介護施設やデイサービスのレクリエーションで「何をするか」迷った経験はありませんか?
実は近年、「ホワイトボード」を使った脳トレが注目されています。
「準備が簡単」で「高齢者に分かり易く見やすい」など多くのメリットがあります。
本記事ではホワイトボードを使用した高齢者向けの脳トレについて以下の点を中心にご紹介します。
- 高齢者の脳トレとは
- ホワイトボードを使った脳トレのメリットとは
- ホワイトボードを使った脳トレの注意点
「ホワイトボードを使った脳トレ」について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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高齢者の脳トレとは
脳トレとは「記憶力」や「思考力」そして「認知能力」など脳機能を鍛えていくトレーニングのことです。
たとえばオセロや囲碁、将棋などのボードゲームは思考力や集中力が鍛えられます。
クイズ形式のパズルや塗り絵なども「脳トレ」として多く取り上げられています。
高齢化社会が進む日本では「認知症」の発症率も増加傾向にあります。
認知症の手前の段階で、以下の「3つの脳機能」が低下するといわれています。
- エピソード記憶(これまで経験した出来事と、その時の場所や感情の記憶のこと)
- 注意力(料理を何品か同時に作るときや複数の人との会話など、2つ以上のことに対して注意を配る機能のこと)
- 計画力(段取りを考えて効率よく動けるようにすること)
認知症の予防として「生活習慣の改善」のほかに注目されているのが「脳のトレーニング」です。
脳トレを行うことで脳機能を維持し、認知症の予防になると考えられているからです。
近年では脳機能の活性化のため「脳トレ」を行う介護施設やデイサービスなどが増えています。
レクリエーションの一環として高齢者の「脳機能」を刺激し、維持向上させるためです。
また他者とのコミュニケーションが生まれ気分転換になるなど、多くのメリットがあります。
介護施設などの場で、高齢者向けの「脳トレ」を行う場合のポイントとして、
- みんなが答えられそうな簡単な問題から出していく
- ヒントは少しずつ出していく
- 答えが複数ある問題であれば、あれこれ考えて盛り上げる
- 一人一人に問いかけて、みんなが答えられる環境にする
- 難しすぎる問題はストレスや苦痛を与えかねない
など、以上の点を考慮して行うことが大切です。
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ホワイトボードを使った脳トレ10選
「ホワイトボード」は会社や学校などで連絡用の掲示板として使用されています。
何度も繰り返し書いて消せるため、多くの問題を出す「脳トレ」にも最適な道具とされています。
また文字を大きく書けるため、集団のレクリエーションに適しています。
声で伝えるよりも、書いた内容を見て理解することができるので参加者に伝わりやすいことも利点といえます。
ではホワイトボードを使った「脳トレ」にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここではおすすめの「脳トレ10選」をご紹介します。
気軽に始められ、準備にも手間がかからないホワイトボードを上手に活用しましょう。
漢字分解クイズ
漢字をバラバラにして出題し「この漢字はなにか?」を当てる脳トレです。
初めは簡単なものから、徐々に難しい漢字を出していくのもいいでしょう。
たとえば「保」という漢字であれば「イ」と「口」、「木」を1つずつ書いていきます。
ゆっくり小出しで書いていくと盛り上がるでしょう。
答えが分かった場合は、進行者にそっと答えを伝えるようにします。
そうすることでより多くの参加者が答えることができます。
漢字の穴埋め
ホワイトボードに虫食いの2字熟語を書きます。
▢には同じ漢字を当てはめ、それぞれ2字熟語を完成させます。
【例題】
Q1 ①笑▢ ②童▢ ③▢料 ④▢色 答え:顔
Q2 ①特▢ ②個▢ ③▢腹 ④▢居 答え:別
上記のクイズは「十字」になるように書くと見やすいです。
極端に難しいものよりも、分かりやすい熟語の方が参加者の意欲がわいて楽しめます。
福笑い
お正月に家族が集まって楽しむ「福笑い」をホワイトボードでも行うことができます。
目隠しをするのは介護スタッフで、磁石が付いた目や鼻などをホワイトボードに貼っていきます。
このとき参加者が目や口の場所を「声に出して」伝えます。
「右、右!」や「もっと下!!」など参加者全員で声を出し合い、顔を完成させます。
目隠しをしている介護スタッフが、あえて違うところにパーツを置くとさらに盛り上がるでしょう。
希望があれば、参加者が目隠しをしてゲームを行うこともできます。
しかし移動したり立ち上がったりする際は転倒のリスクも伴いますので、十分に配慮が必要です。
続けてしりとり
まず大きな円を作るように座り、しりとりをします。
参加者が言った単語を、介護スタッフがホワイトボードに書いていきます。
ホワイトボードに書かれた単語をすべて言ってから、自分が考えた単語を加えていくしりとりです。
たとえば、最初の人が「いぬ」と答えたら、次の人は「いぬ、ぬりえ」と言います。
さらに次の人は「いぬ、ぬりえ、えんぴつ」と続けていきます。
通常の単語だけの「しりとり」とは違い、前の人が言った単語も繰り返し言うことで、多く口を動かすことになります。
よって口腔内の筋力維持や、口腔機能の向上につながります。
お絵かきしりとり
ホワイトボードに絵をかき、それが何かを推測して次の人が単語をつなげた絵を描いていきます。
参加者が順番に絵を描いていきますが、難しいときはスタッフが代わりに描きます。
しりとりは幅広く知られている遊びなので、みんなが気軽に参加できる脳トレです。
上記のように、通常のしりとりにアレンジを加えてみるのも刺激になり、楽しむことができます。
穴埋め計算
簡単な足し算や引き算の虫食い問題の脳トレです。
【例題】
▢+1 = 7
7 – ▢ = 2
最初は簡単なものから始め、少しずつ難しくしていくのが良いでしょう。
連想ゲーム
ひとつの「テーマ」を決めてホワイトボードに書きます。
そのテーマから連想する言葉を参加者に考えてもらい、進行者がホワイトボードに書いていきます。
たとえば、テーマを「夏」に設定した場合、「夏といえば〇〇」→「〇〇といえば▢▢」とつなげていきます。
単調に進行しなくても、途中でその解答に関する質問を投げかけるのもいいでしょう。
【例】 「夏といえば素麺」→「素麵といえば、冷たい」→「冷たいといえば、かき氷」
「かき氷はどんな味が好きですか?」のように会話をして雰囲気を盛り上げます。
歌当てクイズ
ホワイトボードに歌詞の中から「フレーズ」や「キーワード」を書いて、曲名を当ててもらいます。
ここでのポイントはみんなが知っている「有名な歌謡曲」や「童謡」などを選ぶことです。
キーワードは徐々に分かるように出していきます。
初めは「歌と連想しにくいキーワード」を出して、段々と歌詞のポイントとなるキーワードを選びます。
正解のあとは全員で歌いましょう。
答えられなくても歌うことで「参加している」ことを感じていただくためです。
【例題】
①あこがれ
②さようなら
③乙女
④空のはて
⑤雪崩
⑥歌声
⑦山脈
【青い山脈】
若く明るい歌声に
雪崩は消える 花も咲く
青い山脈 雪割桜
空のはて
きょうもわれらの 夢を呼ぶ
古い上衣よ さようなら
淋しい夢よ さようなら
青い山脈 バラ色雲へ
あこがれの
旅の乙女に 鳥も啼く(なく)
オノマトペクイズ
動物の鳴き声、物や動きの「擬音語」や「擬態語」を使ったゲームです。
たとえば、
いぬ→「ワンワン」
ねこ→「ニャーニャー」
食べるとき→「モグモグ」
雨が降っているとき→「ザーザー」
時計の音→「チクタク」
など、自由に連想して「音」を付けていく脳トレです。
リズムに合わせて順番に答えていくと瞬発力も鍛えられ、盛り上がるでしょう。
〇のつく言葉をたくさん出そうゲーム
〇のところにひらがなを当てはめて、思いつく言葉をたくさん出していくゲームです。
【例題】
「き」のつく言葉を出しましょう、と出題して答えてもらいます。
- キリン
- キツツキ
- きゅうり
- キツネ
など、たくさんの言葉を出し合います。
解答された言葉は進行者がホワイトボードに書いていきます。
制限時間内にいくつ出せたかを競い、チーム対抗にするのも盛り上がります。
脳トレをホワイトボードでするメリット
では、ホワイトボードで脳トレをするメリットについてまとめていきます。
すぐに始めることができる
準備するのは「ホワイトボード」と「専用のペン」だけです。
道具を用意したり、事前に何か準備をする必要がありません。
また、大きなホワイトボードは目立ちます。
目の前に用意されただけでも参加者が注目し、すぐにレクリエーションを始められます。
集団で脳トレができる
高齢者一人ひとりがプリントなどで行う計算問題やクイズは、時間が経つと飽きてしまうこともあるでしょう。
しかしホワイトボードは集団で行うため競い合ったり、飽きずに集中して取り組むことができます。
また進行者側からも、参加者の笑顔やつまらない表情などがよく見えます。
どのように進行すれば盛り上がるかを考えるひとつの手段になります。
コミュニケーションが活発化する
参加者同士が、相手の表情をみてコミュニケーションが取りやすくなります。
その中での「笑い」が免役力アップにつながり、認知症予防の効果を期待できます。
座ったままで行うことでできる
参加者が座ったままで行えるのは大きなメリットです。
転倒やケガなどのリスクを最小限に回避することができます。
ホワイトボードで行う脳トレの注意点
では、ホワイトボードを使用する際の注意点はあるのでしょうか?
文字は大きく書く
基本、文字は大きくハッキリと書きます。
高齢者の中には見えにくさを訴える方もいます。
インクが薄くなったペンだと見えにくいので、事前に確認しておきましょう。
問題のレベルを参加者に合わせる
脳トレのゲームやレクリエーションは簡単なものから難解なものまで、さまざまあります。
簡単なクイズから始めて徐々にレベルを上げていくなど、状況に応じて実施しましょう。
簡単すぎず難しすぎないように、高齢者・参加者のレベルに合う問題を出題することが大切です。
ホワイトボードが全員が見えるようにする
参加者が座る位置によっても、光が反射したり文字の見え方が変わります。
不公平感のないように、ホワイトボードの設置場所や座る場所にも配慮が大切です。
対戦型はほどほどに
対戦型の場合、特に「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが先行しかねません。
それでは楽しむどころかストレスを感じてしまいます。
進行者は、参加者が「不正解でも問題なし」といった雰囲気を作ることも大切です。
無理に答えさせない
参加者の中には、答えるのが苦手な方もいるでしょう。
答えづらそうな場合は無理に答えてもらわずに、介護スタッフが代わりに答えるのもいいかもしれません。
進行者が自ら珍解答を出すなど、あくまでも楽しいムード作りが大切です。
安全に配慮する
移動式のホワイトボードは大きく場所を取ります。
施設の利用者の歩行の妨げにならないように、使用していないときは隅に置くなど、安全に配慮しましょう。
高齢者増加に伴う認知症の有病者数
令和元年に厚生労働省が発表した資料によると「認知症の有病者数」は、高齢化が進むことと比例して増加傾向にあるのがわかります。
物忘れ程度の「軽度認知症(MCI)」の方も、年間10〜30%が「認知症」に進行しています。
また認知症を発症した場合の「治療薬」は効果がないといった研究報告も多くあります。
一方で、軽度認知症から「正常レベル」に回復する方も一定数います。
ひとりでも多くの高齢者が認知症にならないために、脳トレや生活習慣の見直しが必要です。
楽しみながら行えるホワイトボードを使用した「脳トレ」は、認知症予防のひとつとして有効であるといえるでしょう。
出典:厚生労働省【認知症施策の総合的な推進について】
高齢者のホワイトボードでの脳トレのまとめ
- 高齢者の脳トレとは、認知症を予防するためのレクリエーションのひとつ
- ホワイトボードを使った脳トレのメリットは、すぐに始められてコミュニケーションも取りやすくなる
- ホワイトボードを使った脳トレの注意点として、参加者全員が見やすく楽しめる雰囲気づくりや、安全配慮も大切である。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。