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椅子に座りかえる生活

ワンポイントケア その16

テレビドラマなどで見かける高齢者施設の様子として、よく陽のあたるリビングで皆さん明るく過ごされているシーンが映し出されます。実際にもそのとおり、落ち着いた雰囲気で時間がゆっくりと流れている印象を受ける施設も非常に多いと思います。

しかし、テレビドラマ(架空の)の素敵な施設ですが、何となく違和感を感じるところがあります。それは、登場する高齢者(役者さん)が皆さん車椅子に座りリビングでくつろがれている姿です。高齢者施設では歩行に不安のある方も多く、車椅子を使用される機会が多いのはもちろんなのですが、車椅子はあくまで移動のための道具であって、くつろぎのソファーや食卓椅子ではありません。

施設は生活の場と言われます。生活の場であるからこそリビングの食卓では椅子に移り変えて、あるいはソファーに座って歓談しているのが普通のこととして、ドラマのシーンを作ってほしいものです。

 

一方、実際の高齢者施設でも、何となく車椅子に座ったままでリビングや食堂で過ごすのが当たり前になってしまっている入居者も多くいらっしゃるのではないかと思います。車椅子からソファーなどに移り変える際の本人・介護者双方にかかる負担、トイレなど咄嗟の移動に対応しにくいなど、車椅子のまま過ごしてしまう理由は様々あるでしょう。

たかだか車椅子からソファーへ、座る場所が変化するだけかもしれません。しかし、生活の場では生活者としてその場に居るのか、移動の道具に座りその場をとおり過ぎていく人なのか、本人の意識や職員に与えるは印象は、長い目でみて確実に変わってくるはずです。

 

先日、ある施設の職員が、他の施設でのリビングでは椅子に乗り換える生活を目の当たりにし、非常に感銘を受けてすぐに自分の施設で取り入れたというエピソードをお聞きしました。施設の職員はやはり入居者さんに対して、介護の対象としてではなく、生活者として居てほしいんだなと、ほっこりとするお話だったと振り返ります。

車椅子からソファーへ、車椅子から食卓椅子へ移り変える生活、ほんの少しの手間が要介護者から生活者へと印象を変えてくれます。施設は生活の場ですから。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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