訪問介護は介護サービスの中でも専門性・柔軟性が高いサービスです。
そのため、従事する職員(ヘルパー)にも高度なスキル・資格が求められます。
では、訪問介護ではどのような仕事内容を担当するのでしょうか。
また、利用者側はどのような点に留意して訪問介護を利用すべきでしょうか。
本記事では、訪問介護について、以下の点を中心にご紹介します。
- 訪問介護の仕事内容
- 訪問介護で働くメリット・デメリット
- 訪問介護を利用するメリット・デメリット
訪問介護について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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訪問介護とは
訪問介護とは、訪問介護員が利用者の自宅を訪問して行う介護サービスです。
訪問介護員は「ホームヘルパー」「ヘルパー」とも呼ばれています。
訪問介護の主な内容は、次の通りです。
- 身体介護
- 生活援助
- 通院介助
出典:厚生労働省【訪問介護・訪問入浴介護】
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訪問介護の仕事内容
訪問介護の仕事内容を詳しくみていきます。
ぜひ参考にしてください。
仕事をする場所
訪問介護員の仕事場は、基本的に利用者の居宅です。
たとえば利用者の自宅のほか、介護施設の居室を訪問することもあります。
なお、訪問介護員は、在籍する訪問介護事業所から各利用者の居宅に向かいます。
業務終了時も事業所に足を運び、報告書などを提出して退勤…という流れが一般的です。
決められた時間内に介護サービスを行う
訪問介護サービスの提供時間は午前8時~午後6時が一般的です。
ただし、営業時間は事業所によって異なります。
各ヘルパーはサービス提供時間内において、利用者と契約した時間に居宅を訪問し、介護サービスを提供します。
たとえばAさんと「午前8時~8時半の間で朝食の介助」の契約をしたとしましょう。
ヘルパーは、当該時間にAさんの居宅を訪問してサービスを提供することになります。
医療行為と家事代行は行わない
訪問介護では次の2つは行えません。
- 医療行為
- 介護サービスを超えた家事代行
具体的な例は次の通りです。
【訪問介護の対象外】
例 | |
医療行為 | インスリン注射・一包化されていない薬の内服介助・床ずれの治療・摘便や浣腸・経管栄養・痰吸引 |
介護サービスを超えた家事代行 | 草むしり・ペットの世話・来客の応対・金銭管理・利用者の家族の食事作りや部屋の清掃 |
1件あたりの時間
1件あたりの提供時間は1時間~1時間半ほどです。
ただし具体的な時間は、提供サービスの内容・1日の担当件数・利用者の状態などに左右されます。
一般的には、要介護度が重い方ほど1件あたりの提供時間は長くなります。
反対に要介護度が軽い方であれば、1件あたり20分未満で終わることもあります。
一般的なサービス提供時間の例は次の通りです。
サービスの内容 | 時間 | 単位 |
身体介護のみの場合 | 20分以上30分未満 | 身体1 |
30分以上60分未満 | 身体2 | |
1時間以上1時間30分未満 | 身体3 | |
1時間30分以上2時間未満 | 身体4 | |
2時間以上2時間30分未満 | 身体5 | |
生活援助だけの場合 | 20分未満 | 生活1 |
20分以上45分未満 | 生活2 | |
45分以上 | 生活3 | |
身体介護と生活援助の組み合わせ | 50分 (30分+20分) | 身体1生活1 |
1時間15分(30分+45 分) | 身体1生活2 | |
1時間30分(30分+60分) | 身体1生活3 | |
1時間20分(60分+20分) | 身体2生活1 | |
1時間45分(60分+45分) | 身体2生活2 | |
1時間50分(90分+20分) | 身体3生活1 | |
2 時間 15 分(90分+45分) | 身体3生活2 |
1日の訪問件数
1日訪問件数は、ヘルパーのスキル・身分などによって異なります。
常勤職員の場合は、1日3~6件が平均的です。
一方、非常勤職員の場合は1日1~3件程度の場合もあります。
訪問介護の対象者やサービス内容
訪問介護の対象者・提供サービスの内容をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
対象者
訪問介護の利用対象者は、原則として65歳以上の方です。
かつ、次の認定を受けた方のみ利用できます。
要介護
要介護認定は1~5段階であらわされます。
要介護認定の対象者は、主に自力での日常生活が困難な方です。
要支援
要支援は1~2段階であらわされます。
主な対象者は、自力での生活は可能なものの、誰かの見守りが必要な方です。
受けられる頻度
訪問介護は1日に複数回利用できます。
具体的な頻度は、事業所・利用者の状態によって異なります。
1日に2回以上訪問介護を利用する場合、サービスとサービスの間は2時間以上開けなければなりません。
2時間の間隔が取れない場合、2つのサービスは1回として合算されます。
すると1回あたりの利用単位が変わるため、利用者の方の料金負担が大きくなることがあります。
受けられるサービス
訪問介護のサービス内容は次の3つです。
調理・掃除・洗濯・衣類の整理等の生活援助
生活援助は、利用者の方の日常生活をサポートするサービスです。
具体的な例は次の通りです。
- 食事作り・配膳
- 掃除
- 洗濯
- ゴミ出し
- バイタル測定(体温・血圧)
- 爪切り
- 日用品や食料の買い出し
食事介助・入浴介助・排泄介助等の身体介助
身体介助は、利用者の方の身体に直接触れて行うサービスです。
具体的な例は次の通りです。
- 食事
- 着替え・身だしなみ
- 排泄
- 入浴・清拭
- 歩行・移乗の介助
- 見守り
通院時の乗車・降車の介助
訪問介護には通院の介助も含まれます。
具体的な内容は次の通りです。
- 声かけ・説明
- 居宅における目的地(病院等)に行くための準備
- 居宅から乗降場までの移動
- 交通機関への乗降
- 移送中の気分の確認
- 受診等の手続き
出典:厚生労働省【老計第10号 訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について】
受けられないサービス
訪問介護では、医療行為・日常生活の範囲を超える援助はできません。
代表的な例は次の通りです。
- 利用者の家族の食事作り
- 利用者の居室以外の掃除
- ペットの世話
- 子供の世話
- 草むしり
- 金銭管理
訪問介護の仕事のメリット・デメリット
訪問介護に従事する場合のメリット・デメリットをご紹介します。
訪問介護事業への就職・転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
メリット
訪問介護の仕事のメリットをご紹介します。
人間関係のストレスが少ない
訪問介護は、ほかの介護職に比べると、上司・同僚との人間関係のストレスが少なめです。
ヘルパーは基本的に1人で利用者宅を訪問するためです。
介護施設のように大勢の同僚に囲まれることは、ほとんどありません。
そのため同僚との人付き合いが苦手な方にも勤めやすい仕事の1つです。
しかし、もちろん利用者の方とは良好な人間関係を築かなければ仕事になりません。
時間の融通が利く
ヘルパーは時間の融通が利きやすいのがメリットです。
特に非常勤・登録ヘルパーは、自分の希望指定時間内で働けることが多いです。
たとえば育児と仕事を両立させたい場合、平日の昼間に短時間のみ…という働き方も可能です。
スキルアップを目指せる
訪問介護では大きなスキルアップを目指せます。
ヘルパーは、幅広いシチュエーションに対応しなければならないためです。
たとえば介護施設の場合は、一定の環境・ある程度似た状態の利用者の方に接することがほとんどです。
一方、ヘルパーの仕事現場は一軒家・集合住宅・介護施設の居室などさまざまです。
利用者の方も、ある程度自立している方から寝たきりの方までいらっしゃいます。
そのため訪問介護では、現場・利用者にあわせて常に臨機応変な対応を求められます。
介護の実践的なスキルを積むには適した仕事です。
丁寧な介護サービスを目指せる
訪問介護は、丁寧で質の高い介護を提供しやすいのが特徴です。
ヘルパーは基本的に1対1で利用者の方と向きあうためです。
契約した時間内は、同僚のサポート・ほかの利用者のケアを考える必要はありません。
いま目の前にいる利用者の方のケアに専念できるため、納得のいく介護サービスを提供しやすいのです。
デメリット
訪問介護の仕事にはデメリットもあります。
代表的なデメリットをご紹介します。
介護の知識や技術が偏ってしまう
訪問介護では、介護の知識・スキルが偏ることがあります。
訪問介護の仕事は基本的に1人で行うためです。
他のヘルパーの働きぶりなどをみる機会が少ないため、学びの場も少なくなる傾向があります。
特に似たような環境・状態の利用者の方ばかりを担当している場合は、知識が偏りやすくなります。
ほかの職員に相談しづらくなる
訪問介護では、悩み・不安・疑問があっても同僚に相談しづらいことがあります。
訪問介護の仕事は1人で行うため、同僚同士で現場の雰囲気を共有できないためです。
移動がともなう
訪問介護では利用者の居宅を移動しなければなりません。
1日の担当件数が多いほど移動距離・頻度も大きくなります。
特に天候が悪い日などは、移動が苦痛になることもあります。
移動が多いほど、交通事故のリスクが高くなる点にも留意しましょう。
アクシデントに1人で対応しなければならない
訪問介護では、基本的にミス・アクシデントにも1人で対応します。
たとえば利用者の介護拒否などが起こった場合でも、同僚のフォローは期待できません。
もちろん度を越している場合は、上司や同僚に相談してかまいません。
正規職員と非正規職員のメリット・デメリット
ヘルパーの働き方には、正規職員(常勤)と非正規職員(非常勤・登録)があります。
それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
それぞれの働き方のメリットは次の通りです。
【正規職員の場合】
- 収入が安定しやすい
- キャリアアップが目指しやすい
- 福利厚生が期待できる
- チームワークを形成しやすい
正規職員の最も大きなメリットは安定した収入・福利厚生です。
1つの職場に長く在籍するため、他スタッフとチームワークを作りやすい点もメリットです。
【非正規職員の場合】
- 勤務時間の融通が利きやすい
- 人間関係に縛られにくい
- Wワークがしやすい
- 直行直帰できることもある
非正規職員のメリットは、自分のスケジュールにあわせて働きやすい点です。
正社員ほど同僚同士の結びつきがないため、人間関係に煩わされにくいという魅力もあります。
デメリット
それぞれのデメリットは次の通りです。
【正規職員の場合】
- 人間関係が複雑化しやすい
- ほかのヘルパーのフォローに回らなくてはならない
- 責任が重い
正規職員のデメリットは主に人づきあいによって発生します。
同じ顔触れと長期間付きあうため、人間関係が複雑化しやすいのです。
ほかのヘルパーが急に休んだ際、フォローに入らなくてはならないこともあります。
【非正規職員の場合】
- 収入が安定しない
- ボーナス・福利厚生がない
- 利用者宅に移動する際の交通費が自己負担
非正規職員のデメリットは、主に収入・待遇面にあります。
なお、ボーナス・福利厚生・交通費の処遇は各事業所によって異なります。
訪問介護のサービスを受けるまでの流れ
訪問介護サービスを利用する際の流れをご紹介します。
訪問介護の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
出典:厚生労働省【サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」】
要介護認定の申請
訪問介護を利用するには、まず要介護認定を受けなければなりません。
要介護認定を受けるには、各自治体の窓口に申請を出しましょう。
申請は原則として本人が行います。
本人の申請が難しい場合は、家族・代理者でもかまいません。
なお、申請時には介護保険被保険者証の提出が求められます。
申請後の一般的な流れは次の通りです。
- 担当者による家族・本人へのヒアリング(認定調査)
- 主治医意見書の作成・提出(自治体の依頼による)
- 認定調査結果・主治医意見書に基づく一次判定(コンピュータ)
- 一次判定結果や主治医意見書に基づく二次判定(介護認定審査会)
申請の仕方などに不安がある場合は、専門家に相談するのも1つの方法です。
たとえば地域の介護事業所のケアマネージャー・地域包括支援センターに相談しましょう。
介護認定の通知
介護認定されると、自治体より介護認定通知が届きます。
介護認定は、要支援1~2または要介護1~5であらわされます。
介護認定が行われるまでの期間は、原則として申請から30日以内です。
介護支援専門員の決定
要介護認定後は、ケアプランを作成する介護支援専門員を決めなければなりません。
介護支援専門員はケアマネージャーとも呼ばれています。
ケアマネージャーの選任は、地域包括支援センターまたは地域の訪問介護事業所に依頼しましょう。
ケアプランの作成
ケアマネージャーが決定したら、ケアプランの作成を依頼しましょう。
ケアプランとは介護サービス計画書のことです。
ケアプラン作成の際は、ケアマネージャーによる家族・本人へのヒアリングが行われます。
ケアマネージャーはヒアリング結果をもとに、利用者の方に適したケアプランを作成します。
今後の訪問介護は、ケアプランに沿って行っていきます。
なお、ケアプランは、利用者の変化にあわせて定期的な見直し・変更が必要です。
事業所の選定と契約
ケアプランが決まったら、実際に利用する訪問介護事業所の選定に入ります。
選定後は、該当の訪問介護事業所と直接契約を結びます。
訪問介護事業所を選ぶときは、信頼できるかどうかを見極めましょう。
訪問介護事業所の選び方については後述します。
訪問介護サービスの利用開始
いよいよ訪問介護サービスを実際に利用していきます。
具体的な訪問時間・サービス内容は、契約内容によって異なります。
訪問介護の事業所や介護ステーションとは?
訪問介護を行うのは、訪問介護事業所または訪問介護ステーションです。
訪問介護ステーションはヘルパーステーションと呼ばれることもあります。
訪問介護事業所と訪問介護ステーションは同一と考えてかまいません。
ここからは、訪問介護事業所などで働く場合の仕事内容・必要な資格をご紹介します。
仕事内容
両者の仕事内容は次の通りです。
介護業務
訪問介護事業所での主な仕事内容は、ヘルパーとしての介護業務です。
介護業務には次が含まれます。
- 身体介護:入浴・排泄・食事・身だしなみなど
- 生活援助:食事作り・清掃・ゴミ出し・バイタル測定など
- 通院介助:通院時の送迎・乗降のサポート
事務業務
訪問介護事業所では、事務員として働くこともあります。
主な仕事内容は次の通りです。
- 介護記録の作成
- 介護報酬・月次請求業務
- 実績記録の作成
- 備品の管理
- 人材の管理
他職種との連携
訪問介護事業は、さまざまな他職種と連携して成り立ちます。
そのため訪問介護事業所で働く場合は、ほかの職種の方との交流・連携も含まれます。
代表的な他職種は次の通りです。
- ヘルパー
- ケアマネジャー
- 介護福祉士
- サービス提供責任者
- 主治医
- 自治体の福祉担当者
家族対応
訪問介護事業では、利用者の家族の方とも密接に関わることが一般的です。
そのため訪問介護事業所の職員は、利用者の家族への対応も行います。
代表的な仕事内容は次の通りです。
- ケアプランの説明
- 介護サービスの希望などのヒアリング
- クレーム対応
- 日々のコミュニケーション
利用者の家族の方自身が、高齢・要介護認定者の場合もあります。
接するときは、分かりやすく丁寧な説明や対応が求められます。
開設するために必要なこと
訪問介護事業所・訪問介護ステーションを開設するには、法人登記が必要です。
代表的な法人格の種類は次の通りです。
- 株式会社
- 合同会社
- NPO法人
- 一般社団法人等
配置人材などは法人格の種類によって異なるため、事前調査はしっかり行いましょう。
開設にあたっては、開設場所の確保・融資相談も念頭に入れなければなりません。
働く際に必要とされる資格
訪問介護事業所で働く場合は、介護関連の資格の取得が推奨されています。
ヘルパーには専門性の高い介護知識・スキルが求められるためです。
特に身体介護に従事する場合は、次のような資格が必要になります。
- 介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)
- 介護福祉士実務者研修(旧ヘルパー1級)
- 介護福祉士
- 看護師・准看護師
訪問介護の事業所の選び方
訪問介護事業所を選ぶときは、信頼できる事業所を探すことが大切です。
訪問介護とは自宅にヘルパーを招き入れる=日常生活に他人が入り込む形態であるためです。
適切なサービスが実行されているか
適切なサービスの実行は、訪問介護事業所を選ぶ際の大切なポイントです。
適切なサービスとは、簡単にいえば、利用者の認知力・身体状況にあったサービスかどうかです。
サービスの提供の仕方は利用者の性格にも左右されます。
たとえば静かな環境を好む利用者に対しては、大きな声での話しかけなどは控えなければなりません。
利用者の方が心地よいと感じられるサービスを提供できているかどうか、慎重に見極めましょう。
サービスの内容と費用について明確な説明があるか
サービスの内容と費用について、分かりやすい説明をする事業所を選びましょう。
訪問介護サービスの内容は細分化されており、費用もそれぞれ異なるためです。
たとえば「食事」を依頼したとしましょう。
食事といっても「食事作り」は生活援助に該当し、「食事の介助」は身体介護になります。
つまり利用者が依頼した内容と実際に提供されるサービスに差が生じる可能性が高いのです。
また、生活援助と身体介護では単位が異なるため、費用にも差が出ます。
悪徳業者の場合は、サービス内容や費用の説明をあいまいにして、差額で儲けようとすることもあります。
契約後の想定外の事態を避けるためにも、事前にサービス内容・費用をしっかり説明する事業所を選ぶことが大切です。
もし明確な説明・回答をしない場合は、別の事業所を検討しましょう。
複数の事業所を比較する
事業所はできれば複数比較するのがおすすめです。
それぞれ得意とする介護・サービスの傾向などが異なるためです。
複数を比較検討することで、より利用者の方に適した事業所を選びやすくなります。
ヘルパーとの相性をしっかりと見てくれるか
訪問介護を利用する際は、利用者・家族とヘルパーの相性も大切です。
相性がよくないヘルパーの場合は、すぐに変更してくれる事業所を選びましょう。
なお、ヘルパーを変更するには、代替のヘルパーがいることが前提になります。
人員が少ない事業所の場合、変更したくても人材不足でできない可能性もあります。
そのため事業所を選ぶときは、ある程度人材に余裕があるところを選ぶのもよい方法です。
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訪問介護の料金
訪問介護の料金は利用サービス・介護保険の自己負担割合によって異なります。
今回は自己負担割合1割の料金の例をご紹介します。
具体的な料金体系は自治体・事業所によって異なるため、事前に必ず確認してください。
出典:厚生労働省【介護報酬の算定構造】
要支援者への訪問介護の料金
要支援者が訪問介護を利用する場合、サービス内容は介護予防訪問介護となります。
介護予防訪問介護の料金は、要介護者の訪問介護とは異なります。
平均的な利用料金をご紹介します。
利用対象者 | 利用頻度 | 1ヶ月利用料/円(1割負担) | |
介護予防訪問介護 Ⅰ | 要支援1・要支援2 | 週1回程度 | 1,200 |
介護予防訪問介護 Ⅱ | 要支援1・要支援2 | 週2回程度 | 2,300 |
介護予防訪問介護 Ⅲ | 要支援2 | 週2回程度 | 3,700 |
身体介護
身体介護の一般的な利用料金は次の通りです。
単位 | 料金/円 | 利用者負担額/円(1割) | |
20分未満 | 167 | 1,670 | 167 |
20分以上30分未満 | 250 | 2,500 | 250 |
30分以上1時間未満 | 396 | 3,960 | 396 |
1時間以上 | 579(30分追加ごとに+84) | 5,790~ | 579(30分追加ごとに+84) |
生活援助
生活援助の一般的な利用料金は次の通りです。
単位 | 料金/円 | 利用者負担額/円(1割) | |
20分以上45分未満 | 183 | 1,830 | 183 |
45分以上 | 225 | 2,250 | 225 |
通院時の乗車・降車介助
通院介助の一般的な利用料金は次の通りです。
単位 | 料金/円 | 利用者負担額/円(1割) | |
1回につき | 99 | 990 | 99 |
加算
訪問介護の費用には、加算がつくこともあります。
加算とは、いわゆる別途料金・オプションのようなものです。
代表的な加算の種類と目安は次の通りです。
- 初回加算:200単位
- 緊急時訪問介護加算:100単位
- 特定事業所加算:総単位数の3〜20%
- 生活機能向上連携加算:100~200単位
利用時間に応じて料金が割り増しになる点にも留意してください。
早朝 | 午前6時~午前8時 | 25%割増 |
夜間 | 午後6時~午後10時 | 25%割増 |
深夜 | 午後10時~午前6時 | 50%割増 |
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訪問介護を受ける際のメリット・デメリット
訪問介護を利用するメリット・デメリットをご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
メリット
訪問介護を利用するメリットは次の通りです。
住み慣れた住宅で受けられる
訪問介護は、自宅・自室で介護サービスを利用できる点が大きなメリットです。
介護施設への入居のように、転居の必要がありません。
特に高齢の方・認知症の方は、環境の変化への適応が難しい場合があります。
そのため、転居・介護施設への入居自体がストレスになることも多いです。
一方、訪問介護では住み慣れた環境での生活を続けられるため、利用者の精神的な負担を軽減できます。
サービスの柔軟性が高い
訪問介護は、ほかの介護サービスに比べてサービスの柔軟性が高い点もメリットです。
主な理由は2つあります。
1つ目は、契約時間内では、基本的にヘルパーと利用者が1対1で接するためです。
たとえば介護施設では、ヘルパーは同時に複数の利用者のケアに当たらなければなりません。
そのため、1人あたりに対するケアにはどうしても限界があります。
一方、訪問介護では、ヘルパーは利用者1人のケアに専念できます。
そのぶん柔軟で質の高い介護が期待できます。
2つ目は、必要な介護サービスを自由に組み合わせられるためです。
たとえば食料の買い出しはヘルパーに頼み、料理は利用者が自力で行う…などの利用法があります。
必要・不要なサービスを取捨選択できるため、利用者の自立心・自尊心を育てられます。
また、サービスの取捨選択は利用料金を抑える面でもメリットがあります。
デメリット
訪問介護にはデメリットも存在します。
代表的なデメリットは次の通りです。
家に他人を入れる拒否反応が出ることもある
訪問介護とは、日常の場にヘルパー(他人)が踏み込んでくる形になります。
利用者によっては、自宅に他人を招き入れたり、他人に世話をされたりすることに拒否反応を示すこともあります。
場合によっては家を介護できるようにリフォームが必要になる
自宅環境が訪問介護に対応していない場合、リフォームが必要になることもあります。
たとえば手すりの設置・段差やお風呂のバリアフリー化が代表的です。
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訪問介護以外の在宅介護やその他のサービス
在宅介護サービスにはさまざまな種類があります。
ここからは、訪問介護以外の在宅介護サービスについてご紹介します。
訪問入浴介助
訪問入浴介護では、利用者の自宅で入浴をサポートします。
訪問介護にも入浴の介護はありますが、訪問入浴介護とはサービス内容が異なります。
訪問介護における入浴の介護では、基本的に利用者宅のお風呂・浴槽を利用します。
対して訪問入浴介護では、ヘルパーが持参した専用の浴槽・湯沸し器などを利用します。
自宅のお風呂場が入浴介護に適していない場合に利用されることが一般的です。
あるいは通所介護を利用しているものの、通所先での入浴が困難な場合に利用されるケースもあります。
訪問看護
訪問看護は、医療従事者が利用者宅を訪問してケアを行います。
ケアの内容は医師の指示に基づきます。
訪問介護との違いは、医療行為を行える点です。
訪問介護では、軽微な傷の治療・点眼・爪切りなどを除いて医療行為はできません。
対して訪問看護では、医療行為が行えます。
代表的なのはインスリン注射・痰吸引・経管栄養です。
訪問リハビリテーション
リハビリの専門職が利用者宅を訪問してリハビリを実施します。
専門職とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などです。
リハビリの内容は医師の指示に基づきます。
代表的なリハビリは、歩行訓練・失語症の方への訓練・離床訓練などです。
なお、リハビリは医療行為にあたるため、訪問介護では行えません。
居宅療養管理指導
医療関連の専門職が利用者宅を訪問して、医療サービスを提供します。
専門職とは、たとえば医師・歯科医師・薬剤師・栄養士などです。
具体的なサービス内容は、口腔ケア・病気の予防や診断・合併症の早期発見などです。
風邪・下痢といった軽症の治療・医療管理も含まれます。
なお、訪問介護では、医療管理などの医療行為は認められていません。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護とは、訪問介護の夜バージョンのようなものです。
サービスの提供時間は原則午後10時~午前6時が一般的です。
事業所によっては、午後8時前後からサービスを提供する場合もあります。
夜間対応型訪問介護には次の2種類があります。
- 定期巡回:決まった時間にヘルパーが訪問する
- 随時訪問:緊急時に通報するとヘルパーが訪問する
オペレーションサービス:利用者の体調不良などの通報を受け付ける
利用者には、通報用のケアコールが貸与されます。
夜間対応型訪問介護は、訪問介護との併用も可能です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
訪問介護と訪問看護が合体したようなサービスです。
ヘルパーまたは看護師が24時間体制で定期的に利用者宅を訪問します。
緊急時の通報にも対応しています。
訪問介護の地域密着型サービスとは?
訪問介護の中には、地域密着型サービスと呼ばれるものがあります。
代表的な地域密着型サービスの訪問介護は次の通りです。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
地域密着型サービスの目的は、利用者の方の在宅生活のサポートです。
たとえ要介護度や認知症が進行しても、住み慣れた環境で暮らし続けられるよう支援します。
従来の訪問介護と地域密着型サービスでは、利用条件が若干異なります。
従来の訪問介護 | 地域密着型サービス | |
年齢 | 65歳以上 | 65歳以上 |
要支援者の利用 | 〇 | × |
要介護者の利用 | 〇 | 〇 |
利用できる事業所 | 原則自由 | 同市町村内の事業所 |
出典:厚生労働省【1.地域密着型サービスについて 中重度の要介護者や認知症となっても無理なく在宅生活】
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訪問介護のよくある質問
訪問介護でよくある質問をQ&A方式でまとめました。
訪問介護の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
利用者の家庭以外にも訪問することがありますか?
ヘルパーが利用者の家庭以外に訪問することもあります。
たとえば利用者が介護施設・高齢者向け住宅などに入居している場合は、利用者の居室を訪問します。
事業所によっては、サービスの提供先が、契約した介護施設・高齢者向け住宅に限定されていることもあります。
利用者の家族の調理等は行ってくれますか?
ヘルパーは、利用者の家族のケアはしません。
たとえば高齢夫婦の2人暮らしであっても、食事作りを行うのは契約者の分のみです。
もしご夫婦などで訪問介護を利用する場合は、1人ずつ事業所と契約を結ばなければなりません。
医療費控除は利用できますか?
訪問介護の利用料金のうち、自己負担額は医療費控除の対象となります。
利用料金が自己負担となるのは、介護保険の規定以上のサービスを利用するときです。
1か月あたりの訪問介護の支給限度は、要介護度に応じて異なります。
介護保険で定められた範囲を超えてサービスを利用する場合、超過分の利用料金は自己負担になります。
出典:国税庁【訪問介護の居宅サービス費|国税庁】
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訪問介護のまとめ
ここまで、訪問介護についてお伝えしてきました。
訪問介護の要点を以下にまとめます。
- 訪問介護の仕事内容は、身体介護・日常生活援助・通院介助
- 訪問介護で働くメリットは、時間の融通が利きやすい点で、デメリットは収入が安定しにくい点
- 訪問介護を利用するメリットは、住み慣れた環境で自由度の高い生活を続けられる点で、デメリットは他人を自宅に招き入れる点
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。