高齢者が病気やケガをして入院したとき、治療後はなるべく早く元の生活場所に戻ることをお勧めします。
治療が終われば退院する、当たり前の話じゃないかと思われるかも知れません。しかし、例えば脳卒中のように障害が残り、慢性の経過をたどる病気や、高齢者に多い大腿骨頸部骨折は完全に元のような歩行状態に戻るまでには、かなりの時間を要します。したがって、もう少しリハビリをして良くなってから退院したい、あるいは転院してリハビリを続けたいと本人や家族が望まれることも多く経験します。
病院という環境でプライベートな空間は、自分のベッド上に限られるといっても過言ではないと思います。もちろん、一時的な治療の場であり、暮らしの場ではありませんから仕方ないことです。
想像してみて下さい、ベッドに上がると、ゴロンと横になってしまう自分の姿を。
高齢者、ましては麻痺や痛みで活発に動けない状況であるとすれば、なおのことでしょう。極端な言い方をすれば、リハビリ以外はほとんど寝ているという方も多いのです。
リハビリはもちろん大事です、しかし制度上、1日に一人の患者さんに行えるリハビリは最大3時間です。自宅で生活をしていたとき、活動している時間が3時間以下と
いう人は、ほとんどいないはずです。頑張ってリハビリをしても、それ以外はベッドで横になっていれば、体力や認知機能、生理機能も衰えます、それが“廃用”です。
そして、高齢者の廃用は驚くほど早く、生活能力をその人から奪っていきます。リハビリを行なった分を簡単に追い越していくスピードランナーです。
やや、不安な状態を残しつつも自宅退院された方が、自宅では何だかんだと動く必要に迫られ、お元気になられていく姿や、生活していく中で身体の機能も改善していく様子を見るにつけ、行うべき場所で、行うべきことをするのが本来のリハビリであることを強く思わされます。
入院している高齢者に、退院という話が上がったときには、今よりも活発に動いている、動けている本人を想像してあげて下さい。