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突っ張るのは、前に向かうのが怖いから

 

ワンポイントケア その11

身体介護に難渋している介護場面で、よく耳にする言葉があります。「突っ張りの強い方」、「突っ張ってしまうとうまく介助できない」など突っ張ると言う表現を用いた言葉です。

確かに比較的要介護度の高い方の中には、介助しようとするとその介助に抵抗するかのように体が突っ張ってしまう方がいます。そうなると介助者はさらに大きな力で介助しなければならなくなるので、その方の介助に大きな負担感を感じてしまいます。

もちろん本人はわざと突っ張っているのではありませんから、このような事態が生じる原因を考える必要があります。

 

では、なぜ突っ張ってしまうのでしょうか?2つの視点から考えてみます。

①経験のない人が水泳の高飛び込みの台の上に立たされるとすれば、無意識の仰け反る(突っ張る)ように体が反応すると思います。一方、②自分で動いている人が急に全身を突っ張らせるような光景はまず目にしません。

①から分かることは、少しでも動いたら恐ろしいという感覚があると、私たちは体を突っ張らせて抵抗します。②から分かることは、自分で動いているときは、多少恐ろしい場面であってもそれを心と体が受け入れていますので、そこまで突っ張りません。

つまり突っ張るという現象は、本人が恐ろしい、それ以上動かされるのを受け入れられていないと解釈することができます。

 

したがって、介助の際に突っ張ってしまう人に対する対応は、少しでも自分から動き始めることと、それを本人の心と体が受け入れるだけの安心感の提供です。

体格の良い、力持ちの介助者だからといって、本人から動き始めるという受け入れなしに、全介助で抱え上げても本人の恐ろしさはさほど変わりません(多くの方は遠慮して恐ろしいとは言いません)。

 

人の生活動作は、そのほとんどは体が前に向かう動きです。突っ張ってしまうとは、つまり前に向かう動きが恐ろしいのです。そこで、介助に際に一点だけ配慮すれば突っ張りは驚くほど減ります。

それは、本人の体の少し前に手をかざして差し上げることです。体に触れる必要はありません、ここまで動いても私の手があるから大丈夫ですよ(あなたの動きを受け止めますというサインです)という意味を介助者の体で伝えます。

そして、少しでも本人から動いてくれた後に介助の手が入っても突っ張りはかなり軽減されて、お互いが楽に感じられることでしょう。“突っ張るのは、前に向かうのが怖いから”そう覚えておくと介助の手段が変わりますよ。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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