さっき行ったばかりなのに、バスや電車に乗った途端にトイレに行きたくなる。そんな経験をされている方も多いと思います。
長距離を走る電車やバス、飛行機には必ずトイレが付いているにも関わらず不安になりますし、不安な気持ちがまた尿意を加速します。トイレのこと一つが、外出や行動範囲にまで影響していると言えそうです。
逆に、自宅ではトイレのことを心配しなくて良いのはどうしてなのでしょうか。おそらくトイレのある、なし以上に“いつでも”“気兼ねなく”が大切な要素だからなのだと思います。
災害時の避難所でトイレに行くことを気にして、水分補給を控えてしまう方も多くいらっしゃるという話を耳にします。歩行など、移動に不安のある高齢者であれば、避難所に限らず、不慣れな病院等のトイレであっても同様と考えても良いのではないでしょうか。
水分補給、そして排泄は言うまでもなく健康を維持するための重要な要素ですから、特に高齢者の場合は、気兼ねなくトイレに行ける環境づくりを心がける必要があります。
気兼ねなくトイレに行けることは、尿便意のコントロールやトイレまでの移動、下着の上げ下ろしなど、本人にある能力がしっかりと発揮できる土台になります。
病院で高齢者のリハビリテーションに携わっていますと、ご家族が本人にできるようになってもらいたい生活動作として、トイレを一番に挙げられることが多いです。つまり、高齢者が一人でトイレ行けるか否かは、自宅に退院するか、転院や施設への入居を検討することになるのかを左右します。
最近では、病院の多床室にトイレが付いているところもありますが、まだまだ少数です。
共用のトイレに、それなりの距離を移動しなければならないという状況は、自宅でトイレに行く場合と比べて気兼ねなくとはなりません。したがって、病院で必要としていた見守りや介助が、そのまま自宅で必要な介助とは限りません。
家族としては、失禁の有る無しや、トイレまでの移動を含め、安全に動作ができるか気になるところだと思いますが、まずは、気兼ねなくトイレに行ける環境を整備することをお勧めします。
失禁にしても、体の動きにしても本人が安心できる環境のもとでは、良い方に変わってくるものだからです。