介護の仕事を探すにあたって、看護助手と介護士に興味を持つ方も多いと思います。
どちらも無資格・未経験でも働くことができる仕事です。
一見同じような仕事に見えますが、実際にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、看護助手と介護士の違いについて徹底解説していきます。
- 看護助手と介護士の違い
- 看護助手の仕事内容
- 介護士の仕事内容
- 介護士から看護助手になる方法
この記事を読めば、看護助手と介護士についての違いや持っていると有利な資格が分かります。
ぜひ最後までご覧ください。
医療の現場では慢性的な看護師不足が続いています。看護師の資格は持っていないけれど、医療現場で活躍したいと考えている人もいるでしょう。また、介護士として働いているけれど、医療関連の経験を積みたいと考えている人もいると思います。[…]
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看護助手の仕事内容
※画像はイメージです
まず、看護助手の業務内容について詳しく見ていきましょう。
看護助手の主な仕事内容は、看護師のサポート、入院患者の介助業務、環境整備の3つです。
看護師のサポート
看護助手の主な仕事内容は、看護師のサポートです。
看護師が医療処置や健康観察などの業務に集中できるよう、医療行為に直接関係ない部分の業務を肩代わりすることで看護師を補助します。
例えば看護師から指示された器具の準備や片付け・洗浄・管理があります。
在籍する病棟内の消耗品などの備品管理などを行うこともあります。
また、医師と看護師や患者の間に入って書類の受け渡しを仲介したり、カルテの管理や経過記録の入力・検体の移送・面会に来た患者家族への対応などをしたりする場合があります。
看護助手は、医師と看護師・患者が治療に専念できるようにするためのパイプ役として活躍しているのです。
入院患者の介助業務
看護助手の2つ目の仕事内容は、入院患者の介助業務です。
怪我や病気によって入院した患者は、要介護者のように身体介護が必要となる場合があります。
入院患者に対して特に行う機会が多い介助業務は、オムツ交換やトイレ介助、移動介助、入浴介助、食事介助などです。
また、徘徊する認知症患者がいれば一緒について歩いたり、せん妄状態になっている患者を落ち着かせるといった精神面での介助が発生することもあります。
この点は介護士と同じですが、異なる点は対象になるのが高齢者とは限らないことです。
直接介護を行う以外にも、入院患者への食事の配膳や、看護師が認知症患者に医療行為を行う際のサポート、事故が起きないように複数人で安全確保を図ったりすることもあります。
環境整備
看護助手の3つ目の仕事内容は、環境整備です。
具体的には、入院患者のシーツ交換や病室内の清掃・消毒などを行います。
整備する場所は病室だけでなく、診察室や会議室、ナースステーションなどの清潔保持も担います。
また、入院患者が退院して病室が空いたときは使っていたベッドを片付け、次の入院患者の受け入れに向けて整理整頓することもあります。
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介護士の仕事内容
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次に、介護士の業務内容について詳しく見ていきましょう。
主な仕事内容は、身体介助、生活援助の2つです。
身体介助
介護士の主な仕事内容の1つ目は、身体介助です。
歩行介助・食事介助・入浴介助・排泄介助など日常生活全般において必要な身体介助を行います。
介護士の場合は、特に自立支援の観点からケアプランに則った個別ケアを行う点が特徴です。
利用者が望む介助をそのまま行うのではなく、利用者自身が持っている能力を活かした介助を実施しています。
看護業務をサポートする意味で身体介護をする看護助手とは異なり、利用者自身の生活の質の維持向上を意識し、より発展的な身体介助を行うのが介護士です。
生活援助
介護士の主な仕事内容の2つ目は、生活援助です。
生活援助とは、掃除や洗濯・調理などの支援のことを言います。
ただ必要な家事を代行するのではなく、本人の意向を尊重しながら、できる部分は一緒にやってもらうのが基本です。
掃除や洗濯・調理の方法は、その利用者が今まで過ごしてきた生活環境により方法や手順が十人十色です。
病院にいる間は、病院側のルールに併せて対応するしかないので、患者が我慢せざるを得ない場面も多々あるでしょう。
しかし介護士が行っている生活援助は、自分の自宅や入所先で行われる支援だからこそ、利用者一人一人の事情や意向・生活歴に沿って行われています。
看護助手と介護士の違い
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看護助手と介護士は同じような仕事に見えますが、実際にはいくつもの違いがあります。
看護助手と介護士が異なる点は、主に以下の4つです。
- 対象者の違い
- サポート目的の違い
- 勤務場所の違い
- サポート範囲の違い
大まかに違いをまとめると、以下の表のようになります。
看護助手 | 介護士 | |
対象者 | 病気や怪我の治療が必要な患者 | 要介護認定などを受けた高齢者 |
サポート目的 | 治療や療養上の世話 | 日常生活上必要な支援 |
勤務場所 | 病院や療養施設 | 介護施設や要介護者の自宅 |
サポート範囲 | 治療や療養上で必要な範囲 | 個人ごとの支援計画により異なる |
この章では、看護助手と介護士がどのように違うのかについて細かくご紹介していきます。
対象者の違い
看護助手と介護士の1つ目の違いは、対象者です。
看護助手の支援対象は、勤務先の病院や医療施設に通院や入院している患者です。
そのため、実際には怪我をした人や病気の人・子供から高齢者・障がい者まで、対象者は様々です。
入院棟に所属すれば対象が入院患者に限られますが、外来に配属されれば正に不特定多数の人が支援対象となります。
これに対して介護士の支援対象は、介護施設を利用する要介護者です。
具体的には要介護認定を受けている65歳以上の方が大半であり、一度に支援する利用者の数もある程度絞られます。
このことから、看護助手が支援する対象者は高齢者に限らず幅広い範囲の患者であるのに対して、介護士の対象者は要介護認定を受けた高齢者が中心であるという違いがあります。
サポート目的の違い
看護助手と介護士の違いの2つ目は、サポート目的です。
看護助手が行う業務の目的は、医師や看護師が行う医療行為のサポートをし、患者様が早く退院できるように援助することです。
患者に対して医療行為を行うことはできませんが、治療や療養上の過程で生じる介助や身の回りの世話・器具出しや病室の掃除などを行うことによって医療従事者を支援します。
これに対し介護士は、介護を必要とする方に対して、日々の日常生活上で必要な支援を総合的に提供します。
看護助手は患者の介護などを行うことで医療従事者の業務量を減らすことが目的であるのに対し、介護士は利用者の生活を支えることそのものが目的となっています。
勤務場所の違い
看護助手と介護士の3つ目の違いは、勤務場所の違いです。
看護助手の勤務先は病院や診療所などの医療機関です。
入院設備と外来の両方がある医療機関の場合は、病棟勤務と外来勤務どちらにも配属される可能性があります。
対して、介護士が勤務する場所は特別養護老人ホームやグループホームといった入所系の事業所から、デイサービスや小規模多機能型居宅介護事業所といった通所が中心である事業所など多岐に渡ります。
無資格であれば訪問介護員にはなれませんが、訪問入浴介護の事業所に所属すれば、利用者宅に訪問して入浴介助をする場合もあります。
看護助手と介護士が勤務できる場所を比較すると、介護士の方が選択肢が多くなっている点も特徴です。
サポート範囲の違い
看護助手と介護士の4つ目の違いは、サポート範囲です。
看護助手が行う業務範囲は治療や療養上で必要な範囲に限られています。
具体的には、身体介護や病室の掃除・器具出しの補助などがあります。
看護師の業務を補助することが中心で、やるべきことが明確に定められています。
これに対して介護士は、利用者一人一人のケアプラン(個別支援計画)に則り、生活の質を向上させるために様々な視点や方法で支援します。
各種身体介護は勿論ですが、サービスを利用する人がイキイキと過ごせるようにレクリエーションの機会を提供したり、自立支援の観点から利用者と一緒に掃除や調理をしたりと多岐に渡ります。
看護助手は業務内容がある程度固定されているのに対し、介護士は利用者ごとに個別・総合的な視点で支援する点が違っています。
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看護助手と介護士の給料の違い
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看護助手と介護士では平均年収やボーナスなど給料が異なります。
看護助手と比較し介護士は約50万ほど年収が高い結果となっています。
具体的には以下の表の通りです。
看護助手 | 介護士 | |
平均年齢(歳) | 46.9 | 43.8 |
勤続年数(年) | 8.5 | 7.6 |
平均年収(円) | 304万3000 | 352万8000 |
平均月収(円) | 21万6100 | 25万600 |
年間賞与(ボーナス)(円) | 44万9800 | 52万800 |
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
将来性では定期昇給の面で看護助手と介護士は異なります。
19歳までは介護士と看護助手はほぼ同じ収入です。
20歳から40歳まででは介護士が約4万ほど昇給します。
一方看護助手は昇給が約2万ほどで介護士の約半分です。
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
産休や子育ての面では看護助手と介護士は異なります。
介護士は仕事と育児・介護との両立について、約7割が難しいと回答しています。
看護助手は出産後に就職する場合もあり、育児との両立が図りやすい一面があります。
出典:厚生労働省「看護補助者調査」
看護助手が持っていると有利な資格
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看護助手は無資格でも就職できる職種ですが、保有していると就職時や給与面で有利になる資格があります。
- 看護助手認定実務者試験
- メディカルケアワーカー検定試験
ここでは以上の2つの資格について概要をご紹介していきます。
興味を持った方は、ぜひ取得を検討してみて下さい。
看護助手認定実務者試験
看護助手認定実務者試験とは、「特定非営利活動法人 全国医療福祉教育協会」が主催する検定試験です。
以前は「看護助手実務能力認定試験」と呼ばれていましたが、2020年度から試験制度と名称が変更となりました。
看護助手認定実務者試験は、看護助手の即戦力として活躍するための知識、技能を持っているかを確認するための試験です。
この試験に合格すれば、看護助手としての能力を客観的に証明することができます。
公式教材も発行されているので、試験対策の勉強も効率的にできるでしょう。
メディカルケアワーカー検定試験
メディカルケアワーカー検定試験とは、「特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会」が主催する検定試験です。
日本初の看護助手に関する資格であることから、看護助手に興味を持ったことがある方であれば一度は聞いたことがあるでしょう。
メディカルケアワーカー検定試験は、看護補助や福祉介護業務に従事する人として必要な能力を持っているかどうかを証明するための試験です。
試験には1級と2級があり、それぞれ以下のような受験資格要件が設定されています。
- 1級:メディカルケアワーカー検定2級の試験に合格した人
- 2級:協会が指定する実務経験が1年以上ある者・または指定教育機関においてメディカルケアワーカー研修を修了した人
受験資格が設定されているため、看護助手認定実務者試験と比較すると取得難易度は高めです。
介護士が持っていると有利な資格
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看護助手と同様、介護士も無資格で就職することができます。
しかし、資格があれば有利であることもまた同じです。
数ある介護関係の資格の中でも、特に取得しておくべき資格を3つご紹介します。
看護助手と異なる点は、介護士の場合は経験を積んで資格を取得していくことで確実にキャリアアップしていくことができるということです。
ここでご紹介する資格は、介護士として成長していきたいと思うのであればぜひ取得をおすすめしたいものばかりです。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護士としての基礎を身に付けるための基本的な資格で、介護保険法で厚生労働省が規定している公的資格です。
都道府県から指定を受けた資格学校などの養成施設が研修を実施しています。
以前は介護士を目指す方がまず取得する「ホームヘルパー2級」という資格がありましたが、2013年からホームヘルパー資格の廃止と共に新たに設置されました。
介護士は無資格でも就職できるのですが、実際に出ている求人票を見ると有資格者優遇と記載されているものが多いです。
仕事をしながらでも取得でき、各自治体でも資格取得のための助成制度が実施されている場合があります。
ハローワークの教育訓練給付金制度の対象にもなっているので、とりあえず介護の資格を取ってみたいと考えている人に最もおすすめできる資格です。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、初任者研修と同様に介護保険法で厚生労働省が規定している公的資格です。
都道府県から指定を受けた資格学校などの養成施設が研修を実施しています。
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修よりもさらに専門的な知識や技術を学ぶ研修です。
具体的には、介護に関する技術や知識だけでなく、医療面での知識も学びます。
特に痰吸引や経管栄養といった医療的ケアの演習も行う点が特徴です。
さらに、介護福祉士実務者研修を修了することが介護福祉士国家試験の受験資格の一つなっているため、キャリアアップを目指している人には避けて通れない資格です。
初任者研修よりも費用は高いですが、初任者研修を取得済みの人は一部の科目が免除となり、大幅な受講料割引を受けられるので安心です。
また、各自治体や社会福祉協議会では一定の条件を満たすことで返済不要となる受講料の貸付制度を実施していたり、ハローワークの教育訓練給付金の対象となっていたりするため、費用面の負担も軽減できます。
介護福祉士
介護福祉士は、「介護福祉士及び社会福祉士法」で規定されている国家資格です。
数ある介護士の資格の中でも、国家資格は介護福祉士のみとなっています。
介護福祉士を取得するためには国家試験に合格した上で介護福祉士として登録する必要がありますが、国家試験を受けるための受験資格が設定されています。
介護福祉士国家試験の受験資格は以下の通りです。
- 介護福祉士実務者研修を修了していること
- 介護業務を担う職員として従業期間3年以上(1,095日以上)かつ540日以上の従事日数があること
これ以外に専門学校や4年制大学に入学して取得する場合もありますが、介護士として働き始めてから介護福祉士を取得するのであれば国家試験を受験するのが一般的です。
介護が必要な人に対して直接介護を行う職種を「介護士」といいます。一方で、介護士とは別に「介護福祉士」と呼ばれている人たちがいることをご存知でしょうか。「介護福祉士」と「介護士」はどんな違いがあるのか疑問に思う人も多いでしょう。[…]
介護士から看護助手になれる?
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看護助手は無資格でも就職できる職種なので、介護士から看護助手に転職することが可能です。
しかし、介護士から看護助手への転職を考えるのであれば、先ほどご紹介した「看護助手実務能力認定試験」の資格を取得してから転職することが望ましいです。
なぜなら、看護助手が働く場所は患者の命を預かる病院や医療施設だからです。
例え看護助手が無資格で働ける職種であると言っても、病気や怪我などによって治療を必要としている方が対象です。
中には病気が進行して慎重なケアが必要だったり、看護師をフォローするときに医療面の知識が必要となったりする場面が多々あります。
そのため、看護助手として働くに当たっては、介護・医療の両方の知識を兼ね備えていることが重要です。
介護士から看護助手への転職を考えているのであれば、「看護助手実務能力認定試験」の資格取得を積極的に検討しましょう。
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看護助手と介護士の違いまとめ
※画像はイメージです
ここまで、看護助手と介護士の仕事内容の違いや資格に関することを中心にご紹介してきました。
- 看護助手と介護士の違いは「対象者」「サポート目的」「勤務場所」「サポート範囲」にある
- 看護助手の主な仕事内容は、看護師のサポート・入院患者の介助・環境整備
- 介護士の主な仕事内容は、身体介護・生活援助
- 介護士から看護助手になるときには、「看護助手実務能力認定試験」を取っておくと有利
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。