じーちゃんは数年前に家族の勧めで運転免許を返納しました。わたしたちの住む場所は車がないとどこも行けないような田舎町なので、免許がないじーちゃんは不便です。親戚の家、日課だった神社詣り、大好きなうなぎ屋、お気に入りの床屋…、じーちゃんには行きたいところがたくさんあります。
ただ……
親戚の家へ連れて行ってほしいじーちゃん、家事に仕事に忙しくじーちゃんの予定に付き合いきれない母。たしかに、親戚のおばさんも家のことで忙しくしているのは知っていました。
じーちゃんのいうことに対して母は「できない」と否定、じーちゃんも意見がなかなか曲がらないので2人の会話はいつもぶつかり合ってしまいます。母に否定され続け自由を失ったじーちゃんがなんだかかわいそうな感じがして、「これしたい!」という願望をなるべく叶えたいとわたしは思っていました。
パーキンソン病は思うように動けなくなっていく進行性の病気。体の自由が利かなくなる前にじーちゃんの行きたい場所には極力連れて行きたいという思いがわたしにはありました。
生活のどの場面でもじーちゃんの意思をほとんど聞き入れなかった母。なぜそんなに冷たく接してしまうのか、当時は理解できませんでした。