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健達ねっと>マガジン>やさしい在宅介護>医療のルールと介護(生活)のルール

医療のルールと介護(生活)のルール

 

「白衣高血圧」という言葉があるように、医療機関で健康診断を受けるだけでも緊張します。なぜ医療機関に行くと私たちはそんなに緊張してしまうのでしょうか。その答えの一つとなるのが受診する人にとっては「アウェイ」な状況だからではないでしょうか。

「アウェイ」とは、よくスポーツなどで使われる言葉で、相手の環境(テリトリー)にいる状態を指します。

「郷に入っては郷に従え」ということわざがありますが、とりわけ医療に関しては言えば、医療従事者の指示(ルール)に従うのが当然ですし、医療従事者にしてもおそらく従ってもらうのが普通という暗黙の了解があるのではないかと思います。

 

例えば、採血の場面を想像してみてください。「服の袖をしっかりまくり上げて腕を出してください」「力を抜いて」「軽く握り拳をつくって」「針が入りますので動かないで」「終わりましたので2分ほど反対の手で押さえておいてください」と進みます。

みなさんおそらく100%完璧に従っているはずです。医療のルールは100%医療従事者側にあるからです。採血そのものの恐ろしさは別にして、相手に身を委ねなければならないという状況は緊張を強いられるものだと思います。

 

気をつけなければならないのは、医療のルールは医療従事者にあるように、介護のルールは介護者にあると考えてしまうことです。自宅でも施設でも生活の場はその人にとってのホームであり、日常の動作は採血のようにルールを知らないものではなく、本人が何十年とかけて磨き上げた立派なルールが存在します。

しかし、そのルールを差し置いて介護者があれこれと指示を出しすぎてしまったり、あるいは自分が習ったやり方を完璧に行使するようにして介助してしまうと、本人と呼吸が合わずにうまく介助できません。“介護は大変”となってしまうゆえんでしょう。

 

介護(生活)のルールは本人にあるのです。要介護認定の高い、低い、普段自分で動く量の多い少ないに関係なく、まずは「どうぞ(あなたの良いように)やってみてください」という姿勢でいることが大切です。

自立支援介護などと言われますが、要介護状態の人に対して、リハビリにしても介護にしても他者のルールのもとで生活動作が自立することはありません。

もし本人の生活が変化する可能性があるとすれば、本人から動くという小さな、小さな、しかし本人のルールに従うというきっかけからしか起こり得ません。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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