ワンポイントコミュニケーション その2
高齢者に対する介助は増える方向には進みやすい反面、減らしていくのはなかなか難しいものです。心身の老化は誰にも避けられず、程度の差こそあれ徐々に忍び寄るものだからです。しかも、安全に配慮して介助を行っている場合、それをやめる(減らす)という選択にはかなりの勇気が必要です。
しかし、減らせる介助は減らしていく、あわよくばやめるという選択肢がなければ、介助というスイッチのボリュームメーターは最大で振り切ってしまうことになります。
では、その介助スイッチのボリュームを少しでも下げるにはどうすれば良いのでしょうか。介助を必要としている動作の中には大きく2種類あると思います。
一つは、自分ではできない動作であり、介助はできないところを補うもの、という世間一般の認識に見合うものです。もう一つは、本当はできる能力がある、あるいは部分的にはできるのだけれど自分ではやっていない動作、やらなくなってしまっている動作です。後者は介助スイッチのボリュームを下げられる可能性のある恰好の対象です。
本当はできる能力がある、あるいは部分的にはできるのだけれど自分ではやっていない動作とは、決して本人の怠慢でそうなっているものではありません、体調不良などによって不本意ながら他者の介助を必要としつつも、自分ができること、できそうなことのイメージまでは失われません。
しかし、介助される生活が続くと、“できる”、“できそう”の自信は大きく揺らいでしまうようです。したがって、自分から動作することに対してためらいや遠慮の感情が先に立ってしまいます。
「自分でできそうですか?」とお尋ねして、簡単に「できないわ」と言われる方も多いです。でも、自信がない、あるいは介助者への遠慮によって出た言葉であったとしたら・・・。
本人の気持ちに近づくために、もう一言加えてみてはいかがでしょうか。それは「やってみようと思いますか?」です。介助される、つまり自分ではやらないが当たり前になっている状況下で「やってみようと思いますか?」と問われることで、自分は“やってみたいのか”と自分の真意と向き合うことになります。
そして、「はい、やってみます」と発した自分の言葉に責任を果たすかのように本当の能力を見せてくれます。「やってみようと思いますか?」、あるいは「やってみたいですか?」は本人の気持ちとともに動きを引き出すコミュニケーションとなります。