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痛みと動き


痛みは突然訪れます。朝起きたら何だか首痛い、腰が痛いなんてことは誰にでもありますし、思わぬところで転倒する、体を何かにぶつけてしまう等々、文字どおり予告無しです。

しかし、日常で起こる多くの痛みは、誤魔化しながら動いているうちに、なんとなく気にならなくなるものも多いと思います。この“誤魔化しながら”は、痛みと向き合う上で実は大切な要素です。

“誤魔化しながら”は、“慎重に”とも言えますが、慎重だけれども動かすことによって、痛みの生じない動きや、受け入れられる範囲の動きがそう、自分で解るのが大切なのです。当たり前ですが、痛みというのは本人にしかその大きさも質も感じることができないからです。

 

介護の場面で利用者がひどく痛みを訴えられたりすると、介護者としては無理させてはいけないという意識が働いて、普段よりも介助の量を増やしてしまいやすいように思います。しかし、痛いからこそ誤魔化しながら自分で動いてもらうべきなのです。

痛いからといって安易に他者に介助されていると、どんな動きで痛みが出るのは解らないままですから、極端に言えば痛みが生じないためには、じっと寝ているしか手段がなくなってしまうのです。

 

痛みというのは不思議なもので、そうやって動かさないでじっとしていればいるほど過敏になりやすいです。つまり、小さな刺激に対しても痛みと感じやすくなり、自分で動くどころか、介護者の手が自分の体に触れるだけでも痛いと訴えられる人もいるくらいです。

“寝たきり”という言葉を使うとすれば、こんな小さなきっかけから起こっているのを知るだけでも、その予防と対策が見えてきます。

 

痛みに対して、湿布を貼ったり、薬を処方していただいたり、マッサージしてもらったりと、どれも有効な面はあると思います。でも、誰でも生活しながら経験してきた痛みとの向き合い方である誤魔化しながら使う、そのことを忘れてはいけないと思います。

痛みに対しては、誤魔化しながら、そして自分で体を動かす。それは自分で受け入れられる動きを増やすという意味があります。自ら受け入れられる動きが増えた先に、起き上がる・立ち上がるといった普段の生活動作の回復があるからです。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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