管理栄養士の中には介護施設に勤めたいと思う一方で、どこの施設が良いのか迷っている方もいるのではないでしょうか。
管理栄養士が働ける施設に、特別養護老人ホームが挙げられます。
では、特別養護老人ホームでの具体的な仕事内容はどんなものなのでしょうか。
今回は以下について解説していきます。
- 特別養護老人ホームの管理栄養士の役割
- 特別養護老人ホームの管理栄養士の業務内容
ぜひ最後までお読みください。
介護資格に興味がある方は下記の記事も併せてお読み下さい。
介護とは人の命に係わる仕事です。いろいろな専門性が求められるため、国家資格から民間の資格までさまざまな資格があります。具体的にはどのような資格があるのでしょうか?本記事では、介護の資格について以下の点を中心にご紹介します[…]
スポンサーリンク
特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームとは、国や自治体が運営する公的施設の一つです。
在宅生活が困難で常時介護を必要とする高齢者に対し、生活全般の介護をはじめ健康管理や機能訓練などの様々なサービスを提供します。
入居対象者は原則として65歳以上で要介護3以上の方、または40~64歳で特例疾病がある要介護3以上の方です。
ただし、特例として認められた場合は要介護1・2の方でも入居できます。
特別養護老人ホームは民間企業が運営する民間施設に比べ、費用が安いという特徴があります。
そのため人気は高く、入所までに数ヶ月~数年と時間がかかるケースも少なくありません。
また、長期入所を前提としていることから、看取りの対応を行っている施設も多く存在します。
特別養護老人ホームについて詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
被介護者を抱える方の中に介護施設への入所を考える方は多いのではないでしょうか。一方で、一口に介護施設といっても種類はもとより、特徴や入所条件などは様々です。今回は、数多くある介護施設の中でも特別養護老人ホームについてご紹介します[…]
スポンサーリンク
特養の管理栄養士の役割
特別養護老人ホームの管理栄養士の役割は、入居者一人一人に合わせた栄養指導や栄養管理を行うことです。
糖尿病を患っている方であれば栄養バランスをしっかり考慮し、日頃の食事指導を行います。
また、身体に麻痺が生じている方に対し、食べやすい形態に変えた食事を提供します。
このように入居者一人一人に合った栄養指導や栄養管理を行いながら、入居者の健康維持・増進のサポートを行います。
特に特別養護老人ホームは入居者が長く暮らしていきます。
そのため、栄養指導や栄養管理を行うだけではなく、食の楽しさを提供することも管理栄養士の重要な役割となります。
特養の管理栄養士の業務内容は?
では、特別養護老人ホームの管理栄養士の具体的な業務内容はどんなものなのでしょうか。
ここからは、業務内容をご紹介します。
食事の提供
特別養護老人ホームの管理栄養士は献立作成をはじめ、食材発注や調理のサポートなどを行い、入居者一人一人に合った食事を提供します。
特別養護老人ホームでは一日3食提供されており、栄養バランスを考慮した上で飽きずに楽しめる食事を考える必要があります。
また、冷蔵庫や冷凍庫などの食材を定期的にチェックして在庫管理を行いながら、過不足がないように食材発注をするのも業務の一つです。
栄養ケアマネジメント
栄養ケアマネジメントでは入居者の栄養状態や食事摂取状況、運動量などの栄養管理に必要な情報を把握した上で一人一人に合った栄養ケア計画を作成します。
入居者の体重や血液検査データなどの情報に加え、好き嫌いやアレルギーの有無、食事形態なども把握する必要があります。
ときにはミールラウンドという食事中の入居者を訪問して嚥下や咀嚼(そしゃく)についての確認も行います。
また、入居者の意見を聞くためにアンケート調査を実施することもあります。
衛生管理
厨房やキッチンでの衛生管理指導やマニュアル作成などを行うのも管理栄養士の業務の1つです。
施設での食事提供を行う場合、一名の食品衛生責任者を配置しなければならないという法律が定められています。
そのため、通常であれば食品衛生責任者の資格保有者が在籍している必要があります。
しかし、管理栄養士であれば資格を保持していなくても食品衛生責任者として業務を行うことが可能です。
衛生管理は入居者の健康維持に関わるため、非常に重要な業務といえます。
イベント食や行事食の企画・実施
毎日の献立作成に加え、季節を感じるイベント食や行事食の企画・実施を行うのも管理栄養士の大切な業務の一つです。
イベント食や行事食には、ひな祭りのちらし寿司、七夕の三色そうめん、クリスマスケーキなどが挙げられます。
イベント食や行事食を実施することで、季節の変化を味わったり食欲が増進したりするなど、入居者の生活向上に繋がります。
栄養マネジメント加算時の管理
特別養護老人ホームの管理栄養士は栄養マネジメントの実施に加え、栄養マネジメント加算時の管理も行います。
栄養マネジメントの加算を算出するためには一名以上の管理栄養士が常勤している必要があります。
常勤で配置された管理栄養士は関連書類の作成・整備を行います。
栄養マネジメントが加算されると、一日14単位取得することが可能です。
特養の管理栄養士のお給料
厚生労働省の令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果における管理栄養士の平均基本給与額は32万2010円です。
施設によって異なりますが、基本給に加えて家族手当や住宅手当、資格手当などが追加される場合があります。
特養の管理栄養士のやりがい
特別養護老人ホームの管理栄養士の大きなやりがいは、入居者に美味しいと言ってもらえることです。
管理栄養士はただ献立を作成するだけではなく、栄養指導や衛生管理、イベント食の企画など様々な業務を担います。
様々な業務を担っているからこそ、入居者に美味しいと言われることは大きなやりがいへと繋がります。
また、栄養指導を行ったことで入居者の体調が回復したり、食事を通して健康をサポートしたりできることもやりがいの一つです。
管理栄養士と調理師・栄養士の違い
管理栄養士の他に、調理師と栄養士という業種もあります。
では、それぞれにどのような違いがあるのでしょうか。
ここからは、管理栄養士と調理師・栄養士の違いをご紹介します。
管理栄養士と調理師の違い
管理栄養士と調理師の大きな違いは、業務内容です。
管理栄養士は調理に入ることもありますが、献立作成や栄養指導を中心に行います。
一方で調理師は献立作成や栄養指導を行うことはなく、管理栄養士が作成した献立にそって料理を作ることが主な業務です。
管理栄養士と栄養士の違い
管理栄養士と栄養士の違いは、栄養指導の対象者です。
管理栄養士は健康な方に加え、病気を患っている方や高齢で食事が摂りづらい方など一人一人の状況に合った栄養指導や栄養管理などを行います。
一方で栄養士は、健康な方を対象に栄養指導や給食の運営などを行います。
その他にも、管理栄養士は厚生労働大臣、栄養士は都道府県知事の免許を受けた資格というのも違いの一つです。
栄養士について知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
調理師や管理栄養士などを含む「栄養」に関する資格は、数多く存在しています。しかし、資格の名前を耳にしたことがあっても、資格を活用した仕事内容や取得する方法などを、具体的に知らないという方も多いと思います。そこで本記事では、栄養に[…]
調理法も考える?
高齢者でも食べやすいように一人一人に合わせた調理法を考えることも管理栄養士の業務の一つです。
入居者の身体状態に応じて食材を細かく刻んだり、ミキサーにかけたりするなど、食べやすい工夫を加えた食事を提供します。
介護施設で提供される食事形態は、ミキサー食や刻み食、ソフト食など様々です。
入居者一人一人に合った調理法を考え食事を提供するためには、事前に入居者の状態をしっかり把握しておく必要があります。
調理法は管理栄養士だけではなく、実際に調理を手掛ける調理師と一緒に考え、話し合って決めていきます。
施設で生活する入居者にとって、食事は大きな楽しみの一つです。
そのため、献立作成や栄養指導などに加え、調理法の検討も管理栄養士の重要な役割だといえます。
介護食について興味のある方は、こちらの記事もあわせてお読みください。
スポンサーリンク
特養の管理栄養士の配置基準
特養の管理栄養士の配置基準は、令和3年度介護報酬改定に伴い以下のようになりました。
- (現行)栄養士を1以上配置→(改定後)栄養士又は管理栄養士を1以上配置
- 運営基準(省令)は3年の経過措置期間を設ける
出典:厚生労働省【令和3年度介護報酬改定の主な事項について】
スポンサーリンク
特養の管理栄養士の加算
特養の栄養関連の報酬加算は令和3年度介護報酬改定に伴い以下のようになりました。
- 栄養マネジメント加算 14単位/日は廃止
- 栄養ケア・マネジメントの未実施 14単位/日減算
- 栄養マネジメント強化加算 11単位/日が新設
- 低栄養リスク改善加算は廃止
出典:厚生労働省【令和3年度介護報酬改定の主な事項について】
介護報酬の仕組みについて興味のある方は、こちらの記事もあわせてお読みください。
介護職員として働いている方や介護業界に属している方は介護報酬という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?高齢化が進む日本ではたびたび、介護報酬内容が改定されています。この記事では、介護報酬について以下の点を中心にご紹介しま[…]
スポンサーリンク
特養の管理栄養士は暇?
特養の管理栄養士の役割や業務はさらに増しています。
特養の管理栄養士の業務は既に述べましたが以下のように多岐にわたります。
- 食事の提供
- 栄養ケアマネジメント
- 衛生管理
- イベント食行事食の企画・実施
さらに令和3年度介護報酬改定においては栄養マネジメント強化加算が新設されています。
栄養マネジメント強化加算には管理栄養士に関して以下のようなことも含まれています。
- 栄養ケア計画(医師、管理栄養士、看護師で作成)に従い食事観察を週3回以上行う
- 食事観察の実施で、入所者ごとの栄養状態を踏まえた食事の調整を実施すること
- 入所者の退所時、管理栄養士が退所後の食事に関する相談支援を行うこと
出典:厚生労働省【令和3年度介護報酬改定の主な事項について】
特養の管理栄養士になるために
特養の管理栄養士になるための2つのポイントを挙げます。
- 特養の管理栄養士の勉強方法
- 特養の管理栄養士の志望動機
それぞれの内容について以下にご紹介します。
特養の管理栄養士の勉強方法
管理栄養士は管理栄養士国家試験に合格して得られる国家資格です。
国家試験で学ぶ科目は以下のようになっています。
- 社会・環境と健康
- 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
- 食べ物と健康
- 基礎栄養学
- 応用栄養学
- 栄養教育論
- 臨床栄養学
- 公衆栄養学
- 給食経営管理論
特養などの高齢者施設の管理栄養士はさらに以下のような深い知識も求められます。
- 認知症・脳血管疾患・高次機能障害などの病態
- 摂食嚥下障害
特養の管理栄養士の志望動機
志望動機には特養で働きたいと思ったことが伝わるようにしましょう。
特養の志望動機のポイントを以下に5つ挙げます。
- 特養の仕事内容を理解していることを含める
- 特養で働くことで、介護職のスキルアップを図りたいこと
- 特養で働くことが管理栄養士としてやりがいがあること
- これまでの経験や管理栄養士を目指した経緯
- 施設の理念や取組に共感したこと
スポンサーリンク
特養の管理栄養士を辞めたい場合
せっかく特養の管理栄養士になったにも関わらず辞めたくなることがあります。
管理栄養士は調理師や看護師など他職種と連携して仕事をしなければなりません。
人間関係が時に難しく1人で働いている場合は、悩みを抱えてしまうこともあるでしょう。
「辞めたい」と思ったときのポイントを以下に挙げます。
- 人間関係の構築には時間がかかると思えるか
- 仕事ができるようになると信頼が増し人間関係改善につながることもある
- 人間関係以上に「やりがい」がないか
- 相談できる人がいないか
- 辞める決断は即決しない
- 自分なりの「ここまでやってダメなら辞める」との線引きを決める
などです。
ただし、以下のような場合は自分を守り辞める決断も必要です。
- 組織の体質の問題がある場合
- パワハラがある場合
- 精神と体が悲鳴を上げていないか
スポンサーリンク
特別養護老人ホームの管理栄養士のまとめ
今回は、特別養護老人ホームの管理栄養士についてご紹介しました。
要点は以下の通りです。
- 入居者一人一人に合わせた栄養指導や栄養管理を行うことが管理栄養士の重要な役割
- 管理栄養士は食事提供のための献立作成や食材発注、栄養ケアマネジメント、衛生管理など様々な業務を担う
これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。