各業界で人材不足と叫ばれて久しいですが、介護の世界もご多分にもれず、最近は全国津々浦々の施設で外国人実習生が活躍されています。皆さん明るく前向きで、利用者や職員になじみ、言葉の壁など感じさせない姿を目にします。介護は言葉以上に体と体、気持ちと気持ちのコミュニケーションであることを、遠い祖国からやってきた外国人の方々から改めて学ばせていただいております。
入国前後に研修があるとはいえ、皆さん素人同然の中でどうやって介護の実践的な技術を習得していくのでしょうか。おそらくは配属された施設の現場に入り、現場で日本人職員の背中を追いかけて身につけていっているのでしょう。
ある施設でミャンマーから来た実習生の身体介護の場面を見学させていただきました。入国後わずか3ヶ月目でのことです。視線を合わせ、敬語で挨拶をし、ゆっくりと丁寧に、そして何より利用者自身のできるところを尊重した介護が行われていました。「素晴らしいです」、「どうしてそんなに上手にやれるのですか?」と問いかけたところ、「Mさん(施設の日本人職員)に教えてもらいました」、「Mさんのマネをしています」と返ってきました。
介護は良い意味で職人的要素があり、しかしそれは言葉のそれほど通じない、経験もほとんどない人にも背中で伝えられるほどの芯のある技術なのだと思います。
また別の日本人職員(リーダー)が、「最近Tさん(外国人)が僕の話し方に似てきているんです」と、戸惑いつつも誇らしい表情で教えてくれました。まさに徒弟関係によって大切な技術が伝承され、高齢社会の今を支えているのだと実感します。もちろん、悪い言葉遣いや、雑な介助も純粋にマネされる可能性もあるわけですから、受け入れ先の施設職員は気を抜けません。しかし、純粋に学びに来た外国人に“見られる”状態は、いい加減なものは見せられないと、職員も無意識に自分を律した“見せられる介護”を行うことにつながるという良い面があります。
介護の現場に限らず、人材不足を外国人のサポートで補う。それは技術を伝承する側の私たちにとっても、技術を洗練するチャンスとも言えるのではないでしょうか。機械化やAI化の波で、徒弟関係の必要性が薄れてきているように思います。介護の国境を越えた徒弟関係は、これからの日本ばかりでなく、世界の高齢化にきっと良い影響になっていくはずです。これからも誇りをもって介護の現場に立っていたいと思います。