玄関を見ればその家の様子がわかるなどと言われたりします。訪問して最初に目に入る場所ですので、数秒の第一印象で他者を好き嫌いまで評価してしまうのと同じようなことかも知れません。確かに訪問して玄関先で感じる印象は、その後に充実した時間が過ぎていくのか、あるいはなんとなく尻が落ち着かなく感じるかに影響しているようにも思います。
全国様々な施設にお邪魔させていただくと、当然ですが千差万別の玄関が施設の顔として出迎え、第一印象をもたらしてくれます。なんだか落ち着く、安心する、なんとなく緊張するなど、もちろんあくまでも個人の印象です。しかし、使い勝手の悪そうな民家の再利用、使われなくなった公共施設などを簡単に改修した程度の施設に尻を落ち着けると感じることもあります。
見た目の美しさや機能性が、施設の印象には大きく影響していないのは確かです。したがって、そこで感じる落ち着きや安心は、単純に設計上の優劣、家具や調度品のしつらえといった物的環境がもたらすのではなく、利用者さんたちの生活、そこで働く職員さんの毎日の動きやコミュニケーションが溶け込んだ、目に見えない何かを感じた結果なのだろうと振り返ります。
施設を選択する基準は様々あると思いますが、玄関に足を踏み入れた瞬間の印象、個人としての落ち着く感じ、安心する感じを大切にしてみるのも良いと思います。しかし、落ち着く、安心するとはいったいどういう状態のことなのでしょう。
生理学的には副交感神経が優位な状態で、血圧や心拍数、瞳孔の収縮度合いなどから説明できますが、それらは計らなければ体の感覚だけでは正確に分かりません。
実家に帰省した際に、また温泉ホテルに宿泊した際などに、時間の流れがゆっくりと感じられることがあります。時間に縛られずに他人から干渉されずに過ごすことができる、落ち着いた、安心した時間です。
施設によってはお試し利用が可能なところもあります。その時、どのような時間の流れを感じるか。町道を制限速度で走る自分の横で、ハイウェイを飛ばして働く職員がいないかどうか。少なくとも同じ町道を制限速度で走っていると感じられる、それは職員の言葉と動きに表れます。つまり、生活が高齢者の時間で流れているかどうかです。
そんなことが施設選びの基準として使えるかも知れません。