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健達ねっと>マガジン>ツッチーの旅する介護士日記>介護職として日本、イギリス、そしてベトナムへ

介護職として日本、イギリス、そしてベトナムへ

はじめまして。介護福祉士の土橋壮之(つちはし・まさゆき)と申します。

みんなからは、「ツッチー」とか「ツッチーさん」と呼ばれています。なので、みなさんにも気軽にそう呼んで頂けたらうれしいです!

 

いざ、海外へ

東京の有料老人ホームで7年ほど介護をしたあと、“海外の介護や認知症ケアってどうなっているんだろう”と思うに至りました。

その後、機会があって、イギリス・ロンドン郊外の障がい者施設の屋根裏部屋に住みながら、有償ボランティアで介護助手として一年間従事することになりました。

 

世界の介護を巡る旅

その期間を終えたあと、グーグルマップを開いて、介護施設がありそうな世界の都市を検索し、英語と日本語とその国の言葉で、「施設を見学させてもらえませんか?」とメールを送り、返信があった国に赴く、という旅をしました。

さまざまな国に併せて100件ぐらいメールを送ったと思います。返信は15件くらいあり、その時は10ヵ国ほどをまわりました。

 

ベトナムでの出会い

その、世界の介護施設をまわる旅の最後、ベトナムのニャンアイ老人ホームを見学しているときに出会った女性社長から「あなた、いま、仕事をしていないならここで働いていかない? ちょうど日本人を探していたのよ」と誘いを受け、
それから6年間、ベトナムの老人ホームやデイサービスで実際に介護の現場で働き、また、日本の介護現場を目指すベトナム人に介護の教育も行ってきました。

 

そして、日本へ

2024年10月に、7年ぶりに日本に戻り、今は東京、浅草近辺の介護施設で働いています。

 

現在、日本で働く外国人介護職がたくさん増えています。ベトナムからもたくさんの介護職が来ていますが、私はその逆で、日本人である私が、一外国人介護職として海外で介護福祉職として働くという経験をしてきました。

もちろん、大変なこともたくさんありましたが、振り返ってみると、さまざまな人と出会って、かかわって、たくさんの利用者さんや職員とともに過ごした時間は、有意義で幸せな時間でした。

たしかに、日本と違うところもたくさんあるのですが、でも海外も日本も、介護の本質的なところは変わらないのではないかと思います。

 

介護の仕事が思い出させてくれた私の居場所

実は、私は、介護の世界に入るまでは、クリエイターを志し、大手TVCM制作会社で働いていました。しかし、今はわかりませんが、当時のTV業界はほとんど寝る暇もなく、月に数回洗濯をしに家に帰るぐらいしか休むことができないような状況で、人間らしい生活とは程遠く、身も心ボロボロになって、志半ばでドロップアウトしてしまいました。

夢を諦め、当時はリーマンショックでまともな仕事が見つからず、”誰も僕のことを必要としていないんじゃないか”と、完全に生きる気力を失っていました。

 

何をやってもやる気がでず、楽しくない。生きることがつらい日々。

 

そんな時にたどりついたのが、介護の仕事です。

華やかな世界にいたのもあって、正直最初は、自分が介護の仕事をすることが想像できず不安でした。

しかし、実際にやってみると、そんな不安は最初だけでした。

しばらくして、私がいることでお年寄りのできることが増えるのを感じて、”こんな僕が必要とされている”という実感があったんです。

その時、誰からも必要とされていないと思っていた自分が、介護の仕事を通じて、存在を認めてもらえたような気がしました。

 

お年寄りとのかかわり、介護施設の文化的な行事を通して、徐々に自分自身の人間らしさを取り戻せたことを覚えています。

 

「助けているようで、助けられている」「支えているようで、支えられている」

 

自分は、“お年寄りのお世話をしている”と思っていましたが、お世話になっているのは私のほうだったんです。

 

今思うと、介護職員と利用者という一方通行な関係性ではなく、「人」と「人」してのかかわりが私を元に戻してくれたんじゃやないかと思います。

 

助けているようで、助けられているこの仕事を誇りに

さて、イギリスでも、ベトナムでも、当初、言葉もろくにできない状態で(というか今もですが)、特にベトナムでは、まだ介護という概念が定着していません。そんなところに外国人の介護職である私にいったい何ができるのか、不安でいっぱいでした。

そんな時、助けてくれたのは、やはり利用者さん達でした。私も名前を一生懸命覚えようとしましたが、でも私以上に利用者さんは私の名前を覚えようとしていました。

「ツチハシ」というのは外国の方には発音しにくいんです。特にタ行の「つ」「ち」は難しいです。「ツチハシ」は「スシ」になったり、「ツッシー」になったりしました。

「スシ」でも「ツッシー」でも何でもいいんです。存在を認めてもらえることが、私がここにいてもいいんだという安心感になりました。比較的早く、現地になじめたのは、利用者さん達が私の名前を覚えて、私が来ると何度も名前を呼んでくれたからだと思います。

 

海外でも、

「助けているようで、助けられている」「支えているようで、支えられている」

そう深く感じました。

 

「人」と「人」しての関りとそこにある生活や文化。

 

私は、そんな介護の仕事が大好きですし、この仕事が誇りです。

 

読んでいただきありがとうございました。

 

これから、このブログで、日本、イギリス、ベトナムで介護職として働いて感じたこと、文化や制度の違い、そして、日本で働いてる外国人介護職が母国で輝く場をつくるために必要なことなどを書いていけたらと思います。

 

どうぞよろしくお願いいたします!

 

土橋 壮之 さん

TVCM業界からひょんなことをきっかけに介護の仕事に転身。日本、イギリス、そしてベトナムへ、世界の介護現場を回る旅に出る。