介護の仕事をする上で、ADLの知識は重要になります。
これから介護の仕事を目指している方や、介護の仕事を始めたばかりの方は是非知っておきましょう。
本記事では、介護とadlを中心に以下の点をご紹介します。
- 介護におけるADLとは?
- ADLやIADLの評価方法には何がある?
- ADL低下の原因と予防には何がある?
- ADLとQOLは密接な関係にある
- リハビリテーションに適したサービスは何がある?
ここでの記事の内容が介護とADLについて学ぶ、良い機会になるとうれしいです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
介護におけるADLとは?
参考:https://kango.medi-care.co.jp/blog/60
参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html
ここでは介護におけるADLと、関連している項目について説明します。
ADLの定義
ADLとは(Activities of Daily Living)の略であり「日常生活動作」です。
日常にはベッドから起き上がる、歩いて移動する、トイレに行く、洋服を着替える、食事をとる、出かける、お風呂に入る、ベッドで寝る、という動作があります。
これら日常的な動作のことをADLと言います。
ADLの意義
高齢者を介護する際に、どこまで自立しているのか、どこまで介助が必要なのかが重要になります。
自立して生活できることは高齢者のよろこびや、やりがい、新しい目標につながります。
ADLが高ければ社会的にも精神的にも健康で過ごすことができます。
介助者も高齢者のよろこびや新しい目標をもってもらうことで、自分自身の介護にやりがいを感じることができます。
ADLには種類がある?
BADL
BADLとは(Basic Activity of Daily Living)の略で「基本的日常生活動作」です。
歩いての移動や食事、着替え、トイレ、入浴などの身体動作を言います。
車椅子の方であれば、ベッドやトイレに移る移乗動作も含まれます。
IADL
IADLとは(Instrumental Activities of Daily Living)の略で「手段的日常生活動作」です。
交通機関を利用する、電話を使う、服薬管理、金銭管理など普段生活する上で複雑な判断を求められる動作を言います。
スポンサーリンク
ADLやIADLの評価方法には何がある?
ADLやIADLの評価方法について解説します。
その前に、FMLについてご説明します。
FMI
FMIとは(Functional Independence Measure)の略で「機能的自立度評価法」です。
評価方法は高齢者の運動項目と認知項目で評価をします。それぞれ解説していきます。
運動項目
運動項目は13個あり、大きく分けてセルフケア、排泄コントロール、移乗、移動という4種類に分類されます。
・セルフケアの項目は、食事、整容、清拭、上半身の更衣、下半身の更衣、トイレ動作の6つです。
・排泄コントロールの項目は、排尿管理、排便管理の2つです。
・移乗の項目は、ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗の3つです。
・移動の項目は、歩行・車椅子での移動、階段での移動の2つです。
認知項目
認知項目は5りあり、大きく分けてコミュニケーション、社会的認知という2種類に分類されます。
・コミュニケーションの項目は、理解、表出の2つです。
・社会的認知の項目は、社会的交流、問題解決、記憶の3つです。
以上2つが認知項目となります。
評価基準は運動項目と認知項目の計18項目にそれぞれ1点から7点で採点し、合計126点満点で評価をします。
目的は、高齢者の介助量の多さや自立度からadlを理解する事です。
点数評価なので分かり易く、どれぐらい介護が必要かを本人や家族、他職員との共有がしやすいです。
参考:鳥取市立病院「頚椎症の症状に関する 腕と手指の リハビリテーションについて」
バーゼル・インデックス
バーセルインデックスとはADLの評価方法です。評価方法は食事、移乗、整容、トイレ、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排便、排尿の10項目を自立か、一部介助か、介助が必要かを判断します。
評価基準は、
・移乗、歩行、をそれぞれ15点満点。
・食事、トイレ、階段昇降、着替え、排便、排尿をそれぞれ10点満点。
・整容、入浴をそれぞれ5点満点。
以上の方法で採点し、100点満点で評価します。
目的は、高齢者が出来るADLを理解する事です。
100点満点評価なので分かり易く、どれぐらい介護が必要か、本人や家族、他職員との共有がしやすくなります。
参考:https://rehab.cloud/mag/2224/
カッツ・インデックス
カッツ・インデックスとはADLの評価方法です。
評価方法は入浴、更衣、トイレの使用、移乗、排尿・排便、食事の6項目を自立しているか、介助が必要かで判断します。
評価基準は6項目を合計してAからGまでの7段階で評価します。
・すべて自立していればA。
・どれか1つを除いて自立ならB。
・入浴および1つを除いて自立ならC。
・入浴、更衣、および1つを除いて自立ならD。
・入浴、更衣、トイレ、および1つを除いて自立ならE。
・入浴、更衣、トイレ、移乗、および1つを除いて自立ならF。
・6つすべて介助が必要ならばG。
・2つ以上の項目で介助が必要ですが、C、D、E、Fには含まれないものを、その他。
以上の方法で分類します。
実際に出来る場合でも日常的にやっていない場合は、出来ていないと判断します。
目的は、高齢者の出来るADLを理解する事です。
自立度が高い順にA、B、C、D、E、Fで評価されるためどれぐらいの介護が必要か分かり易いです。
参考:https://rehab-idea.com/katzindex/
ダスク21
ダスク21とは認知機能とadlを結びつけた評価方法です。
評価方法はA、B項目の2問と、21項目の質問によって判断します。
いずれも認知機能や生活機能を主軸にした質問です。
それぞれの質問に4段階で答えます。例えば、質問に対して、
・「感じない」ならば、1点。
・「少し感じる」ならば、2点。
・「感じる」ならば、3点。
・「とても感じる」ならば、4点。
という方法で採点します。
評価基準は質問内容を4段階で評価し、合計点が31点以上でさらにそれぞれの項目の条件を当てはめて評価します。
目的はIADLと、認知症の症状が軽度、中程度、重度か理解する事です。
簡単で本人をよく知る人であれば、短時間で評価することができます。
ロートンの尺度
ロートン尺度とはIADLを評価方法です。
評価方法は男女で少し異なります。
・男性の場合、交通機関を利用する、電話を使う、服薬管理、金銭管理、買い物の、5項目で評価します。
・女性は上記5項目の他に、食事の準備、掃除などの家事、洗濯の、3項目を評価します。
評価基準はそれぞれの項目がどの程度出来るか、全く出来ないかで判断し、男性は5点満点、女性は8点満点で評価します。
目的は日常生活におけるIADLを理解する事です。
それぞれが自立出来ているか、または他人に依存しているかで判断をします。
adlが低下する前にIADLが低下すると考えられているため、要介護状態になる恐れがあるか判断できます。
参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html
老研式活動能力指標
老研式活動能力指標とはIADLを評価する方法です。
評価方法は下記設問に「はい」か「いいえ」で答えてもらいます。
・一人で交通機関を利用することが出来るか。
・日用品の買い物が出来ますか。
・自分の食事の用意が出来ますか。
・請求書の支払いが出来ますか。
・銀行預金や郵便貯金などの金銭管理が出来ますか。
・年金などの書類が書けますか。
・新聞を読んでいますか。
・本や雑誌を読んでいますか。
・健康について関心がありますか。
・友達の家を訪ねることはありますか。
・家族や友達の相談にのる事がありますか。
・病人の見舞いに行くことは出来ますか。
・若い人に自分から話しかけることはありますか。
以上、13項目で評価します。
評価基準は13項目をはいを1点、いいえを0点で判断します。これらの合計点数で評価します。
目的はIADLを理解する事です。
社会的な繋がりがあるかどうか、または社会に対する興味があるかどうかを判断することができます。。
参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html
日本では少子高齢化が社会問題となっており、高齢者の割合が年々増加しています。そんな中、認知症の高齢者を専門にケアする施設も増えてきました。その施設の一つが「グループホーム」です。今回の記事では、「家族が認知症になって自宅で介護を続[…]
ADL低下の原因とその予防方法
ADLが低下してしまう原因とその予防策について解説します。
身体機能の低下
社会との繋がりの減少が、身体機能が低下する原因です。
身体活動量が減ることで食事量が低下してしまい、食事量の低下は体力の低下につながり、体力の低下も身体機能の低下につながります。
予防策
生活の中で少しでも動く時間を増やすことで、身体機能の低下を予防できます。
社会とのつながりを持つことで、家から外に出て活動をします。
また、バランスのとれた食事をとることも重要です。
認知機能の低下
個人差はありますが加齢によるものが多いです。
アルツハイマー病などの神経変性疾患、脳梗塞などの脳の病気、クロイツフェルト・ヤコブ病などの感染症が原因の場合があります。
抗不安薬などの薬によって認知機能が低下する場合もあります。
予防策
確実に予防する方法はありませんが、ウォーキングなどの有酸素運動が良いと言われています。
ポリフェノールやEPA・DHCの摂取など食事の面でも効果があります。
参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/ninchi-rouka.html
精神的原因
やりがいや生きがいが無くなってしまうと、精神的な理由から活動量が低下しADLが低下します。
さらに、引きこもりや寝たきりになってしまうことで活動量が減ってしまうと、身体機能が低下してしまいます。
予防策
やりがいや生きがいを見つける事が予防となります。
社会との繋がりを保ち、やりがいや生きがいを見つけましょう。
社会環境的原因
参加できる範囲に社会的交流の場が無いと、無気力になり、ADLが低下してしまう場合があります。
引っ越しなど大きな環境の変化があると、いままで慣れていた環境から慣れない環境になるため、社会的な役割が得にくくなります。
予防策
大きな環境の変化を避ける、または家事や近隣の掃除などの社会的な役割を得ることで、活動量を増やしてADLの低下を予防することができます。
参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/adl.html
ADLとQOLは密接な関係にある
QOLとは「生活の質」です。
ADLを高めることはQOLの向上につながります。
自立でできることが多くなれば,目標や生きがいが生まれます。
目標や生きがいができれば,高齢者の人生が明るいものになります。
adlの改善のために
ADLを改善する方法として、介護サービスを利用し、リハビリを行うことができます。
介護サービスを使うことで、理学療法士と作業療法士が行うリハビリを受けることができます。
理学療法士は立ち上がる、起き上がる、歩く、寝返りをうつ、など日常的な基本動作のリハビリを行います。
作業療法士は食事をする、料理をする、顔を洗う、など生活をするうえで必要な動作のリハビリを行います。
利用者ができていることを維持して、できないことをできるようにすることが目的です。
高齢者を介護しすぎてしまうとADLが低下してしまいます。
介護をしすぎてしまうと、普段できていた行動をやらなくなり、その結果、出来なくなってしまいます。
高齢者にとってできないところは介助をし、できるところは自立してもらうのが良いのです。
参考:https://www.nitiriha.com/job-introduction/different/
リハビリテーションに適したサービスは何がある?
どんなサービスがあるの? – 通所リハビリテーション(デイケア) | 公表されている介護サービスについて | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
デイサービスのリハビリ内容、リハビリを受けられる介護サービスを解説 |ミンナノミライ (unimat-rc.co.jp)
参考:https://www.minnanokaigo.com/guide/type/care-insurance-facility/rouken/
ADLの低下予防には、リハビリテーションで運動機能や認知機能向上が重要です。
リハビリを受けることができる各サービスについて解説していきます。
デイケアでは、日常生活で必要な運動機能と認知機能のリハビリを日帰りで受けることができます。
全員で行うレクリエーションやラジオ体操、食事などがあります。
個別では歩行訓練や階段昇降運動などの機能訓練などがあります。
介護老人保険施設では、入居者が在宅復帰を目標にリハビリをします。
デイケアと比べると専門のリハビリスタッフや福祉器具が充実しています。
入居中は週に2回のペースでリハビリを受けることができます。
希望をすれば週に3回のペースで受けることもできます。
介護とADLのまとめ
ここまで介護とADLを中心に書いてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- ADLとは日常生活動作のこと。
- 評価方法は6種類。
- 社会との繋がりや役割がADLやIADL低下の予防になる。
- 自立した生活は生活の質に直結する。
- ADL改善のために介護サービスを受ける方法もある。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。