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座るために座り直す

ワンポイントリハビリ その8

高齢者の歩行が困難になると、家の中でも車椅子を使用することが増えると思います。車椅子を使用する生活が長くなると、食事やリビングでくつろいでいる時間も車椅子に座ったままの状態でいるのが普通になってしまう場合があります。

車椅子は本来、移動のための道具ですから、それに座ったままでいることは食卓やソファーに座りかえるといった、ちょっとした動作を行う機会が減ってしまう原因になります。ちょっとした動作の減少が、実は体の機能低下に直結していると言っても過言ではありません。

しかし、背もたれやサイドガードで体をしっかりと保護してくれる車椅子と異なり、食卓椅子やソファーでは、姿勢のくずれや転落の危険をイメージしてしまいやすく、介護する側もつい車椅子のまま過ごされることに違和感を感じなくなってしまいます。

高齢者に限らず一人で安全に座っていられる力があることは、食事やトイレのような基本となる生活動作のみならず、家事や趣味などあらゆる活動を果たす可能性が広がります。

例えば、ベッドから起き上がり、ただちに車椅子へ移っていただくのではなく、一旦ベッドに一人で腰かける時間が30秒でも1分でもあるだけでも、車椅子に座っているのとは比べものにならないほど、体幹や下肢の筋力はもちろんバランスの力を養うことになります。

これだけでも十分に効果的な座る練習ですが、さらにオススメを一つ紹介します。それは“座り直し”です。ベッドなどに腰かけて少しだけ座り直しをしてもらう。

もし本人に分かりにくければ、「少しだけお尻を前に出して下さい」、「お尻を後ろに下げて下さい」、「少しだけお尻を右(左)にずらして下さい」と求めれば良いです。お尻をしっかりと持ち上げるまでは必要ありませんし、手を使っても構いません。

“ずらす”は“動く”よりも心理的なハードルが低いようで、この程度であればやっていただける高齢者も多いと思います。

“座り直し”があなどれないところは、前後左右に少しずらす動きだけで、足の踏ん張りや姿勢のバランス、何よりお尻は浮かせないまでも立ち上がる寸前の動きに近いため、その後の車椅子への乗り移りや、立つ、歩くにもつながる大切な運動となります。

考えてみれば、私たちは微動だにせず座っていることはなく、無意識に適度に座り直しをくり返しています。場合によっては数時間も同じ場所に座っていられるのは、座り直しのおかげとも言えそうです。

座るためには座り直しが必要なのです。

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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