リハビリを行う大きな目的は生活の回復です、もっと言えば社会や地域、家族や友人とつながりを持った生活を送ることとも言えるでしょう。病気や衰弱などによって一人ではベッドから起き上がれない、もしくは、車椅子への乗り移り・歩行が困難といった状況に陥ると、どうしてもベッドに臥床している時間も増えてしまいます。
例えば、病院に入院されている高齢者の多くは、トイレや食事、必要な検査以外の時間はベッドに横になっているという現実があります。それでは病気が癒えても、寝たきりという状態が残ってしまいます。そこで、リハビリが大切になるわけですが、せっかくベッドから離れてリハビリ室へ移動したのに、リハビリ室ですぐさま寝かされ体を揉まれています(正しくは“関節可動域訓練”と言います)。
何かそれがリハビリの王道なのかと思わせるほど、整然と寝かされ、揉まれている異様な光景を目にします。
寝かされ、揉まれている状況と、生活の回復しかり、社会や人とのつながりというリハビリの目的とは相反するものがあります。もちろん、その後に歩行をする、生活動作の練習をするなどのプログラムが控えている場合がほとんどであり、百歩譲って揉むことはそのための準備と理解できなくもないです。
しかし、準備に多くの時間が使われてしまうのであれば本末転倒です。
今は地域によって差はあるものの、訪問リハビリやデイサービスなどで、在宅で生活をされる要介護高齢者がリハビリを行う機会も増えました。起きて身支度整え、活動し、人や物に接して感情がさまざまに変化する、適度に疲労するから食欲が湧き、お通じが良くなり、快適な睡眠へと生活がサイクルします。
そのサイクルを回す歯車の一つがリハビリです。もし、今お使いのリハビリ、あるいはこれからリハビリを利用しようと考えておられる方やご家族は、寝かされ、揉まれているのがリハビリだとは思わないでください。
身支度を整え、活動し、笑い、食べ、トイレに行く、そして気持ち良く寝る、リハビリによって生活のサイクルが回り始めているか、あるいはそのような兆しを感じるか、それをリハビリの良し悪しの判断材料にしてみるのはいかがでしょうか。
寝かすな!揉むな!それを頭の隅に置いた在宅介護をおすすめします。