ワンポイントコミュニケーション その7
介護は個人と個人が織りなす関係、つまりコミュニケーションそのものだと思います。優れた介護技術が正確に展開されたとしても、受け止める人がその意図を感じ、受け入れなければ、「抵抗感」や「拒否反応」を示し、その関係は本当に簡単に崩壊します。
また、介護される人の能力を最大限活かして介助するといっても、介護者にその気づきや、能力を受け止めるだけの余裕がなければ空虚な関係にしかなリません。普段のコミュニケーションとなんら変わりないのが介護です。
介護というコミュニケーションが一方通行にならないために、お互いを認め合う関係を成立させるために使って欲しい言葉があります。それは「私は○○しますので、あなたは△△していただけますか?」です。
贈られたら贈り返すのが人間関係です。「〇〇しますよ」と一方的に贈り続けるでもなく、「〇〇して下さいね」と一方的に求めるのでもなく、取り引きすれば良いと思います。取り引きと聞くとなんだか冷たい感じがしますが、介護を必要とする人と介護者は人として平等な関係です。
したがって、「私は○○しますので、あなたは△△していただけますか?」によって、介護を必要とする人が“自分もやらねばならん”という大人の対応をしていただける可能性が高くなります。
大人の対応といっても、そもそも介護を必要としているのですから、何か突然、いつもと違う動きが見られるほど明らかな対応とまではいかないかも知れません。しかし、「私は○○しますので、あなたは△△していただけますか?」と投げかけたのは介護者の方です。
△△しようとする、そのお返しに気づかなければ、それこそ大人として失格です。ですから、このようなコミュニケーションを図ることで、介護を必要とする人がやろうとする動きに気づきやすくなるというメリットもあるのです。
つまり、介護者が相手の能力を受け止めるだけの余裕を自ら作り出すことができます。“待てない”は介護を担う者の永遠のジレンマです。しかし、投げかけたのが自分であれば、それが返ってくるのを期待するはずです。
“待つ”と思うとストレスですが、期待している楽しみな時間と捉えれば、そのお返しに気づいたときに、双方向の大人のコミュニケーションとして、大きな感動を味わうこととなるでしょう。