楽しい旅行も3、4日も経つと、決まって枕が恋しくなりますし、よりどりみどりの朝食ビュッフェでさえすぐに飽きてきます。習慣が変わる日は、たまにあるくらいがちょうど良いのかも知れません。引っ越し、結婚、退職などこれまでの習慣が変化することで心身の調子を崩してしまうきっかけになったりもするようです。
しかし、多くの場合は引っ越し先で、パートナーと、またセカンドライフで新たな習慣が作られ、日常となっていくことでしょう。習慣を維持するのは心身の健康のためにも大切な要素と言えます。例えば、入院という習慣が変わるエピソードは短いに越したことはないということです。
介護予防にしても、引っ越しや、結婚のように、これが新たな習慣なのだと受け入れて始められるのが大切です。体操すれば、筋トレすれば、脳トレすれば介護予防になるからと、無理に習慣を変えてまで行うのであれば本末転倒です。かえってストレスになりますし、そもそも長続きしません。
病気があるわけではないけれど、寝たり起きたりの生活が習慣の高齢者もいるでしょうし、若者以上に山や海へと飛び回っているのが習慣という高齢者もいるはずです。掃除、洗濯、料理、庭の手入れ、家庭菜園、手芸や機械いじりなどなど人それぞれでしょうが、ちょっとした習慣の維持は、やらされている体操よりよほど心身の健康に効果的と言えます。
習慣は、ときに周りの者によって変えられてしまう危険性があります。「危ないからやめておきましょう」と、事故につながりかねない活動は、どうしても抑制されてしまいがちです。包丁など刃物の使用もその一つだと思います。明確な理由はないけれど、何となくやめておきましょうとなりやすい道具です。でもそれが、料理から、さらに台所からその人を遠ざけることになっていきます。
ある施設で最近元気がないという利用者の原因を探していたところ、以前は野菜の皮むきなど料理の手伝いをイキイキとされていたのを思い出し、「そう言えば、体調を崩されたことをきっかけに、“危ないから”と包丁を渡さなくなってしまっていたことに気づいた」というエピソードを教えていただきました。その後、もちろんその利用者は包丁を“危なくなく”使えていたそうです。
ご家庭や施設の事情はそれぞれあると思います。しかし、その人の習慣が変わってしまうことに、周囲の者は慎重でいる必要があると思います。