運営できるようにできるので、凍結問題もなくなります。
任意後見制度を利用する
任意後見人になることによって、被後見人の生活サポートができるようになります。
介護サービスの利用に関する契約や介護認定の申請、福祉施設への入居などができます。
家族信託だけでなく、任意後見制度を利用することでトラブルを避けることができます。
日常生活自立支援事業を利用する
日常生活自立支援事業は、福祉協議会によって運営されています。
福祉サービスの支援、金銭管理、重要書類の管理、見守りなどを行っています。
ただし、判断能力が全くない状態では、利用できない可能性があります。
出典:厚生労働省【成年後見制度とは(ご本人・家族・地域のみなさまへ) 】
成年後見制度でトラブルにあったときの解決方法
成年後見制度でトラブルがあった場合、解任請求できるケースがあります。
- 不正行為があった
- 道徳的観点から著しい行動違反があった
- そのほか、後見人の任務に適さないことがあった
実際に解任するか否かは家庭裁判所の判断にゆだねられます。
場合によっては解任申請が却下されることもあります。
そのため解任申請を行うときには、確たる証拠を集めておくといいでしょう。
また、成年後見人がお金を使いこんでしまったというトラブルも多くあります。
使い込んだお金を弁償させるためには、損害賠償請求などの訴訟を起こすことも可能です。
成年後見人とトラブルになったときはどうする?
成年後見人とのトラブルは意外と多く、頭を抱えている方もいます。
では、成年後見人とトラブルになったときはどう対処したらよいのでしょう。
成年後見人とは
成年後見人制度において、支援する人を「成年後見人」といいます。
成年後見人は被後見人に対して、その財産や安全を守る義務があります。
成年後見人に必要な資格
成年後見人になるために必要な資格はありません。
専門職に限らず、親族、配偶者など4親等までの親族、あるいは友人・知人でもなれます。
ただし、以下のような人は後見人の資格がないと定められています。
- 未成年者
- 過去に法定代理人等を家庭裁判所によって解任された人
- 破産した人
- 被後見人に対して過去に訴訟をした人、あるいはその配偶者や直系血族
- 行方不明者
成年後見人の選任方法
成年後見人の選任方法は、「成年後見人等候補者」を記載して申立を行います。
申立をした本人を候補者としたり、別の人を候補者にすることもできます。
家庭裁判所では、さまざまなことを考慮して、候補者の中から適任者を選びます。
そのため、候補者として指定されていても、適任でないと判断することもあります。
その場合、候補者以外の後見人を選任することもあります。
成年後見人の辞任方法・解任方法
成年後見人は、基本的に被後見人が亡くなるまで、その責務を全うしなければなりません。
しかし、途中で辞任、あるいは解任といったこともあります。
まず、辞任に関しては、成年後見人の年齢や体調、遠隔地への転勤などが考えられます。
このような正当な理由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができます。
解任は、ただ気に入らないというだけではできません。
後見人に不正行為や後見人としての責務を履行していない場合などは解任できます。
とくに多いケースが後見人による財産流用です。
その場合は、親族あるいは検察官の請求によって家庭裁判所が解任することになります。
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成年後見制度のトラブルまとめ
ここでは、成年後見制度のトラブルについて紹介してきました。
成年後見制度の要点を以下にまとめます。
- 成年後見制度の目的は、判断能力のない人の生活・財産を守ること
- 成年後見制度の種類には「任意後見制度」「法定後見制度」がある
- 成年後見制度のトラブルを回避するには「家族信託」「任意後見制度」を利用する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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