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服を体に被せるのではなく、体が服に向かう

ワンポイントケア その9

デパートやショッピングモールを歩いていると、ブティックでイチオシの洋服を着せられたマネキン(人形)が私たちの目を楽しませてくれます。ところで、マネキンに服を着せる作業と、着替えの介助には何か違いがあるでしょうか。

答えは大いにありです。

マネキンの中でも手足指まで全身しっかりと形どったタイプのものに、ズボンやシャツを着せるのはなかなか大変です。それは、動かないマネキンに服を被せていく作業だからです。着せる店員さん自身がマネキンに対して屈んだり、伸びたり、背後に回ったりとたくさん動かなければなりません。

また、服のよじれ直しも、一カ所直すとまたどこかでよじれているというように、ちょうど絨毯のシワ伸ばしのような羽目にあいます。

着替えの介助の場合は、マネキンに服を被せるようなイメージで行ってしまうと、やはり介助する者も大変ですし、ちょっとした服のよじれを解消するのも難しくなります。自分の子が小さい頃、着せられた服が背中あたりでよじれている感じが嫌で納得がいかないと泣いていた場面を思い出します。

着替えは、服を体に被せていく作業ではなく、体が服に向かう動作です。自分で服を着る動きをイメージしてみると良いと思います。例えば被りのセータを着る際には、袖に対して腕が突き抜けるように動かしています。

そしてセーターを頭に被せるのではなく、頭を通す穴に対して頭を向かわせ穴にくぐらせる動きをします。全体としては

したがって、着替えを介助するときには、まず介助者は服を相手の前に構えてみると、相手は袖に向かって腕を動かそうとされます、介助はその動きに合わせるとお互い気持ちよく動作を行えます。そして、着替える本人が服に対して体を動かすからこそ、ちょっとしたよじれの不快感に対して自分の動きの微調整によって未然に防ぐことができるのです。

しかも、袖をしっかり通すには、腕はもちろんのこと背すじまで伸びてきます。頭を通す穴に向う動きは適度に体を屈めます。しかも、服を着るという目的を持った動きを一部でも自分の意思で行うわけですから、心身機能に与える効果も大きいと言えます。

着替えの必要な方は服を被せられるマネキンではありません。着替えの介助は服を構えるところから始めてみましょう。

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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