前話でも書いたように、祖母はハッキリものごとを言う性格でした。
じーちゃんも祖母に対して思うことはあったかどうかわかりませんが、言い返さず聞き入れることが多かった気がします。
祖母はいつもじーちゃんにアレコレ強く言うので、それを外野で聞いている母やわたしは『そんなに責めなくても…汗』となんとなくじーちゃんを守りたくなるような感じでした。
祖母はじーちゃんに厳しかったので、そこまで夫婦仲がいいわけではないと勝手に思い込んでいました。
祖母が突然病に倒れた夜。手の施しようがない状態だと告げられ、わたしたちは『その時』を待つしかありませんでした。寝ないまま朝を迎えて午前9時ちょっと前。『その時』、じーちゃんは静かに祖母の手を握っていました。
そして火葬場での最後のお別れでじーちゃんは「ありがとな」と祖母に一言だけ声をかけていました。
火葬が終わり家に帰ると、母があるものを手にしていました。
もう少しで完成しそうなニットベストでした。これからの寒い冬に向けて、仕事の合間に祖母はじーちゃんが着るニットベストを編んでいたようです。
見かけ上仲良しな夫婦ではないと勝手に思っていましたが、そんなことはありませんでした。
振り返れば、これが祖母の思いを母が受け継いだ瞬間だったのかなと思います。