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比べてみると分かる

福島さん(仮名)は介護福祉士として20年弱の経歴をもつ、いわばベテランの施設職員です。福島さんの魅力は、常に丁寧な介助をされるところにあります。丁寧な介助と聞くと、そんなの当たり前のことと聞こえるかも知れません。

実際、私は雑な介助をしていますと言う介護職員さんはいないはずです。では福島さんの“丁寧”はどこに表れているのでしょうか?

 

それは、いつ、誰に対しても“ゆっくり”の介助、そこに表れます。福島さんが介助をすると、いつもはあまり自分から動き出さない利用者さんが、わずかにでも自分の動作を行おうと努力する姿が見られます。このようなほんの些細ともとれる介護技術が利用者さんの生活機能、さらには健康寿命の延長を支えているのです。

 

では、なぜ福島さんの介助が“ゆっくり”と言えるのでしょうか?それは、家電量販店で、多くのテレビの中で、より画質が綺麗なテレビが分かるのと似ています。つまり、一台のテレビ単体では、その画質の良し悪しの評価を付けようがありません。しかし、量販店に行くと、何台もテレビが並び、素人でもなんとなくその差を感じられるものです。

介護も同じです、一人の介護者の介助、とくに自分の介助は速いのか、ゆっくりなのか、実は判断はつきません。しかし、映像などに残して改めて確認する、あるいは他の職員の介助を見学したり、映像で見たりすることによって、介助のゆっくりが分かってきます。

そして“ゆっくり”の介助は、利用者さんの動きとセットになって見えてくるので、より際立つのです。福島さんの介助の映像、それはそれはゆっくりなのです。

 

テレビを購入する場合は、量販店でより画質の良いものを選択することができます。しかし、利用者さんにとっての介助は量販店のテレビのように、良いと感じるものを選択できるわけではありません。

今ふうに表現するとしたら介助ガチャでしょうか。利用者さんにとっては、同じお金を払えば、同じ品質の商品が買えるに越したことはありません。ですから、介護者、特に介護に従事する者は、常に他の職員と自分とを良い意味で比較し合うことが求められるのだと思います。

まずは誰がゆっくりで、誰がそうでないのか、そのあたりから始めると良いでしょう。お互いの介護を映像に記録しておく、文字の記録よりも説得力があります。

 

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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