ホーム

認知症を学ぶ

down compression

介護を学ぶ

down compression

専門家から学ぶ

down compression

書籍から学ぶ

down compression

健康を学ぶ

down compression
健達ねっと>マガジン>やさしい在宅介護>ワンポイントコミュニケーション>伺うことで相手が主役に

伺うことで相手が主役に

 

ワンポイントコミュケーション その1

「本人主体のケア」は、医療や福祉の現場であたりまえのように使われる言葉です。では、何をもって本人主体のケアと言えるのでしょうか。医療や福祉はケアを受ける者に何らかの要求があり、一定の自己負担と引き換えにケアを享受します。
そういう意味では医療も福祉もサービス業の一つなのでしょう。

しかし、サービスを受ける側が提供する側に対して、やや下手に出る、あるいは逆に気を遣う場面も多い(そういう人も多い)のは、一般的なサービス業とは大きく異なるところです。本人主体のケアという言葉がわざわざ使われる所以は、このあたりにあるのかも知れません。

 

ところで、患者さんや利用者さんに対する介助が上手だなと思える人に共通していることがあります。それは、相手に「伺う」というコミュニケーションです。「起きてください」ではなく「起き上がれそうですか?」、「立ちますよ」ではなく「立ち上がれそうですか?」です。

「伺う」は、相手が主役の言葉だと思います。例えばレストランでは「何にいたしますか?」、美容室では「今日はどのようにされますか?」と伺ってもらえるのがあたりまえです。席について、「はいカレーを食べてください」、「まず前髪を切りますね」とはなりません。
お客様主体が当たり前だからこそ、「伺う」という姿勢も当たり前になっているのだと思います。

 

では、「伺う」コミュニケーションと介護はどう関係しているのでしょうか。「起き上がれそうですか?」は、もちろん本人を主役にするのは間違いないのでしょうが、そこには「“今日は”起き上がれそうですか?」、「“今は”起き上がれそうですか?」と今日はどうだろうか?今はどうだろうか?という相手に対して能力の決めつけをしない姿勢が隠れているように思うのです。

能力を決めつけない姿勢、それはいつも新鮮な目で相手を見ていると言えます。だから、その日、そのときで、ちょっとした相手の変化、心や体の動きに気づくことができる。その結果、上手に介助していると見えていたのではないかと振り返ります。

 

大学生のときのアルバイト先(飲食業)での主人の接客スタイルを思い出します。常連客だとわかっていても、お客さんの「いつもの!」というオーダーに対しては、「何でしたか?」と必ず聞き返していました。
そのことについて主人は「馴れ合いになってはいけない」、「他のお客さんが見ていい思いをしない」と教えてくれました。いつも新鮮な目でお客さんと対峙するプロのコミュニケーション、その教えをこれからも大切にしたいと思っています。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
筆者のマガジン一覧へ戻る