昼間はなるべく起きて過ごしましょう。病院や施設などではベッドから離れ、ホールで過ごされている高齢者も多いと思います。高齢者と同居するご家族の中にも、「寝てばかりいると体が弱ってしまうよ」などと、本人へ発破をかけたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
しかし、起きて座っているから一件落着ではありません。ヒトは同じ姿勢でじっとしていると大概は寝てしまいます。姿勢が変化したり、運動したり、心拍や呼吸の状態が変化することが覚醒の維持には必要だからです。
いくら相撲中継や水戸黄門が流れるテレビの前にいようとも、興味をもって身を乗り出したり(姿勢が変化)、声をあげ拍手したり(運動)、ハラハラドキドキしたり(心拍や呼吸の変化)がなければ覚醒は簡単に眠りへと変化します。高校生や大学生が講義中に居眠りをしてしまうのは、話の内容に興味をもてないからなのでしょう。そう考えますと、居眠りしてしまうのは本人のせいだけとは言えないのかも知れませんね。
授業中に居眠りしている小学生の姿をあまり想像できないのは、有り余る元気はもちろんなのでしょうが、おそらく見るもの、聞くもの、経験することが常に新鮮で刺激的で寝ている暇がないからです。
しかし、これまで多くのことを経験してきた高齢者にとって、新鮮で刺激的なものごとはどうしても少なくなってしまいます。仕事一筋で生きてきた方が、退職後に認知症になりやすいなどと言われるのは、新鮮な刺激を享受するのが下手、というかそういった経験が乏しいだけと考えれば良いと思います。
何も眠りたくて寝ているわけではありません、怠け者になったのでもありません。ですから、「そうだよね、興味ないと寝てしまうよね」と共感するところから始めなければなりません。誰だって興味のない講義中は居眠りしていたはずなのですから。自分は何に興味があるのかな、あなたは何に興味がありそうかな、今から考え、今から行動すれば良いのです。
お笑い芸人かまいたちさんのネタで、過去に戻って一つだけやり直すことができるとしたら?という掛け合いがあります。ボケ担当の山内さんが「自分はコンビニのポイントカードを作る」と言うのに対して、相方の濱家さんから「そんなの今からでもできるやろ」と、つっこまれるという流れでご存じの方も多いと思います。ポイントカードのような継続してこそ価値のあるものを、今さら作るというのは恥ずかしいというのが、何となく多くの人が納得するから面白いネタになっているのだと思います。
新たな興味や人間関係もおそらく同じで、今さら作れないという気持ちが先に立ってしまいやすいのではないでしょうか。人生100年時代、過去のポイントはなくても、今からでも興味や人間関係のポイントは確実に貯まっていきます。