体調の良し悪しが如実に現れるのは食欲ではないでしょうか。何年、何十年と繰り返しているのに、今日また数時間後にやってくる次の食事のことを考えると幸せな気持ちになれる。食事は、いつでもちょっと先の未来を開いてくれます。
つまり、食事は栄養補給という面ばかりではなく、未来への可能性や生きる希望をすでに食べる前から与えてくれます。私の父が、昼食後すぐに「今日の晩飯は何だ?」と母に聞いて、「今食べたばかりで何を言っているの」と怒られていた様子が思い出されます。
入院している患者さんを見ていても、元気になられる大きな転換点の一つに口から食事を食べられるようになることがあがります。それは、ベッドに寝てばかりであった方が、自分から起き出す、口数(話す)が増えるといった目に留まりやすいところばかりではなく、肌ツヤや髪の毛にハリにも表れます。
印象の変化は、患者さんに関わる職員の対応も積極的にさせるものがあります。例えば、声をかける頻度や、これまで介助していた動作を本人にやってもらうよう促しが増えたりします。
昨今では、食事のメニューに大変工夫されている病院や施設が増えているという事実にも頷けます。味はもちろんのこと、食材、見た目(再形成食など)や、食器具、選べるメニュー、食事場所の雰囲気などです。
特に高齢者の施設では特色の一つとして様々な努力をされていますので、施設の食事にもぜひ関心をもっていただけると良いと思います。施設で提供する介護食のレシピを紹介している施設もありますので、在宅介護の際にも調理の参考になるかも知れません。
ところで、バランスの取れた食事を適量にというのが理想なのでしょうが、患者さんや施設の利用者さんなど、様々な方の食習慣について見知ってきますと、皆さんそれなりに偏った食事をしていることに気づきます。
何年もコーラとポテチだけしか食べていないという強者は極端だとしても、私を含め多くの人は、週単位、月単位ではだいたい同じものばかり食べているように感じます。
スーパーに行くと、いつも同じルートで同じものに手が伸びる。ある意味、みなさん食事のバランスはイマイチなのかも知れませんね。時に食べ過ぎもあるでしょう。しかし、それなりに健康で過ごせるのは、食事が生きる希望の一つとして、それぞれに食べる前から楽しく、美味しく存在しているからなのではないかと思います。
楽しく美味しくvs量とバランス、勝敗はさだかではありませんが、健康とは、次の食事に思いを巡らせられることだと勝手に考えています。
参考図書:「じけいえんごはん」〜一品がたくさんの料理に大変身〜
特別養護老人ホーム芦別慈恵園ホームページ https://ashibetsu.or.jp