仕事や家事、スポーツや趣味などなど、世の中に動作や活動は数多くありますが、個人の人生経験や生活背景によって無論、できること・できないことがあります。では、できること以外は全てできないことなのでしょうか。
経験がない活動、しばらくの間やる機会のなかった活動の中には、できないに括られてしまっているものがあるように思います。
例えば、全自動式の洗濯機は基本設定さえ終えていれば、後は電源オン、開始ボタンをオンする程度でできるものですが、普段、洗濯機を扱うことのない男性の場合(女性もいるとは思いますが)は、できない活動の一つとして考えてしまっている人も多いようです。また、家族からもできないと思われているのではないでしょうか。しかし、ボタンを押すだけですからできないのではなく、やらないだけです。
さて、経験がない活動、しばらくの間やる機会のなかった活動はできないものとして、本人も家族も思い込んでしまう可能性があるようです。介護に置き換えて考えてみますと、介助が必要な動作、それは本人ができない動作として理解されてしまいやすいと思います。
そこで、できないのではなく、やらなくなっている動作なのではないかと考えてみるのはいかがでしょう。やらなくなっているのであれば、“さあどうぞ”自分でやってみませんかという対応が先になるはずです。実に簡単なことなのですが、できないと本人も家族も理解している中では、介助の手が先に伸びてしまいますから、実に簡単なはずの“さあどうぞ”の一言が発せられないのです。
私たちがさまざまな動作や活動を獲得し、今の生活が作られているのは、ただ単純にその動作や活動をやってきた(経験してきた)からです。
つまり、やらないことが、できるようになる可能性はほぼゼロです。自立支援介護という言葉がありますが、筋力をつける・体力をつける・バランスを養うことで、何らかの動作が自立に向かうものではありません。できることはする、やらなくなっていることはやるようにする、それが大切です。本当にできないことは、できないままで良いのです。
できないと思われていることの中に、やらなくなっていることはありませんか。あるいは、危ないから、時間がかかるからと言って、介護者や家族が“させなくなった”ことはありませんか。介助が必要になるとは、決して本人だけの責任ではありません。まずは“さあどうぞ”の一言から始めてみると良いと思います。