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介助を誉められる

前回、#107で紹介した福島さんが行う日頃の介助の様子を映した映像は、研修会などでたびたび使わせてもらっています。ゆっくり丁寧に介助すれば、利用者さんが介助に応じて動き出そうとする様子がよく分かるからです。

研修会の受講者は、感心しながらその映像を見て、明日からの仕事に活かすことになります。福島さんは間接的ではありますが、福祉の発展に貢献しているのです。

 

しかし、そんな受講者の様子を知らない福島さんは、リーダーとして介護技術を後輩にどう伝えていけば良いか日々葛藤していました。その背景には、自分の介護技術について、今一つ自信を持てていないところにあったようです。側から見れば、利用者の能力を引き出す素晴らしい介助をしているにもかかわらず、福島さんのように本人は自信を持てずにいる介護職の方がたくさんいます。

もし、仕事に自信が待てないという理由で、この素晴らしい技術を持った介護職の方たちが、職を辞するようなことになってしまうとすれば、それは社会にとって大きな損失です。

 

ある時、福島さんの介助の映像をたまたま目にした著名な方が、直接福島さんに「素晴らしいよ」と声をかけられる機会があったそうです。その話を福島さんから伺ったときに、いつもはシャイでクールな福島さんが真顔で、「すごく嬉しかったです」と話されていたのが印象的でした。

介護の仕事は、人から感謝される仕事だと思いますが、それこそ素晴らしい技術を持った福島さんさえも、「技術」を褒めてもらえることは少ないのだなと感じました。

 

2040年に向けて高齢化はますます進むと予想されています、あらゆる業種で人材不足が叫ばれる昨今、介護を支える人材についても深刻です。しかし、利用者の能力や時間にしっかりと寄り添える人材が、誇りと自信を持って仕事を取り組めることが、何よりの人材確保への近道となるでしょう。

高齢化によって、自分や家族が介護の当事者となる確率は当然増します。そこで出会う介護に携わる方たちの技術に目を向けてほしいと思います。

 

介助とは、利用者の動作を代行するものではなく、本人の主体的な動きを邪魔せずに、かつさりげなく支援するものです。そんな介助を目にした時、ぜひ、その介助に賞賛の言葉をかけてほしいと思います。

 

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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