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椅子に座ってもも上げ

ワンポイントリハビリ その7

片脚の重さは体重の約15%と言われています。筋肉や脂肪の量などの個人差はありますが、例えば体重60kgの方であれば片脚で9kg前後はあることになります。10kgのお米を持ち運ぶ時に感じる重さを想像すれば、私たちは普段いかに重たいパーツを自在に操り生活しているのかと痛感します。

ちなみに片腕も5kgほどあります。加齢や病気の後などにやってくる動きの大変さとは、健康な時には意識することはなかった自分の体の重さに直面する、つまり自分との戦いとも言えそうです。

なにせ片脚だけで10kg近くもあるのですから、あえて重りをつけるような負荷をかけなくとも、椅子に座って腿(もも)を高く上げるだけで相当な筋トレ効果が期待できます。そして何よりもも上げが効果的なのは、この約10kgもの片脚を上げた状態というのは、ほんの一瞬であってもかなりのバランス力を必要とします。

したがって、椅子に座ってもも上げする程度の運動でも、腹筋や背筋が自然と使われますから姿勢バランスのトレーニングにもなります。例えば、安全に椅子やベッドに腰掛けていても、座ったまま片脚が持ち上げられない方は体幹やバランス力が弱いかも知れないと想像し、座り方次第では転倒や転落などに注意しておく必要があります。

車椅子を使用されている方の場合では、フットサポートと言われる足乗せ部分に自分の力で脚を持ち上げて乗せることを習慣化するのも良いでしょう。施設や病院などでは、意外にも職員がササっと介助してしまう場面も多いのです。このような小さな取るに足らないと思われるようなことを大切にした介助が、後々の体の機能や動作能力の維持につながっています。

椅子やベッドに腰掛け、もも上げ運動を行う、ももを高く上げて足踏みをするイメージです。回数なんて気にする必要はありません。ゼロより1は効果があるに決まっているからです。もも上げをしてみて、自分の脚の重さを感じるとは、ちょっとしたバランスを保つことを含め、全身が感じられる良い機会です。

もも上げに限らずではありますが、わずかであっても自分で動く、その利点の一つは体を感じられることです。自分の体を感じられているからこそ、座った状態から立ち上がり、歩行へとスムーズな移行を可能にしています。

たかがもも上げですが、筋力のみならず、バランスや次の動作への移行と、さまざまな面に効果を発揮します。何より自分の脚くらい自分の思いどおりに動かす、自分との戦いに勝利するためのリハビリです。

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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