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健達ねっと>マガジン>羅針盤>三橋良博>少しの別れと大きな気づき

少しの別れと大きな気づき

今回は、アルツハイマー型認知症の治療ではなく、急激な体重減少を調べるための検査入院です。

精神科病棟に入院をして内科へ通院します。

 

入院当日、妻は午前中は何もせずに寝ているだけでした。

僕はとりあえず、バッグに着替えとパジャマを詰め込み、午後一緒に病院に行きました。

 

ふたりで担当医からこれからの治療方針、注意事項を聞きました。

妻は、落ち込んでいるのか何も話をしません。僕は、こんな状態で入院させてもいいのか不安になりました。

 

入院期間は、食事ができるようになり、体重が増え始めるまで、約30日間から45日間。

妻自身は、長くても2週間ぐらいだと思っていたため、驚いたあとさらにふさぎ込んでしまいました。

妻が病室で着替えをしている間、先生とふたりで話をしました。

 

「不安になると思うので、毎日見舞いに来ます」と先生に言ったら、「もう入院したのだから、奥さんのことは病院に任せると思ってください。この際、旅行にでも行くぐらいの気持ちになったらいいですよ」と言われました。

 

「大丈夫だから」と言い聞かせて

その言葉に僕は驚いてしまいました。

精神科のお医者さんなので、たぶん僕の様子がおかしいこともわかっていたんだと思います。

仕事と家事と妻の身の回りの世話(この頃は介護というイメージではなかった)でストレスだらけだった僕は、しょっちゅうイライラして頭をかきむしっていました。

 

夜眠れなくなって、起き上がってボーッと立ったまま過ごしたり、足がむずむずしてふくらはぎをバンバン叩くか、落ち着くために部屋の中を歩き回っていました(あとで知ったのですが「むずむず脚症候群」と言う病気だったらしいです)。

このとき、度重なるストレスの不調が僕のからだに繰り返し起こっていました。

 

病室に戻り、妻に帰ることを伝えると、妻は病棟の出口まで来て、泣いて、手を握ったまま離しませんでした。

「大丈夫だから、しょっちゅう来るから」と言い手を離して帰りました。

 

振り返ると妻は入り口で立ったままずっとこっちを見ていました。

僕は、帰りの車で悲しくなり泣いてしまいました。

 

新しい日々の始まり

病院には1日おきに見舞いに行きました。

仕事が終ってからなので、いつも18時過ぎ。

妻は、始めの1週間は元気がなく、ベッドにいることがよくありました。

 

昼間は、毎日妻から電話がかかってきます。

「帰りたい。いつになったら退院できるの?」

そればかり。

 

会いに行っても病棟から出られない。

少し庭でも歩けば気分が変わるんだろうけど、まだ病院から許可は出ていませんでした。

 

精神科病棟は、当初思っていたイメージとまったく違いました。

病棟には10代から高齢者まで、各年代の方が大勢いて、そこから中学、高校に通っている子もいました。

 

昼間はロビー、テラスで過ごしている方が多く、

テラスには花がたくさん植えられていて、みんなで手入れをしていました。

 

ロビーで食事をするため、見舞いに行くと他の患者さんが僕を覚えてくれていてあいさつを交わします。

皆さん深入りはせず、穏やかに優しく接してくれます。

 

妻は、2週間ほどは溶け込めず、部屋にこもりっきりでしたが

だんだんと慣れてきたのか周りの人と話を始めてにこやかになってきました。

精神的にも癒され、元気ももらえてきたようです。

 

ただ、入院で体重が増えたかと期待をしていたら、逆に1kg減っていると知らされました。

 

三橋 良博 さん

認知症の家族と暮らし、現在も71歳の奥様の介護をしている三橋良博さん。奥様が52歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断され約19年。夫婦二人三脚で歩んできた軌跡を紹介します。