風邪のひきはじめに果物を食べると免疫力が上がり、早く治すのに効果があると言われます。あくまで個人の感想なのですが、「風邪をひいたかなと感じ、だから果物を食べておこう」という順番ではなく、実際は“無意識に体のほうが先に果物を欲している状態があって、それが風邪のひきはじめ”なのではないかと思うのです。
果物だけではなく、いつもの生活の中でなぜか突然無性に食べたくなるものが現れるのは、健康のために自分の体が色々なサインを送ってくれているからなのではないでしょうか。
そう考えますと、計画的な献立で栄養バランスの良い食事が提供される病院や施設の取り組みは、もちろん大切なことだと思います。しかし、“無性に〇〇が食べたい、〇〇を飲みたい”自分の体という監督から送られるサインに、すぐさま応えることのできるというところでは在宅生活の優位性とも言えそうです。
何れにしても自分の体と向き合えるのは本人だけですから、本人の声を聞くことが大切なのだと思います。
話は変わりますが、病院や施設で安全のためのお願いを守れずにひとりで動いてしまい、その結果、職員とトラブルになる場合があります。本人は動けると思って動いていますから、「お願いを守ってください」と説き伏せることにあまり意味はありません。
それどころか、認知症だからお願いを守れないなどと、誤った解釈によってさらに強い対処をとってしまうという悲しい現実すらあります。
“動ける”というサインが送られているのに、他のチームの監督が“動かれては困る”という別のサインを送ってくるから困惑しトラブルに発展するのです。自分が動いて危なっかしいのは、その体の所有者である本人が分かっています。でも、ちょっとくらい動けるよとサインが送られているのです。
ですから、家族を含め周囲の者が本人に対してとるべき対応は、「動けますよね」「できますよね」「ちゃんと分かっていますよ」と、一旦、本人の行動を認めることです。
“無性に〇〇が食べたい”は、他人には理解できないこともあるでしょう。でもそれは誰からも否定されません。同じように、要介護の高齢者の“動ける”という直感も他人が感じることはできません。そうであれば、誰からもそれを否定されるものであってはならないのです。