乳幼児期から子供へ、さらに大人になるにつれて減っていくことの一つに家族以外の人とのスキンシップがあると思います。人によっては、家族やパートナーともスキンシップがさほど多くないという方もいるかも知れません。
われわれ日本人は、ハグで挨拶を交わすなど、大人同士のスキンシップの習慣はあまり馴染みがありません。したがって、特に大人は、他人の体に触れる、触れられるといった機会は極端に少ないように思います。私など、見知らぬ誰かにハグを求められようものなら体が硬直してしまいます。
おそらくは、相手の肌も熱も感じられない、つまり、そこに込められた感情を受け取ることが難しいために、挨拶にもコミュニケーションにもならないような気がします。
大人になってから他者とのスキンシップが突然増える事態があります。それは介護が必要になったときでしょう。しかし、他者に触れられる経験の少ない日本人にとって、介助を受けるという状況は、緊張の強いられる場面であるとも言えます。
同様に、介助する側にとっても、他者の体に触れるという行為は緊張します。
スキンシップが不慣れな大人同士による介助という共同作業は、お互いを活かしきれない下手なダンスのように、事がうまく運ばないという結果を招きます。
もちろん、介護福祉士やホームヘルパーなどの資格を得るには、それ相応のトレーニングをしますし、現場経験を重ねることで他者とのスキンシップに対する緊張感も薄れ、それとともに介助のスキルも上達します。
しかし、そういったトレーニングの経験がない家族介護の場合には、家族の体であっても、あるいは家族の体だからこそ、人の体に触れて動かす(実際は一緒に動く)ことは恐ろしいという経験談を耳にします。
スキンシップによって得られるもの、それは感情や意志の交流だと思います。それはリラックスした状態の中で、伝えようとする、感じ取ろうとする相互の営みです。介護もスキンシップと考えれば、伝えよう、感じ取ろうとする態度があれば、多少拙い技術であってもそれなりに行えているという印象があります。
一方、技術が素晴らしくても、それがなければ上手く行きませんし、何より介護は嫌な仕事になってしまうでしょう。
超高齢社会、誰もが介護を受ける立場になる可能性があります。私たちが準備できることがあるとすれば、今から他者とのスキンシップに慣れておくのも一つかも知れません。
その場面を作るのが一番難しそうですが・・・