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動作への声かけは少なめに

ワンポイントコミュニケーション その12

生活動作を本人なりにでも一人で行う、あるいは行おうとする動きは何よりの介護予防であり、健康維持に直結します。したがって家族を含め介護を担う多くの方は、最小限の介助にとどめるべく本人への声かけ(促し)をされていることと思います。

動作への声かけについて、少々気になる場面を目にすることがあります。おそらく分かりやすく、親切にとの思いなのでしょうが、事細かく手順を伝えるような声かけになっているときです。あるいは、行ってほしい動きを次々と矢継ぎ早に伝えていたりします。それでもなかなか本人の動きが見られないと、さらに細かい指示のような声かけになってしまいます。

 

これではむしろ、声かけによって本人をがんじがらめにさせてしまいかねません。そして、ますます動けなくなってしまいます。また、そのような状況を見て、「多くの介助が必要な人」という誤った判断されてしまうことさえあります。

 

そこで、動作介助をする際の声かけでぜひ実践してほしいコツがあります。それは、声かけを少なめにする、ただそれだけです。たくさんのことを一度に言われると、誰でも混乱しますし、具体的な細かい声かけをされても、それが本人にとってやり易いものなのかどどうかは、本人にしか感じられません。

細かい声かけというのは、実は本人にとってやりにくい動きを強要してしまう恐れもあるのです。

 

例えば、介護者が手すりを指差しながら、「この辺りに掴まったら良いですよ」などと言ってしまいがちです。しかし、体格の違う健常者同士で同じように試してみると、他者から指示された掴む場所が、決して自分にとって動きやすい場所ではないのがすぐに分かります。

動作には流れがありますから、です。

 

声かけを少なくすれば、ベッドから起き上がる時には、「起きませんか?」になりますし、立ち上がる時には「立ってみませんか?」になるでしょう。つまり、まずは動作の行き着く先を声かけすれば良いということです。

もちろん「起きませんか」、「立ってみませんか」のさらに先にはお食事やトイレといった大きな目的がありますから、声かけを少なくする、その究極は目的を伝えることに収斂されるでしょう。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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