高齢化する日本では、今後ますます老人ホームの必要性が高まります。
老人ホームの開業には莫大な資金がかかりますが、自治体や国の補助金をうまく活用することで負担を軽減できます。
本記事では老人ホーム設立の補助金について、以下の点を中心にご紹介します。
- 老人ホーム設立で利用できる補助金とは
- サービス付き高齢者向け住宅の補助金や税制優遇措置とは
- その他に活用できる補助金や助成金とは
老人ホーム設立の補助金のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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老人ホームの設立には多額の資金が必要?
老人ホーム設立に必要な資金は、老人ホームの種類や規模によって異なります。
あくまで目安ですが、入居者50人程度の有料老人ホームを設立する場合は、2~4億ほどの資金がかかります。
なお、老人ホーム設立に必要な資金は、主に初期費用と運営費用の2つに分けられます。
初期費用
主に老人ホームの設備を整えるための費用です。
高額になりやすいのは、「土地代」と「建築費または物件取得費」です。
その他にも、法人設立費・設備整備費・人件費などが必要となります。
一つ忘れてはならないのが、運転資金です。
開業当初は、思うように収益が上がらないことがほとんどです。
利益が出るまでに3カ月~半年程度はかかりますので、その間持ちこたえるための資金準備が必要です。
なお、初期費用の内訳は以下の通りです。
- 法人設立費(社会福祉法人の資格取得費)
- 土地の取得代
- 建設費または物件取得費用
- 設備費・備品代
- 広告宣伝費
- 人件費
- 3カ月~半年程度の運転資金など
運営費用
老人ホームを長期的に運営するために必要な資金です。
主な内訳は以下の通りです。
- 施設維持費
- 管理費
- 水道光熱費
- 人件費
- 食費など
最も大きな割合を占めるのが人件費です。
なお、運営費用は、入居者から徴収する家賃などでまかないます。
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設立を支援する補助金制度?
老人ホームを設立する際は、自治体から補助金が支給される場合もあります。
なお、老人ホーム設立にあたって利用できる補助金の種類は、実に多様です。
実際に利用できる補助金の種類・条件・対象は、事業所を設立する自治体によって大きく異なります。
同じく、補助金の支給額も自治体によってさまざまです。
補助対象経費
千葉県の補助金制度を参照します。
補助金の対象となる経費は、施設整備に必要な工事費や工事請負費などです。
【補助金の対象経費】
- 施設開設準備経費支援事業:老人ホームの開設・増床に必要な報酬・備品購入費など
- 定期借地権設定のための一時金支援事業:土地を借りる場合に必要な前払い金
土地の売買や建物以外の整備費に関しては、補助金の対象とはなりません。
補助対象施設
同じく千葉県の補助金制度を参照します。
千葉県では、以下の施設が補助金の対象施設です。
- 特別養護老人ホーム及び併設されるショートステイ用居室
- ケアハウス(特定施設入居者生活介護の指定を受けるもの)
- 介護医療院
- 養護老人ホームなど
いずれも、定員30名以上の施設が対象です。
補助金の交付額
補助金の交付額は、自治体によって異なります。
たとえば千葉県の補助金制度では、以下のような計算がなされます。
- 施設開設準備事業=交付基礎単価(839千円)×定員数
- 定期借地権利用事業=当該施設等を整備する用地に係る国税局長が定める路線価の2分の1など
なお、実際の支給額は、算出金額と補助対象経費の実支出金額を比較し、少ない方が選択されます。
その他の自治体でも、交付額は、交付基礎単価×定員数で求められることが多いです。
交付基礎単価や定員の設定は、自治体によって異なります。
参照元:「特別養護老人ホーム等の整備に係る補助金」
「介護施設等の施設開設準備経費等支援事業」
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サービス付き高齢者向け住宅の補助金制度?
老人ホームの中でも「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、補助金制度や優遇措置が豊富です。
理由は、厚生労働省・国土交通省の主導の下、高齢者の福祉の一環としてサ高住の整備が進められているからです。
建築費用の補助金
建築・改修費用の一部が補助金として支給されます。
ただし、補助金額には床面積ごとに上限額があります。
実際の支給額は、実際の建築費用と上限額を比較のうえ、少ない金額が選択されます。
【補助率】
- 新築の場合:最大10分の1
- 改修の場合:最大3分の1
【支給条件】
- サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録すること
- 入居者の家賃の額と近隣同種の住宅の家賃のバランスがとれていること
- 新築の場合、建設地が土砂災害特別警戒区域に該当しないこと
- 家賃等の徴収方法が前払いに限定されていないこと
- 各市町村のまちづくり方針と整合していること
- 運営情報の提供を行うことなど
固定資産税の優遇
新築から5年間、固定資産税が3分の2程度減額されます。
ただし、一戸当たり120平方メートルが上限です。
【減額措置】
最初の5年間の固定資産税額を、2分の1以上6分の5以下の範囲で各市町村が条例で定める割合で減額する
【条件】
- 一戸あたり、30平方メートル以上180平方メートル以下
- 10戸以上
- 国からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
不動産税の優遇
新築時に、不動産取得税が軽減されます。
家屋・土地が対象です。
【減額措置】
- 建物:1200万円の控除
- 土地:4500万円または土地の評価額/平方メートル× 2分の1(特例負担調整措置)×家屋の床面積の2倍(200平方メートルを限度)×3%のうち金額が大きいものを控除
【条件】
- 一戸あたり、30平方メートル以上180平方メートル以下
- 10戸以上
- 国からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
融資に関する優遇
サ高住は、融資に関しても優遇を受けられます。
優遇を受けるための主な条件は以下の通りです。
- サービス付き高齢者向け住宅として登録した賃貸住宅であること
- 省エネルギー対策等級3以上の性能であること
- 融資対象の賃貸住宅部分の延べ床面積が200平方メートル以上であること
- 敷地面積が165平方メートル以上であること
職場環境の整備を促す補助制度も?
老人ホーム設立後に利用できる補助金制度もあります。
たとえば雇用環境の改善や、施設運営に役立てることができます。
地域雇用開発奨励金
事業所がある地域の住民を雇い入れる場合に支給される補助金です。
対象地域が限られており、雇用の機会が少ない地域の事業者が利用できます。
実際の支給額は、雇い入れ人数の増加などに応じて変動します。
一年で最大3回受給できます。
特定求職者雇用開発助成金
高齢者や障害者などの就職困難者を継続雇用する場合に支給されます。
原則として、ハローワーク経由で紹介された方を雇い入れる必要があります。
特定求職者雇用開発助成金は、就労者別に8つのコースに分類できます。
職場定着支援助成金
人材の定着を目的として支給される助成金です。
対象者は、雇用環境の改善に取り組んだ事業者です。
エイジフレンドリー補助金
高齢者の就労・定着支援のために、職場環境の改善に取り組んだ事業者に支給されます。
小売業・卸売業・サービス業などが対象で、60歳以上の高齢者を常時雇用する必要があります。
老人ホームと補助金のまとめ
ここまで、老人ホーム設立の補助金についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 老人ホーム設立で利用できる補助金の種類・金額・条件は、各自治体によって異なる
- サービス付き高齢者向け住宅は、建設費の補助金制度があるほか、固定資産税・不動産税の優遇、融資の面の優遇を受けられる
- その他に活用できる補助金や助成金とは、「地域雇用開発奨励金」「特定求職者雇用開発助成金」「職場定着支援助成金」「エイジフレンドリー補助金」など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。