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背もたれから背中を起こしてくる

ワンポイントケア その12

椅子から立ち上がる動作は日常の様々な場面で訪れます。「どこかに移動する」とは、今いる場所から一旦立ち上がり、歩行し、目的の場所に行くことです。つまり立ち上がる動作は座位と歩行をつなぐパイプ役とも言えます。

パイプに詰まりや水漏れがあれば、目的の場所に水が流れないように、立ち上がる動作も、座位から歩行へと流す動作にならなければ、本当は歩く力があったとしても、うまく歩けないという事態を生じかねません。蛇口は壊れていなくてもパイプが詰まっていれば水が出てこないようなものです。

 

では、立ち上がる動作を歩行へのパイプとして、どのようにつないでいけば良いのかを考えてみます。実は非常に簡単なことです。背もたれ椅子に座っている高齢者、特に普段、立ち上がる動作に介助が必要な方に対しては、何気なく背もたれから背中を起こしてくる動作を介助してしまいやすいです。

これには理由があります、例えば若い人でもフカフカのソファーに体を埋めて座っている状態から背中を起こしてくるのは結構大変だと想像できると思います。筋力の弱い方は硬い背もたれであっても、この動作にやや手こずり、少し時間を要してしまう場合があります。

そこにサッと介助の手が伸びてきてしまいやすいのです。

 

しかし、考えてみて下さい。立ち上がる動作は歩行へと水を流す役割があるのですから、チョロチョロとした水の流れであっても自分で水を流すことで、次の動き、例えば足の位置を整える、手すりをつかむ、お尻を持ち上げるという動きが流れていきやすいのです。

逆に背もたれから背中を起こすのを介助する、それは目詰まりを何かで突っついて解消するようなものかも知れません、しかしそこの目詰まりが解消しても、また別な箇所で流れが止まってしまいます。歳を重ねれば誰だって血管が細く、狭くなっていくように、動作のパイプも細く、狭く流れも悪くなります。当たり前のことです。

ですから、流れに時間がかかったとしても本人の流れを大切にするという意識で介助することが重要です。

 

立ち上がり動作の介助で大切にしてほしいのは、背もたれから自分で背中を起こしてもらうことです。肘掛けを手引いても構いません、テーブルを掴んで引っ張っても構いません。自分で背もたれから背中を起こしたあと、きっと、次の動きに水が流れていきますよ。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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