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糖尿病ってどんな病気!?
今回は、「糖尿病」と「糖尿病の方に必要な水分摂取量」について解説していきます。まずは糖尿病がどんな病気なのか、簡単に解説します。
日本は、2000万人以上が「糖尿病」もしくは「糖尿病予備軍」の糖尿病大国です。(参考:平成30年版厚生労働白書)特に65歳以上の方の糖尿病人口が多く、2019年の世界ランキングでは第6位で490万人もいます(参考:国際糖尿病連合、2019)。糖尿病は「肥満」が原因の一つに挙げられますが、欧米人と比較して日本人は体質的に糖尿病になりやすく、やせている方でも糖尿病になることが多いのが特徴です。
本来、食事から摂取した糖(ブドウ糖)は身体のエネルギー源として利用され、血液中のブドウ糖の濃度は一定に保たれます。これは、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンが、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り入れる役割をしてくれているからです。ところが糖尿病を患っていると、すい臓から分泌されるインスリンの量や作用が低下し、細胞がブドウ糖を取り込めなくなります。それによってブドウ糖が血液中に停滞し、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなり、常に「高血糖状態」になってしまいます。
血糖値が高いということは、エネルギー源であるブドウ糖が細胞の中に十分に補給されていないことを意味します。そのため全身の細胞の働きが悪くなり、身体のいろいろなところに障害を引き起こしてしまいます。
これが糖尿病の“合併症”です。したがって、糖尿病の治療は血糖値のコントロールが重要となり、治療は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」を組み合わせて行っていきます。
まず食事療法、運動療法から始めて、生活習慣の改善を行います。食事療法と運動療法だけで血糖値が目標値まで下がらない場合は、内服薬や注射薬を使った薬物療法を行います。なお、薬の効果を高めるためにも、食事療法、運動療法は継続します。
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糖尿病だと尿が多く出る!その原因は!?
糖尿病の代表的な症状は、「頻尿・多尿」と「喉の渇き」です。人間の身体は、自然と水分を求めるようになっているのです。
先にも解説したように糖尿病になると血液中のブドウ糖が多くなります(血糖値が高い状態)。血液中にブドウ糖がたくさんあるということは、血液がドロドロしているということであり、そのままだと血液の流れが滞って、脳梗塞などの大病を引き起こしてしまいます。その濃度を下げようとして、身体が水分を欲します。これが「喉の渇き」です。人間の身体は、自然と水分を求めるようになっているのです。
そうしてたくさん水分を飲むようになった結果、尿がたくさん出る「多尿」となります。多尿とは、1日の尿量が3,000ml以上のことを指します。糖尿病が進行すれば進行するほど多尿になり、日中だけでなく、夜中も頻繁にトイレに起きるようになります(「頻尿」)。1日のトイレの回数が8回以上の場合は、頻尿が疑われます。
また、糖尿病で排尿の回数が多くなるのは、単に喉の渇きによって水分を多く飲むからだけではありません。血糖値が高くなると、腎臓から過剰に糖分が排泄されます(尿糖)。これは「浸透圧利尿」という病態で、排尿の回数が多くなります。排尿量も増えるので、当然、喉が渇いて水分摂取量が増えます。
さらに、高齢者の場合は喉の渇きを感じにくい方も多くおり、気づいたときには重度の脱水となっていることもあります。高齢者で糖尿病の方は、家族など身近な方が水分摂取量の管理確認をすることも大切です。
ただし、この水分補給において、“甘い飲み物”を飲んでしまうと逆効果です。血糖値を上げ、尿の回数も増やすという悪循環をもたらします。
特に糖尿病の方の場合、喉が渇いているときに甘い飲み物を飲むと、急激な高血糖状態を招きます。ひどくなると身体がだるくなり、さらに高血糖状態が続くと、意識障害が起こる危険性があります。このような病態を「ソフトドリンクケトーシス」といいます。
炭酸飲料、ジュース、スポーツ飲料(清涼飲料水)には、どのくらいの糖質が含まれていると思いますか?メーカーによっても差はあるため、おおよその数値となりますが、コーラは500ml中に角砂糖が14個分入っており、糖質に換算すると56g。オレンジジュース500ml中には角砂糖が13個分入っており、糖質52g。スポーツ飲料500ml中には角砂糖が6個分入っており、糖質24gです。これを見ると、コーラとオレンジジュースは砂糖の塊を飲んでいるようなものですね。また、スポーツドリンクも思っているよりはかなりの糖質量です。水分補給には、水や麦茶などを飲みましょう。
糖尿病の方は1,800ml以上の水分摂取を!糖分には気を付ける!
ここまでの解説で、糖尿病という病気についてはある程度理解できたかと思います。それでは、ここからは冒頭で触れた、「糖尿病の方に必要な水分摂取量」についてお伝えします。食事摂取量や排便の頻度などは人によって違いますので、今回は摂取すべき目安について記します。
通常、脱水にならないためには1日1,500ml以上の水分摂取が望ましいです。(この根拠については以前の記事「高齢者の95%が脱水!?体内に必要な水分が1%失うだけで意識障害が起きる」をご確認ください)。この目安量は、食事からとる水分量とは別で考えます。ちなみに、食事で1日1,500kcal程度の栄養を摂取できていないようであれば、食事からの水分摂取が足りていないことが考えられるので、さらに水分摂取量を増やします。とはいえ「食事は3食きちんと、水分もしっかりとる」ことが基本ですので、規則正しい食事と、午前中に多く水分を摂取する習慣が大切です。
通常の目安量と、糖尿病では排尿回数が多くなることなどをふまえて考えると、糖尿病の方は1日1,800ml以上の水分摂取を心掛けるとよいでしょう。
そして先にも解説しましたが、糖分のとりすぎには注意が必要です。しかし、糖尿病の方は甘い飲み物を好む傾向があります。前述の通り、糖尿病の方が甘い飲み物や、糖分が多く入っているものを飲むと急激に血糖値を上げてしまい、身体を危険にさらしてしまいます。
そこで、カロリーゼロの飲み物や人工甘味料(できれば植物性のもの)、オリゴ糖(砂糖が1gあたり4kcalなのに対し、オリゴ糖は1gあたり2kcalで、砂糖の半分のエネルギー量 )などを使用して、甘味は感じてもらいながらカロリーを管理するといった工夫をしましょう。
ちなみに以前の記事において、脱水は「イライラ」などの症状を伴うと解説しましたが、糖質依存(糖質を多くとる)の方も「イライラ」が出ます。糖尿病でなくても、適度な糖質を摂取してください。
むくみの治療で利尿剤を服用している場合も1,800ml以上の水分摂取をする!
高齢者の中にはむくみの治療で利尿剤を服用している方が多くいます。利尿剤が処方される理由の多くは「心不全の既往歴がある」、そして「下半身のむくみがある(特に膝下)」です。
心不全とは、心臓の働きが不十分な結果、息切れや動悸などが起こる身体の状態のことで、冠動脈疾患、弁膜症、心筋症、高血圧症、不整脈などを指しています。これらは身体全体にむくみが生じることもあります。むくむと心臓に負担がかかるので、心不全の既往がある方は、むくまないように利尿剤を処方されることが多いです。
また、高齢者は膝から下の異常なむくみがよく見られます。これも同じように、むくみの解消のために利尿剤が処方されます。
通常の水分摂取量の目安が1日1,500ml以上だとすると、利尿剤を処方されている方は排尿がたくさんあるので、糖尿病同様に1日1,800ml以上の水分摂取を心掛けましょう。
(糖尿病についての詳細な解説は医師にご相談ください。また、心不全など、疾病によっては水分摂取の制限が必要なものもあるので、医師にご相談ください。)