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その介助の手、少しだけ緩めてみませんか?

 

ワンポイントケア その1

本人ができるところはなるべく本人にやっていただく、介護を行う上で大切な理念として広く承知されていることだと思います。何を今さらと思われるかも知れませんが、介護の現場では安全に配慮するのは必須ですし、あるいは本人が介助してもらうことを望んでおられるなどという理由で、つい余計な介助の手が出てしまいやすいという状況があります。

安全のための介助の手、手伝って欲しいという本人の思いに寄り添う介助の手、その手を外すという選択はなかなか難しいものです。したがって、ある人に対する介助の量が増える方向にこそ進みやすい反面、介助の量が減る方向に転じさせるのは難しいのです。

このように、本人ができるところはなるべく本人にやっていただくという理念に対して、非常に逆説的な現実があることからも、介護者の心理的負担の大きさをうかがい知れると思います。

 

では、本人ができるところはなるべく本人にやっていただく、そのための介助とはどう考え、どう実現すれば良いのでしょうか。

例えば、100歳を過ぎても生活動作が自立されている方も多くおられるという事実からは、生活動作を行うのにさほど大きな力は必要としないことが分かります。しかし、通常は介護者の方が若く筋力も大きいため、ややもすると必要以上に大きな力で介助を行ってしまっているのではないかと想像できます。

それは、高齢者が自分で動くよりも速いであろうスピードで動作介助されている様子とつながるからです。

 

動作に必要な力が10だとすれば、介助では10以上の力は不要です。また、その10の力を介護者が全て引き受けてしまえば、本人が力を発揮する必要はなくなりますし、発揮しようもありません。介助をゼロにするのが自立支援ではありません、10の力で介助していたものを、0.1でも緩めてみれば良いのです。

動作に10の力が必要なのであれば、緩められた0.1は本人が引き取るしかありません。その0.1が“本人ができるところ”であり、自立支援の第一歩です。介助の力を0.1減らすことができたなら、次は0.2減らしてみたらどうかなと、本人の体と介護者の体でやりとりが行われる、それが介護の醍醐味なのだと思います。

愛する子どもを守りつつ、成長も促したい。歩き始めた子どもとつないだ手は、安全のために引いたり、しかし自由な歩みを邪魔しないよう緩めたりしつつ、親子の間でやりとりがあります。

介護は特別なものではなく、生きる力を育むという点で私たちそれぞれが経験してきた人間関係の延長にあるものです。子どもとつないだ手を緩めたように、介助の手もそっと緩めてみませんか。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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