病院や公共施設を利用する際に〇〇さんではなく、〇〇様と呼ばれることが増えて久しいと思います。私など患者の立場で“様づけ”されると、いまだにくすぐったい感じがするのですが、受け止めかたは人それぞれでしょう。
また、使用する側である病院や施設の職員の中でも、患者さんや利用者さんに対する様づけについては意見が分かれるようです。実際、インターネット上などでも賛否含め多くの議論が展開されています。
さて、外来受診時には〇〇様と呼称されていたはずなのに、入院すると病棟では〇〇さんに変わっていることが多いように感じています(病棟でも〇〇様を使用している病院もあると思いますが)。
また、施設でも入居されている利用者さんに対しては、〇〇さんと呼称して介助していることが多いという印象があります。
一方で、職員同士で利用者さんの話をするときには、〇〇様になっていたりします。病院や施設において、職員と患者さん(利用者さん)という立場で、どういう敬称を用いるかは、その人に向けられる態度の表れだと思います。
〇〇様、〇〇さん、それはどちらでも良いのでしょうが、その選択は本来一貫されるはずです。
病院の外来で様づけ呼称するのは、もしかすると患者さんに向けられた態度ではなかったのかも知れない、職員同士で利用者さんについて会議するときの利用者さんへの様づけも、利用者さんではない誰かに向けられた態度ではなかっただろうか。
私自身の反省を含め思い返してみました。誰かに向けた態度の表明ではなく、その人に向けた気持ちをこめた言葉、敬称を一貫して使っていきたいものです。
普段の生活で誰かに〇〇様と使う場面はほとんどありません、病院や施設でそれを“敢えて”、“わざわざ”使うにはそれなりの理由があったと思います。例えば、目標やスローガンのようなものは、敢えて、わざわざ掲げる言葉です。それは達成すべきものであり、浸透させるべき意識です。
言い換えるとまだ達成できていないもの、浸透していない意識と言えます。〇〇様という敬称を使う背景には、患者さん(利用者さん)の尊厳を守り、ケアする側と、それを受ける側という暗黙の上下関係ではなく、少なくとも対等であることを意識づける意図はあるように思います。
ある日、気がついたら病院や施設で〇〇様の敬称が使われなくなったとすれば、医療、福祉従事者と患者さん(利用者さん)が、本当の意味で対等な関係に近づいたことの表れとして理解して良いかも知れません。
そう言えば、〇〇様を使う病院や施設が少なくなったように思うのですが、どうでしょうか?